アーセナルがついに意中の選手を獲得した。クラブは先日、リヨンからアレクサンドル・ラカゼットを獲得したことを明らかにしたのだ。移籍金はクラブ史上最高額とも言われ、契約期間は5年となる。
ラカゼットの獲得は、アーセン・ヴェンゲル監督が3年前から追い求めてきた。当初リヨンのジャン=ミシェル・オラス会長はこの26歳の選手の売却に6000万ユーロ(約77億円)を超える移籍金を提示していたが、アーセナルは粘り強く交渉を続け、ついに4600万ユーロ(約59億円)でこの素晴らしい取引をまとめることに成功したのだ。
ルイス・スアレス、ゴンサロ・イグアイン、カリム・ベンゼマは、いずれもヴェンゲルがこの何年かの間に獲得を試みたワールドクラスのフォワードだ。ラカゼットはまだこうした選手ほどの域には達していないかもしれないが、彼の獲得に費やした金額は2013年にメスト・エジル獲得に支払った4250万ユーロ(約52億円)を凌ぐ額であり、その意味ではすでにスターとしてのクオリティを備えていると言えるだろう。ラカゼットはチームのストライカー問題を解消する存在となることも期待されている。
今回の高額な移籍金はラカゼットに余計なプレッシャーを与えることとなるかもしれないが、彼はすでにそれを跳ね返すだけのリヨンのクラブ史上最多得点記録という素晴らしい実績を持っているのだ。さらに2014-15シーズンには33試合で27ゴールを記録してリーグ・アンの年間最優秀選手に選ばれている。このときはヨーロッパの他のクラブへの移籍を拒絶していたが、今回はそれが見事に叶った形だ。
Playing Surfaceしかしアーセナルの関係者たちはラカゼットに対し、現時点でどのような評価を下しているのだろうか。アーセナルのレジェンドであるロベール・ピレスは、2015年にラカゼットの獲得について尋ねられた際、『Goal』で次のようにコメントしている。
「彼のキャラクターやプレースタイルはアーセナルにぴったりだよ。身長は高くはないけど、身のこなしがうまくてドリブルも仕掛けられる。スキルも申し分ないよ。ゴールだってたくさん決めるしね。彼は将来アーセナルの名ストライカーになるかもしれないね」
また元アーセナルのディフェンダー、ミカエル・シルベストルも同様に彼を賞賛する。
「彼はとてもアクティブな選手だね。どちらのサイドでもプレーできるし、非常に恵まれたテクニックを持っていると思うよ。過去4年間のリーグ・アンで毎年25ゴールや30ゴールを決めてきたわけだし、ストライカーとしての資質はすでに証明されているよ。すべてにおいて十分なクオリティを兼ね備えているからアーセナルでもすぐにフィットするんじゃないかな。エジルやアーロン・ラムジー、ダニー・ウェルベックともいいコンビネーションを発揮できるだろう」
Playing Surfaceラカゼットの加入はドイツ代表のメスト・エジルにとってもいいニュースだろう。契約が残り1年となっているエジルにとって来シーズンは非常に重要であり、多くのアシストを記録した2年前のようなパフォーマンスを取り戻す必要がある。来シーズン、エジルが自身の名を世界に轟かせるきっかけとなった素晴らしいパスを供給できれば、ラカゼットは間違いなくそれに応えるはずだ。
ラカゼットはこれまでのキャリアすべてをリヨンに捧げているが、近年サッカー選手がクラブに忠誠心を持つというのは珍しいケースになった。選手としてのキャリアは短く、多くの選手がより高額な給料を求めてチームを移籍していく。ときには批判も付きまとうが、選手としては当然のことであり、その是非を下すことは難しい。しかし、ついに自身のホームタウンであるリヨンからロンドンへと移籍するというラカゼットの今回の決断は、正しいものといえるだろう。彼はこの4年間だけで112ゴールを決めている。特に昨シーズンは86分に1ゴールというハイペースでゴールを量産し、最終的にリーグでは28ゴールを記録した。まさに今が自身のキャリアでも最高の時期に入ろうとしているときなのだ。
あえてヴェンゲルの気がかりをあげれば、ラカゼットが近年トラブルに見舞われている背中のケガ、また空中戦で存在感を発揮できないことに起因するいくつかの弱点だろう。しかしラカゼットはディフェンダーを寄せつけず、前線ではほとんどの選手を引き裂くスピードを発揮する。ラカゼットのハイクオリティなゴールを見れば、彼がアーセナルを次のレベルへと引き上げてくれる選手であることは間違いない。
アーセナルはこれまでプレシーズンが始まる前から順調に夏の補強を進めている。左サイドバックのセアド・コラシナツはブンデスリーガで2016-17シーズンのベストイレブンに選ばれた選手であるし、ラカゼットは間違いなくフランスのベストストライカーの一人だ。いずれの選手もプレミアリーグでの実績はないものの、アーセナルとヴェンゲルのお墨付きという時点でその実力の高さは言うまでもない。
プレミアの他クラブが羨むような選手層の中で、ラカゼットが成長するか埋もれるかは彼の今後の活躍次第である。しかし少なくとも、今の時点ではチームをより高み導いてくれることを大いに期待していいだろう。
文=クリス・ホイットリー/Chris Wheatley
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