JリーグのYouTube公式チャンネルが、気になったジャッジを徹底解説する「Jリーグジャッジ リプレイ」の番外編として「ルヴァンカップ決勝VAR大特集」を1日に公開した。
Jリーグ原博実副理事長、JFAトップレフェリーグループ扇谷健司マネージャー、播戸竜二氏が登場し、今シーズンのJリーグYBCルヴァンカップ・プライムステージ準々決勝から導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー（VAR）の運用について解説した。
来季からの明治安田生命J1リーグ導入に先駆けて、ルヴァンカップにて運用されているVAR。今回の「ジャッジリプレイ」では、10月26日に行われたルヴァン杯決勝・北海道コンサドーレ札幌vs川崎フロンターレから5つのシーンについて議論されており、『Goal』では96分に川崎FのDF谷口彰悟が退場になった場面を取り上げる。
■DOGSOの要件は満たしている
2-2で90分間を終えて延長戦に突入した末の出来事。96分に川崎F陣内中央付近でボールを拾った札幌MFチャナティップが加速し、ドリブルでボックス内に入ろうかというところで谷口と接触して倒れる。この場面では当初、主審は谷口にイエローカードを提示したが、ここでVARが介入。オンフィールドレビューが用いられ、谷口にはレッドカードが出されることとなった。
このシーンに関しては、「VARを用いてレッドカードにするほど悪質ではなかったのではないか？」という疑問が寄せられているが、扇谷マネージャーは「まずこれはファウルです。ボールには谷口選手はチャレンジしておりません。身体も入っていなくて、足だけで相手をつまづかせるような反則になっています」と状況を整理。そのうえで、“退場かどうか”に関して明白な間違いがある可能性を考慮し、VARが介入したと説明する。
したがって、ここでは退場の判断基準となるDOGSO（Denying Obviously Goal-Scoring Opportunity＝決定的な得点の機会の阻止）に沿ってチェックされたとのこと。そのポイントは「プレーの方向」、「反則とゴールとの距離」、「守備側競技者の位置と数」、「ボールをキープできる、あるいはコントロールできる可能性」の4点だ。
扇谷マネージャーが明かすところでは、主審はイエローにした時点では「谷口がゴールに近い位置にいる」と判断。しかし、今回の「ジャッジリプレイ」内で公開された主審とVARのやり取りによると、まずAVAR（アシスタントVAR）がDOGSOの要件を満たしている可能性があると進言した。そして、DOGSOを議論する際には、疑問点に挙げられた“悪質かどうか”は判断基準に入らないという。
主審は一度、AVARの問いかけに「DOGSOはないと思ってます。抜け出していないと判断」と返答。しかし、「ファウルで止めていなければ抜けている」と考えたVAR側が、主審がモニターを確認するオンフィールドレビューを提案した。その結果、レッドカードが提示されることとなった。
原副理事長はその判定に難色を示しつつも、DOGSOの4つの項目を個別に見た場合には、退場の条件を満たしていると釈然としない様子で肯定。それでも、「現場との感覚にズレがある」とし、以下のように語った。
「1つ1つを見ればそうだけど、完璧かというとすべてが少しずつグレー。ファウルかどうかもそうだし、（奥にいた）山村の位置（がカバー可能だったかどうか）、それが少しずつ合わさるとレッドでなくていいのではないかというのが現場の感覚」
続けて、「VARでしっかりそのシーンを出す。これは得点機会の阻止、この4条件に当てはまっていますとやらないと、分からないと思う。来年から、特にJ1に関してはやるように考えています。なぜだったか分からない、みんなが『え？』となって不満が溜まっていく状況で試合が続くのではなくて、例えばオフサイドでした、ハンドでしたというのであれば、それを流さないとみんな納得しない」と、スタジアムに訪れる観客や選手にVARを受け入れてもらうために、今後取り組むべき対策を挙げている。
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