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ポルトガルの環境が前田大然を進化させた。“底の見えない男”の俊足だけではない強み

 U-22日本代表は28日、トランスコスモススタジアム長崎で行われたキリンチャレンジカップ2019・U-22ジャマイカ戦に臨み、9-0で大勝。年内最終戦を有終の美で飾った。この試合で1トップとして先発出場を果たした前田大然は、持ち前のスピードをいかんなく発揮しただけでなく、守備でも高い貢献度を披露した。夏に海を渡って以降、著しく成長する前田。彼がジャマイカ戦で見せた強みとは。【取材・文=川端暁彦】

■元々あった守備意識がポルトガル移籍でさらに向上

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 猫が好きで料理も上手。ゴツい体に丸刈り頭がトレードマーク。走る様はピューマのようで、戦う様は虎のよう。ちょっと変わった名前は「大自然」的なニュアンスで名付けられたそうであるが、本人もよくわかってなかったりする。前田大然は、そういう選手だ。

 12月28日、長崎で行われたキリンチャレンジカップは何とも難しい立ち位置の試合だった。直近ではタイで開催されるAFC U-23選手権が控えていたものの、このメンバーが行くわけでないことは明らかで、その大会に向けた「サバイバル」という声もあったが、現場の雰囲気とはちょっと違う。

以下に続く

 たとえば前田のような欧州組の選手は最初からタイ行きのメンバーに選ばれる予定がなかった。前田のいるポルトガルリーグにしても、中山雄太のいるオランダリーグにしても大会期間中にリーグ戦が組まれているのだ。戦力になっている選手をクラブは当然出したくないわけで、最初から彼らの招集は難しい。

 だから彼らがどんなテンションで合宿に来るのかちょっと不安でもあったのだが、これは完全な杞憂。中山にしても、安部裕葵にしても、プレーと行動によって「彼らがそこにいる理由」をしっかり表現してくれた。そして名前の通りに自然体の男・前田もまた、この1試合で必要なタレントであることを見せ付けた。

 「今日は上手く前線から守備かけてハマった。観ていた人たちも楽しかったと思うし、選手が一番楽しかった。試合の初めから観ていた人は分かると思うんですけど、すごい行っていたので」

 そう言って笑う前田は、元より「守備は好き」と公言してもいる。猛烈な快足でプレッシャーをかけ、相手DFが慌てるのを観るのも好きだし、そこでガッと体のぶつかり合いになるのも好きなら、奪ったボールをそのままゴールにぶち込むのも大好きというメンタリティーを持っている。

 ポルトガルに行ってその傾向はどうやら加速したらしい。前田の所属するマリティモはビッグクラブではなく、“個人出世”を狙う上昇志向の強い選手の集まり。彼らが見せる練習と試合のギャップ、「チームの勝利とか全然考えていない」というセルフィッシュなプレーぶりに当初は驚いたと言うが、そのなかで逆に献身的なプレーを見せることで首脳陣の信頼を掴んだ。「そういう選手ばかりなので、自分は頭のいい選手だと思われている」と笑う。守備の要求も日本とは違う。

 「松本にいるときから前線で行くのは大事にしていた。ただ、日本にいるとどうしても、『ちょっと待って』という感じになる。でもポルトガルでは『行けると思ったら行け!』なので。ボールを取れればOKということ」

■奪われたら即座に食い付いて奪い返す

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 前線がガリガリ追い続けるなら、後ろもそれに合わせる必要がある。日本だと後ろがステイしたがる文化的とも言える傾向があり、古くはドイツW杯を前にした日本代表でも、その点でチーム内に意見の相違が生まれたりしたこともあった。

 歴史的にはちょっと危険な兆候でもあるのだが、このジャマイカ戦は安部や前田の「前から守備を行き切りたい」という要望が通って全体での共有化にも成功した。DF岡崎慎の言葉を借りれば、「前がそれでやる気なら、後ろもちゃんと付いていくぞ」ということである。

 これはもちろん「前はちゃんと(ボールに)行ってくれ」(岡崎)という要求とワンセットだが、前田が先陣を切ったこの日の攻撃陣にその心配は無用だった。水を得たサメのようにボールを追い、奪われたら即座に食い付いて奪い返す。恐ろしいほどに徹底されていた。

 「やっぱり前線からああやって行くと後ろも楽だと思う。(安部)裕葵もバルセロナだから守備の意識が強いし、(旗手)怜央もそういう選手。ずっと(前から)行ったほうが相手も慌てるし、こういう試合にできるんじゃないかと選手で話していたとおりだった」

 ゴールが生まれたのは副産物のようなところもあって、月並みながら「守備はFWから。良い攻撃は良い守備から」という言葉をあらためて思い出させる試合だったし、前田自身の「誰が相手でも、当たったら吹っ飛ばしてやるつもりでやっている」というマインド含めた頼もしさは出色だった。

 こうして前世は確実にネコ科の動物だろうと思わせる丸刈り頭の青年は意気揚々とポルトガルへと戻っていった。この半年は単身赴任生活になっていたのだが、もともと「親が忙しかったので、いつも兄弟で料理を作っていたので、自炊はまったく苦じゃない。何でも一通り作れますよ」というだけに、自然体で無問題だったとか。底の見えない男である。

取材・文=川端暁彦

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