Riyad Mahrez Leicester CityGetty Images

マフレズ、シュマイケル…“おとぎ話”の主役たちがレスターの地を離れるとき

昨シーズン、レスター・シティがプレミアリーグの優勝トロフィーを天高く掲げたことは、まさに奇跡に近い出来事であった。それは「世紀の番狂わせ」とも言われ、レスターファンのみならず多くのサッカーファンを興奮させたのだ。だが、それと同時に優勝をもたらしたレスターのメンバーの姿を揃って見ることはもうないだろうと多くの人が予測したに違いない。ロケットが跳び上がるが如く、瞬く間にイングランドサッカー界の頂点にのし上がった選手たちが、世界の最高クラブに自身の飛躍を求めて歩みを進めることは自然なことなのだ。

その出来事から12カ月が経過し、レスターのメンバーはどうなったのか。当時の予想に反し、今でも当時とほぼ変わらない選手たちがフォクシーズ(レスターの愛称)の一員として在籍している。エンゴロ・カンテやシーズン途中に解任された指揮官クラウディオ・ラニエリはチームを去っていったものの、昨年イングランドサッカー界における最高のおとぎ話を作った主人公たちは、いまだレスターに身を留めているのだ。

昨夏、選手たちは年俸アップなど大幅に改善された契約条件によってレスター残留を決めた。特に主力選手の一人であるジェイミー・バーディーがアーセナルからのオファーを断わってレスターに残留したことは、クラブへの高いロイヤリティーを示す格好のものとなった。またリヤド・マフレズやダニー・ドリンクウォーター、カスパー・シュマイケルが残留を決めたことも、チームにとっては貴重な財産であっただろう。

しかし今夏の移籍市場においては、これまでレスターを支えていた主力選手達の移籍というのがいよいよ現実味を帯びてくると思われる。レスターの優勝経験メンバーの中には今シーズンの活躍が振るわないものもいるが、主役を演じたメンバーの多くは他のクラブから熱視線を向けられているのだ。

Riyad Mahrez Leicester City GFXGetty Images/Goal

例えばリヤド・マフレズは、最も他クラブから目を付けられている選手であろう。昨年イングランド・プロサッカー選手協会の年間最優秀選手に選ばれた際には、レアル・マドリーやバルセロナといったクラブからの関心もうわさされていた。今もこのスペインの二大ビッグクラブが関心を示しているとは思わないが、26歳の彼はキャリアのピークにこれから差し掛かろうかというタイミングである。チャンピオンズリーグの常連と呼べるようなクラブが彼に興味を示していることは明らかだ。実のところ、マフレズは退団希望をクラブに伝え、今夏の移籍は確実と見られている。

アーセナルはアレクシス・サンチェスの去就が不透明なこともあり、早くもマフレズとの接触を図ったようだ。そして今年の夏にワイドアタッカーの獲得を目論んでいるパリ・サンジェルマン、モナコ、そしてミラノ勢もマフレズを獲得候補に挙げているとみられる。

またシュマイケルも大物GKの一人として、今年の移籍市場を盛り上げるに違いない。マンチェスター・シティ、リヴァプール、エバートンといったクラブは新たなゴールキーパーの獲得を目指していると言われており、また、ダビド・デヘアが去る可能性を消し去れないマンチェスター・ユナイテッドの扉も開かれているようだ。シュマイケルはレスターの年間アワードで2つの個人賞を獲得し、素晴らしいパフォーマンスを「結果」として表している選手の一人である。となると、彼が来シーズンもレスターの地でゴールを守っているとは考えにくい。

Kasper Schmeichel Leicester CityGetty Images

ドリンクウォーター、ウィルフレッド・エンディディ、デマライ・グレイ、そしてベン・チルウェルに関しては、来季もチームを率いることになるクレイグ・シェイクスピア監督の構想内にあるためチームに残ることが予想される。しかし、イスラム・スリマニ、アーメド・ムサ、レオナルド・ウジョアといったいわゆるサブ扱いのストライカーたちは新たな移籍先を求め、この夏チームを離れるであろう。来シーズンのレスターは、2016年に多くのサッカーファンを魅了したチームからは大きく変わることになるかもしれない。

ところで、レスターに忠誠を誓っていたバーディーはどうなのか? 今シーズンはここまでリーグ12得点と昨シーズンからは明らかに少ない数字であるが、彼は今でもプレミアリーグにおいてトップクラスの点取り屋であることに変わりはない。彼のスピードは今シーズンも毎週のように相手チームのディフェンダーたちに脅威を与えていることは確かである。他のチームからの声が掛かってもおかしくはない。

Jamie Vardy Leicester CityGetty Images

その一方で、彼のピークはすでに過ぎてしまったというのもまた事実だ。この冬30歳を迎えたバーディーは、いくらスピードが魅力的とはいえ彼を獲得するためにトップクラブが大金を費やすとは思えない。それを思うと、昨年アーセナルへの移籍を断わったことは、彼がエリートクラブに加入する機会を失ったことでもある。しかし代わりにレスターのファンたちからは、記憶に残るシーズンの後もレスターのために貢献してくれた男としての尊敬を集めることとなっただろう。

リヤド・マフレズ、カスパー・シュマイケル、そしてジェイミー・バーディー……。この夏こそ、まさに選手たちが自分の価値をどこに置くべきか、真剣に考えられるときであるに違いない。レスターファンはかつて栄光をつかみ取ったヒーローたちの何人かが、チームを去っていく姿を見ることになるだろう。しかし多くのファンはすでにその心の準備をしているはずだ。

文=トム・マストン/Tom Maston

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