ミランを率いるヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の去就は不透明なままだ。状況は非常に複雑と言える。
まるでパラドックスのようだが、モンテッラは現体制が続投した場合ではなく、リー・ヨンホン氏を代表とする中国グループがオーナーとなった場合に監督に留任するとみられる。ポミリャーノ・ダルコ出身の監督の成果は誰の目にも明らかだ。昨シーズンとほぼ変わらない陣営でありながら、第31節が終了した段階で6位につけている。チャンピオンズリーグ出場権獲得圏内の3位とは10ポイント差がついているものの、ヨーロッパリーグの権利には十分手がとどくポジションにいる。長く不振に陥る名門復活の第一歩をすでに踏み出しているのだ。
■ヨーロッパリーグ出場権獲得へ
だが目標はもっと上だ。 2015-16シーズンには、シニシャ・ミハイロヴィッチがシーズン終盤まで指揮し、その後クリスティアン・ブロッキにバトンタッチしたが、シーズンが終了した時点で57ポイントにとどまった。4月から5月にかけては8試合でわずか8ポイントしか得られず、その時期は降格ラインに沈むチーム並みの勝ち点しか稼げていない。
残り7試合となった時点で、昨季の勝ち点に並んのだから、モンテッラの鼻息は荒い。今後の日程を考慮してもパレルモ、エンポリ、クロトーネ、ボローニャなど組み易い相手との対戦が控えているため、勝ち点をさらに積み上げることが期待される。つまり、ビッグチャンスなのだ。昨シーズンからの成績アップにとどまらず、ヨーロッパリーグ出場権も視野に入ってくる。それだけに最大のライバルと相まみえるミラノダービー(4月14日)がカギとなる。
■有終の美か、ミランの将来か
ある意味で、有終の美を飾れる条件は揃っている。契約が2018年まで残っているとはいえ、もし何らかの理由でミラン売却が失敗に終わった場合、来シーズンもモンテッラがミランのベンチに座っているとは限らない。問題となっているのはシルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長との関係悪化だ。両者は数カ月前から面会や電話連絡を断っている。
一方、4月13日から14日にかけて予定されているミラン売却手続きが完了し、新オーナーの就任が実現すれば、モンテッラは来シーズンの続投だけでなく、さらに1年間の契約延長の可能性が浮上する。これから新たなプロジェクトを始めるにあたり、シーズン終了後に契約満了を迎えてしまう監督を抱えたところで、中国グループにとっても誰にとっても得はないからだ。
いずれにせよ、モンテッラは今後の展開やうわさに臆することなく、我が道を進んでいくことになる。困難な中の船出ながらも、ここ数年間、特にピッチ内において混沌としていたミランの状況に終止符を打ち、チームにアイデンティティを植え付けた。そしてヨーロッパリーグ出場という目標を実現すれば、当然さらに有利に働くことになる。
もしミランがさらにもう1シーズン、ヨーロッパの舞台から遠ざかることになれば、すべてが複雑になる。さらに1年間、国際舞台で戦えないとなれば、サポーターを納得させるためにも、再び指揮官の首を挿げ替えて新シーズンに賭ける可能性があるからだ。つまり、どういった未来を歩むことになるかは、残り試合にかかっている。
モンテッラに残されたチャンスは残り7回。すべての機会で結果を出せたなら、おそらく引き続きミランとともに歩む未来が待っているだろう。一方、結果を出せなければ将来の保証は何もない。
ロッソ・ネロの現指揮官は残された7つのピースをつむぎ、ミランとともに歩むのにふさわしい男だということを証明しなければならないのだ。
文=マヌエレ・バイオッキーニ/Manuele Baiocchini




