■“都落ち”のアヤックスで復活
Getty12カ月前、マンチェスター・ユナイテッドのファンに、今週行われたチャンピオンズリーグの準決勝でダレイ・ブリントがプレーするだろうと予言したら、その返事としてかけられる最も優しい言葉は「クレイジー」だったかもしれない。
ブリントはオールド・トラッフォードで苦闘しており、夏にマンチェスター・Uから放出されることは以前から予想されていた。キャリアダウンと言っていいかもしれない。古巣のアヤックスに戻ったことで、余計にそういう印象が強くなった。
だが、ポール・ポグバと仲間たちが、ヨーロッパ最高のタイトル争いを、今や自宅のチェアーで見る羽目になった一方、マンチェスター・Uから追い出された29歳は、チャンピオンズリーグの決勝進出をかけて、トッテナム・ホットスパーと戦うことになったのだ。
ブリントが現在のアヤックスにおいて不可欠な存在であることは確かだが、並外れた選手であると言い切るのは難しい。
ただし、アヤックスが昨夏、1600万ポンド(約23億円)という驚くべき金額を大盤振る舞いしたのは、ブリントにタイトルを取るだけの才能があるからではなく、タイトルを取った経験を買ってのものであった。
アヤックスが、全盛期を過ぎたもう一人のプレミアリーグ経験者、ドゥシャン・タディッチに1140万ポンド(約16億4000万円)を使ったのも、同じ理由であった。
実際、クラブOBのロナルド・デ・ブールも、ブリントの加入がチームにバランスをもたらしたと話す。
「彼らはチームに特別なクオリティをもたらしたが、彼ら自身も経験を積み重ねている。チームのバランスがとても良くなった」
「アヤックスは、タディッチ、ブリント、(ニコラス)タグリアフィコが加入して、かなり成熟したチームになった。これは非常に貴重なことだ。この成熟は、非常によく機能している。1995年の我々の時代と比較しても、基本的に同じだ。当時の我々にはフランク・ライカールトとダニー・ブリントがいた。だが、それ以外の選手は若かった」
■デ・リフトにとってもプラスに
PROSHOTSダレイは今や、チャンピオンズリーグ優勝を果たした父、ダニーと同じ道を進んでおり、若さあふれるチームにおけるベテラン選手のひとりとして、大会に旋風を巻き起こした。アヤックスには30代の選手は3人しかおらず、10代の選手が多いのだ。
その一人がマタイス・デ・リフトで、19歳ながらアヤックスのキャプテンを務め、ブリントとセンターバックのコンビを組んでいる。今夏に、チームメイトのフレンキー・デ・ヨングとともに、バルセロナに移籍する可能性が高いほどの逸材だ。
オランダ代表の候補となる選手たちが、ここ数カ月で劇的に台頭してきているわけだが、デ・リフトにとってブリントの隣でプレーすることもポジティブな効果をもたらしているという。
「(ブリントの契約は)マタイスにとって重要だった。マタイスは、オランダのチームでダレイと一緒にプレーすることを望んでいた」
アヤックスのスポーツディレクターを務めるマルク・オーフェルマルスはそう語る。だからこそ、アヤックスとしては高額な移籍金を支払うことになったのだ。
■なぜ覚醒したか?

イングランドにいる間は常に酷評されていた姿はアヤックスにはもうない。かつてユナイテッドOBのポール・スコールズは「センターバックにブリントと(マルコス)ロホを置いて試合に勝つには、少なくとも3得点が必要だ」とまで語っていた。
ブリントは確かにプレミアリーグで成功するほどのフィジカルを持ち合わせてはいなかった。だからこそ、イングランドで求められるフィジカルから解放されたことも、アヤックスでの成功につながっている。
オールド・トラッフォードでは様々なポジションでプレーしていた。今も「左サイドバックや中盤でもプレーできる」と話すが、センターバックが自分の場所だと感じているようだ。
「目の前でゲームが繰り広げられるのは楽しいし、僕のフォワードへのパスが、攻撃の組み立てとなって、攻撃が始まるんだ」
攻撃面の貢献だけでなく、ブリントはタックルの成功率を上げていき、インターセプトの回数も増え、デ・リフトよりもファウルが少なくなった。少年時代に所属していたクラブに戻ってきたことでストレスから解放され、気分よくプレーできていることも作用しているのだろう。
さらに、アヤックスの哲学では、ルイ・ファン・ハールやジョゼ・モウリーニョのやり方と違って、よりテクニカルであることが求められる。それは、ブリントにとってうってつけだ。彼の強みはパスなのだから。
「彼は生まれついてのミッドフィルダーだ。パスのレンジが広く、ターゲットに、ドンピシャで合わせることができる」
ともに隣でプレーすることもあったユナイテッドDFクリス・スモーリングは、元チームメイトについてそう語ったことがある。
「彼は僕らのディフェンスラインに多くのものをもたらした。決定的なチャンスを生み出したり、相手チームを切り崩したりできた」
■頂点へ残り3試合
Getty Imagesでは、イングランドで彼の守備がもろいと酷評されたのは、なぜだったのか。簡単に言ってしまえば、隣にいるのがフィル・ジョーンズでなく、地球で一番若くて優秀なディフェンダーであれば、うまくやるのも簡単だということだ。
「マタイスと僕はお互いにフィーリングが合うんだ。チャンピオンズリーグの試合で、自分を高めることができた。とても気持ちよかった」
ディフェンディング・チャンピオンであるレアル・マドリーを倒し、さらにミスター・チャンピオンズリーグと呼ばれるユヴェントスのクリスティアーノ・ロナウドを封じるほどの高いレベルに到達したブリントとアヤックスに、もはやできないことは何もない。
ブリントとデ・リフトが、あと3試合そのレベルを維持できれば、ダレイは、1995年に悲願のヨーロッパ制覇に導いた父、ダニーに匹敵する選手になれるだろう。
「たぶん父は今頃少しそわそわしていると思う」と、ブリントは笑う。だが、彼の経験とデ・リフトの才能があれば、冗談ではなくアヤックスにチャンスはめぐってくるだろう。
文=アミー・ルスカイ/Ameé Ruszkai
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

