ヴィンチェンツォ・モンテッラの解任は、ジェンナーロ・ガットゥーゾにとってビッグチャンスの到来を意味した。ピサでの苦い経験を経て今夏、ガットゥーゾはミランの下部組織”プリマヴェーラ”から再出発することを決断した。そして今、古巣ミランのベンチに座る機会を手にしたガットゥーゾは、選手としてピッチに立っていた頃のようにチームを鼓舞していくだろう。
■シオンでの選手兼監督時代
ガットゥーゾの監督としてのキャリアはスイスのシオンでスタートした。2013年3月、わずか3試合ながらもフロントから選手兼監督を務めるよう依頼を受けた。ガットゥーゾ率いるシオンは1分2敗に終わり、結果としては決して良いと言えるものではなかった。それでもこのシーズン終了後、ガットゥーゾはシューズを脱ぎ、監督業に専念することを決断している。
■パレルモ時代…ディバラとの関係
ガットゥーゾはパレルモにおいて、監督として本格的なキャリアをスタートさせる。2013年夏、マウリツィオ・ザンパリーニ会長からロサネーロことパレルモのセリエA復帰の夢を託された。だがシチリアでの冒険においても、想定外の困難が待ち受けていた。
9月24日、ガットゥーゾは公式戦わずか8試合を消化した時点で解任。成績は3勝4敗1分と負けが上回ってしまったからだ。その後のパレルモはジュゼッペ・イアキーニの下、セリエA復帰を果たしている。

それでもガットゥーゾはパレルモから(だけでなく他からも)感謝を受けても良いはずだ。なぜなら彼こそがFWパウロ・ディバラの成長に寄与した張本人であるからだ。ディバラも数年後にそれを認めている。
「指導を受けたのはわずか数カ月だったが、”マークされる”ということを教えてくれた。練習では僕をトップ下に置き、監督がボランチの役割を務めた。僕が抜こうとすると倒された。こうやって僕はデュエルを学び、タックルを察知すると体を使ってかわすことができるようになったんだよ」
■クレタでの“ガットゥーゾショー”
2014年夏、ガットゥーゾはギリシャのOFIクレタのオファーを受けた。だが今回も前途多難な旅となった。ガットゥーゾは早くも10月に辞任を発表したが慰留を説得され、クラブの財政問題が発覚した12月まで指揮官の座にとどまった。
この間、忘れがたい出来事が起こった。ある日の記者会見中、ガットゥーゾは地元のジャーナリストに対し「クソみたいなこと」を書いているとして、英語、イタリア語、ギリシャ語の3カ国語で非難した。率直でストレートな物言いはまさにガットゥーゾの特徴と言える。
■ピサ時代…涙の昇格
そして、ガットゥーゾが監督として長期政権を築けたのはピサが初めてであった。2015年夏に就任すると、2017年5月までチームを率いた。危機を迎えたこともあれば、歓喜に沸いた時もあった。中でも最も大きな喜びは間違いなくレーガ・プロ(セリエC)からセリエBへの昇格だろう。フォッジャとのプレーオフ決勝を制して勝ち取った。
だが翌年、ピサは財政問題の影響もあり、すぐにレーガ・プロに降格してしまう。ガットゥーゾはシーズン終了まで指揮官を務めたのち、チームを去った。まさに本物のボスと言える。

■古巣への復帰
今夏、ガットゥーゾはイタリア国外やセリエBのクラブからオファーを受けていたものの、ミランの下部組織”プリマヴェーラ”監督としてのオファーを受け入れ、古巣への復帰を決断した。厳しいスタートとなったものの、ガットゥーゾは監督として新首脳陣から評価を受け、ポスト・モンテッラの有力候補となるに至った。
■ガットゥーゾ率いるミラン
ガットゥーゾ率いるミランの布陣はどのようなバリエーションとなるだろうか? 基本となるのは4バックで、スターティングメンバーからDFアレッシオ・ロマニョーリもしくはDFマテオ・ムサッキオが外れることになる一方、DFイニャツィオ・アバーテ起用の可能性が高まる。
Goal4-3-3の場合、新生ミランの中盤はレジスタのMFルーカス・ビリア、フィジカルの強いMFフランク・ケシエ、そして攻撃参加のできるMFジャコモ・ボナヴェントゥーラもしくはFWハカン・チャルハノールの3名で構成されるだろう。
ただ前線の予測は難しい。ガットゥーゾが純粋なトリデンテを選択する場合、MFリッカルド・モントリーヴォを中盤に置き、ボナヴェントゥーラは前線のポジションに移るだろう。

おそらくFWスソの起用は間違いないだろう。トリデンテの右ウィング、もしくは4-3-1-2を採用した場合、ツートップの背後のトップ下でプレーすることになる。
もう1つの選択肢として、3バックのフォーメーション3-4-3も想定される。ガットゥーゾはミランのプリマヴェーラにおいて、4バックの守備を断念したのちに好成績を上げ始めた事情もあるからだ。

いずれにしろ、3日に行われるベネヴェント戦で新生ミランがお披露目される。ガットゥーゾ新監督の下、ミランはどのようなスタートを切るのだろうか。
文=レリオ・ドナート/Lelio Donato


