彼は勝者だ。
これまでの軌跡で彼が残してきた毒と指揮してきたサッカーの負の部分を考えると、トッテナム・ホットスパーがジョゼ・モウリーニョを雇ったことをきわめて簡単に正当化するには、この言葉があてはまる。とりわけ、進歩的で美しいフットボールを展開し、サポーターからも愛されたマウリシオ・ポチェッティーノ前監督のイメージが確立した後では。
モウリーニョの勝利は美しくない。だが、彼は勝利する。または、少なくとも勝利してきた。
Getty Imagesカラバオ・カップを脇に置くと、モウリーニョは2012年以降、重要なタイトルを2つしか手にしていない。チェルシーでのプレミアリーグ制覇とマンチェスター・ユナイテッドでのヨーロッパリーグ制覇だけだ。8年間で主要タイトル2つという結果は、“モウリーニョならポチェッティーノよりも良い成果が出せる”という希望をかなえる根拠にはならない。
同様に、モウリーニョのチャンピオンズリーグでの記録は、影響力に欠け、「スペシャル・ワン」との評判を薄れさせるものである。2010年から2014年の間、モウリーニョは4年連続でチームを準決勝に導いたが、いずれもそこで敗れた。大会の最後までチームを率いたことは2度しかなく、それぞれ、チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドを率いて、ラウンド16でパリ・サンジェルマンとセビージャに敗れたのだった。にも関わらず我々は、栄光の日々だけを見て現在も同じことができると期待している。
■モウリーニョ絶頂期は…
Getty策士モウリーニョの歴史を振り返れば、2010年にインテルの超守備的戦術、俗に言うアンチフットボールがバルセロナを倒し、守備重視の哲学がポルトをヨーロッパ最大の栄光に導いたこともある。
専門家の間では、トッテナムがライプツィヒに勝つには、インテルやポルトの時代のモウリーニョが必要だとささやかれている。柔軟性のある組織、超コンパクトな守備、必殺のカウンターアタックだ。マンチェスター・ユナイテッドのときには退屈で時代遅れな戦術だと思ったとしても、顔をしかめたり不機嫌になったりしてはならない。
だが、テーブルには驚くべき第3の選択肢がある。モウリーニョが現代のポゼッション・サッカーを進んで取り入れようとしているのだ。確かに、彼は決して芯から守備的な監督ではない。彼が率いたポルトやインテルはについて守備一辺倒の「バスを停める」だけのチームだったとするのはアンフェアである。
この批判は、2010年のCL準決勝、カンプ・ノウでの0-1での栄誉ある敗戦から起こったものである。モウリーニョ率いるインテルはボール支配率が24%しかなかった。だが、彼らの極端な現実主義が、28分のチアゴ・モッタのレッドカード退場のせいであったことを忘れるべきではない。第1戦ではカオスを作りあげ、鮮やかなカウンターアタックでバルセロナを3-1で破り、ペップ・グアルディオラのチームを途方に暮れさせたことも思い出す必要がある。初戦のリードを守るために取った選択が「バスを停める」ことだったに過ぎない。
あの試合は、絶頂期のモウリーニョを示すものだ。モウリーニョのチームは守備と攻撃の2つの部分にはっきりと分かれている。守備はこれでもかというほどコンパクトだが、中央をブロックして動かない。ディフェンスラインは比較的高かった。一方、攻撃は即興で、思い切りよくチャンスを逃さなかった。
スパーズが昔のモウリーニョのチームのようにライプツィヒと対戦するのなら、守備と攻撃のラインの間でプレッシャーをかけ、ボックスの端でもたもたしていてはならない。ストレスをかける戦術で相手を苛立たせ、フォワードの負の部分には目をつぶる。
■モウリーニョ“らしさ”が見られないスパーズ
(C) Getty Imagesだが現状で、トッテナムにはこうした典型的なモウリーニョのチームの特徴が何一つ見られない。チェルシーやポルト、インテルとは似ても似つかず、中盤でのポゼッションに集中する、広くオープンなチームなのだ。
ライプツィヒの冷徹なカウンターのスピードを考えると、ここ数週間のプレミアリーグで多くのチームがしていることをしなければならない。すなわち、3バックの外側のオープンスペースを突破するのだ。ハリー・ウィンクスは中盤から動かず、試合を支配し相手の息の根をとめようというスパーズの試みを傷つけてはならない。
とりわけティモ・ヴェルナーはオーリエの裏を狙ってくるはずで、ミスの多いトッテナムのセンターバックに向かって走りこんでくるだろう。エリック・ダイアーとタンギ・エンドンベレは2人がかりで中盤を守り、スパーズのディフェンスラインはいつもより20ヤード(約18メートル)低くなるはずだ。だが問題は、トッテナムがこれまでにこうした策を体に叩きこんだ記憶がないことだ。
トッテナムは、精神的または肉体的にもモウリーニョのチームらしかったことがない。つまり、90分間気力に満ちたディフェンスのチームになることは不可能である。それはこの試合においても、シーズン全体においても、だ。
ヴィラ・パークでしてきたようなプレーをしたのでは、ライプツィヒに切り裂かれるだろう。だが、よりこれまでしてきたようなモウリーニョのシステムを採用すれば、経験や守備のコーチング不足が露呈することは間違いない。さらに悪いことに、最後の拠りどころである得点源、ハリー・ケインやソン・フンミンは不在なのだ。
今のトッテナムには、昨季のような快挙を成し遂げるような準備は到底できていない。まだ始まったばかりであり、モウリーニョの今後について計画の初期であるチャンピオンズリーグの試合で判断すべきではない。
だが、もう一度言おう。感覚はサッカーのすべてだ。
モウリーニョの評判は大きな障害になりつつあり、ファンや専門家はともに、彼の戦術に対する先入観を強めようとしている。RBライプツィヒに負けることは恥ではない。だが、3年連続で決勝ラウンド早々に敗退となればどうだろう。
それはモウリーニョのブランドに深刻なダメージを与えるかもしれない。
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です




