黄金のグラディエーターが真ん中に、その脇にはドラゴンを打ち負かす戦士、そして“勝利か死か”という断固たるメッセージが刻まれた赤と白の巨大なバナーが試合前のオトクリティ・アリーナのピッチ上に掲げられ、スパルタク・モスクワの選手たちをピッチへと迎え入れた。
しかし、実際のところそのメッセージは、ホームの選手たちよりも勝利を逃すたびに諦めたような姿勢を垣間見せる今シーズンのリヴァプールに、より当てはまるものかもしれない。

ユルゲン・クロップ率いるリヴァプールの試合はしばしば内容を忘れ去られ、結果を過度に強調されることがある。ただし、良い試合を台無しにしてきたという、同じような問題を何度も目撃してきたサポーターの不満は理解できるものである。
26日の夜、クロップが誇るテクニシャンによる華麗なボールさばきは約束されたものだったが、フィニッシュという重要な局面で技術の高さが発揮されることはなかった。今シーズンここまで多く見られているように、リヴァプールは試合を支配しながら得点を奪えず、結果は失望のみを生み出した。
スパルタクの4本に対して、リヴァプールは前後半それぞれ2本のフリーキックを含む16本のシュートを放ったが、試合終了の笛が鳴った時、ビジョンのスコア表示にはそれぞれ「1」の数字が並んだ。
Gettyどちらのチームが優れていたかに関しては議論するまでもないが、スポーツの世界で残るのは結果だ。
アウェー・モスクワでの引き分けはリヴァプールにとって最悪の結果というわけではないが、今シーズンのワトフォードやバーンリー、そしてセビージャ戦のように、引き分け以上の結果を得るべきであった。
最も脅威となったのはスパルタクのサポーターグループ、フラティアであり、リヴァプールがキーパーのアルテム・レブロフを攻め続けていようとも、絶え間なくチャントを歌い、手を叩き、マフラーを回していた。
この試合で初めて同時に先発出場を果たした前線の4人―フィリペ・コウチーニョ、モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ -―は、ホームチームがコンパクトな陣形を保ち、プレッシャーをかけることに全力を尽くしていながらも、コンスタントに相手のスペースを攻略していた。
彼らはどれだけ爆発力があるかの一端を見せたが、リヴァプールにとって最強の防御策である攻撃は、最後まで解決策を提供することはなかった。
リヴァプールはスパルタクに試合の主導権を握られるという珍しい状況にもうまく対応していたが、エムレ・カンが中盤でのボールコントロールでもたついていたところをスパルタクにプレスをかけられ、失ったボールからマッシモ・カレーラの選手たちは攻撃の糸口を見出したのだった。そのプレーを発端に、ゴールから25ヤード離れた位置でコウチーニョのファウルによって与えたFKのチャンスを、フェルナンドが壁を越して、リヴァプールのゴールを守るロリス・カリウスの左側を破るキックでものにし先制ゴールを挙げた。
Gettyカンはファーストチョイスにふさわしい選手であることを監督に示すと意気込んだが、リヴァプールはまたもや自らの手で自らの首をしめる結果となり、カンにとっても思い通りにはいかなかった。先制点によって勢いづいたスパルタクだったが、リヴァプールはファイナルサードで得意の攻撃力を爆発させた。それも見事なやり方で、マネとコウチーニョによるコンビネーションで、スパルタクの守備陣を切り崩して歓喜を手に入れたのだ。
コウチーニョはペナルティーエリア手前で一旦マネにボールを預け、それに2人のスパルタクの選手が引きつけられたことでできたスペースに走り込み、パスを呼び込んだ。
コウチーニョはワンタッチ目でボールをコントロールし、レブロフがシュートコースを狭めようと前に出てきたところを、パワフルかつ正確なシュートをゴールに沈めた。このゴールはリヴァプールでの最近14試合で9ゴール目であった。
後半開始からも、リヴァプールはスパルタクの守備陣を混乱させ、コウチーニョのフリーキックからデヤン・ロヴレンがチャンスをつかんだシーンもあった。67分、レブロフは負傷のため退き、アレクサンダー・セリコフが交代で出場したが彼もリヴァプールの盛んな猛攻に屈することなくゴールを許さなかった。そして、それ以上のゴールは生まれず、リヴァプールがグループEで最も優れたチームであるのは明らかではあるが、2試合で2分けとなった。
クロップは試合後にこう語り、勝ち点1をマージーサイドに持ち帰ることへの悔しさをにじませた。
「今現在、我々は世界一幸運なチームではない。だから物事がうまくいくわけではない。とても守備が組織されたチームに対して、数多くのチャンスを作ることができた。そして相手に多くのチャンスを与えたわけでもなかった」
また、試合全体の判定についても不満を覗かせる。
「FKから失点をしたが、あれはファウルではなかった。でも結果を変えることはできない。守備の局面で、綺麗にボールを奪ったと思ったのに、笛を吹かれてしまったら、それは非常に難しい。あのフリーキックは素晴らしかったけどね。それでも我々は同点に追いつき、それ以降も多くのチャンスを作ることができた」
また、復調し称賛に価するプレーを見せているアルベルト・モレノとともに、トップパフォーマンスを維持しているキャプテンのジョーダン・ヘンダーソンは、試合をより簡潔に振り返ってくれた。
「我々は最初から最後まで試合を支配していたのだから、問題なく勝つべきだった。失望しているよ。大半の時間帯でしっかりと守れていたし、チャンスも作れていた。ただフィニッシュの部分でもっと落ち着いたプレーをするべきだった」
『BTスポーツ』のインタビューで語られた言葉は、試合を端的に示している。リヴァプールはまたも欧州最高峰の舞台で自滅した。改善すべき部分は明らかであるが、同じ問題が何度も取り沙汰されていることが大きな問題である。それこそ、主将のヘンダーソンがやや苛立ちを示しながら、インタビューに答えた理由なのだろう。
取材・文=メリッサ・レディ/Melissa Reddy
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