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メリハリを身につけた流通経済大柏と『強く、激しく、美しい』前橋育英…栄冠はどちらの手に【高校選手権決勝プレビュー】

1月8日、96代目の高校サッカーチャンピオンが決定する。埼玉スタジアム2002で行われる第96回高校サッカー選手権大会の決勝戦へ駒を進めたのは流通経済大学付属柏(千葉)と前橋育英(群馬)。ここまで多くのJリーガー、日本代表を育ててきた本田裕一郎監督と山田耕介監督がそれぞれ率いる、現代高校サッカーを代表するチーム同士の対戦となった。

流経は初戦となった2回戦で大分西(大分)に3-0、3回戦で日章学園(宮崎)に1-0、準々決勝で長崎総科大学附属(長崎)に3-0、そして準決勝では矢板中央を1-0の僅差で破っての勝ち残り。無失点でのVロードを歩んできた。「ウチの伝統なので」とDF近藤立都らも胸を張るハイプレスのスタイルは健在だが、今年は割り切って守る時間も作るなど“闇雲プレス”にならないようなメリハリも付けている。カレンダーの妙から例年になくタフな日程になった今年の選手権で、このバランス感覚は重要な要素だ。

その舵取り役を担うのはボランチのMF宮本優太。昨季からレギュラーを張る数少ない選手の一人であり、キャプテンマークも預かる大黒柱だ。「優太がいなくなるとヤバい」というのはスタッフ・選手が共有している感覚なのだが、今大会は3回戦で警告を受けてしまったため、周囲をハラハラドキドキさせていた(選手権は警告2回で次戦出場停止)。試合中も「(センターバックの)瀬戸山俊から『(警告を)もらうな!』とか言われてきた」と本人も苦笑いを浮かべて振り返る細心の注意で乗り切り、この大一番の出場資格もしっかり確保した。警告の可能性から厳しく当たりに行けないこともあったそうだが、その心配もなくなったファイナルは、彼本来の“球際”をより強く確認できる場となるだろう。それはそのまま流経大柏の勝利へのキーポイントとなるはずだ。

対する前橋育英は初戦となった2回戦で初芝橋本(和歌山)に5-0と大勝し、以降は3回戦で富山第一(富山)に1-0、準々決勝で米子北(鳥取)に3-0、準決勝では上田西(長野)に6-1と大勝を収めての勝ち残りとなった。5試合15得点の爆発力が注目されるが、最大の見どころは今季1年をかけて徹底してきた。「トランジション(攻守の切り替え)」(前橋育英・山田耕介監督)。素早く守から攻、攻から守へと切り替わる戦術的な規律の高さが真骨頂だ。現代サッカーの肝とも言える要素を突き詰め、「そこがいいから点も取れる」(同監督)チームに仕上がった。

ここまで7得点で得点王レースを突っ走るFW飯島陸がエースであることは言うまでもないが、決勝で注目したいのは、やはり大黒柱のMF田部井涼だろう。こちらもキャプテン。3回戦で負傷して、準決勝と準決勝を欠場したが、すべてはこの決勝のための温存策。「いるのといないのではまるで違う」と指揮官も全幅の信頼を置く主将の復活は、決勝のキーポイントだろう。高校総体での対戦時は相手のプレッシングにパスワークを殺される展開となってしまったが、「蹴り合いになったら流経には勝てない」(田部井涼)のは全員が共有する感覚。この田部井を軸にしたポゼッションプレーと、チームとして突き詰めてきた攻守の切り替え。それを披露できたときに、『強く、激しく、美しい』前橋育英の勝機が見えてくる。

96代目の高校サッカー王者という称号を得るのは、果たしてどちらか。分かっているのは、手の内を知り尽くした両校による死闘になるということ。幾多のドラマチックな名勝負を演出してきた「選手権決勝」という舞台装置が持つ力を、あらためて認識する機会になるかもしれない。

文=川端暁彦

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