トッテナムがこれほどまでのシーズンを送ると誰が予想できただろうか。そう、彼らが昨夏に迎えた選手は一人もいなかったのだ。
そういった逆境にありながら、プレミアリーグでは3位、そしてチャンピオンズリーグ(CL)ではベスト4へと勝ち進む快挙を成し遂げている。現状維持がもたらした選手たちの覚醒によるところも大きいが、それはマウリシオ・ポチェッティーノに関しても同じことが言えるだろう。
現在、世界で最も高く評価されている監督の一人に、『Goal』は独占インタビューを実施。そこでは、今季のことからマンチェスター・シティとの欧州の舞台での激闘、そして自身の去就まですべてを話してくれた。このインタビューはまさに100%のポチェッティーノで構成され、彼の息づかいまでもが感じることができる。CL準決勝アヤックス戦を明日に控え、トッテナムの強さの真髄に迫っていく。
■補強ゼロの今季「安定もまた野心」
Getty Images――補強ゼロで迎えた今シーズンはいかがでしたか?
変わらないよ。より良くプレーするよう信念を持って、あらかじめ選手全員のことをよく知っているアドバンテージを持ってシーズンを始めることができた。新戦力の補強がなく、新たな活力が得られていないことをディスアドバンテージだと言う人もいたね。でも我々はアカデミーから若い力を補強できたんだ。
――新たな投資がされなかったチームで、どのように野心を選手たちに伝えたのでしょうか?
新契約が無ければ野心がない、と言いたいのだろうが、それは既存の選手達を残留させ、組織に大きな変化がなく維持できたということもできるね。安定もまた野心と言えると思うんだ。全てが結果に結びつくわけではないが、だが我々が触れる環境、例えばウェンブリーにホームが移ったことがいい例だね。これも最初はネガティブに働くと思われていたが、後にポジティブな要素となった。新しいスタジアムを持つということをモチベーションに、試合に向けて勇気を持ち続けられたんだ。それがシーズン終盤の我々を後押ししてくれた。
――こうした状況で、指揮官はよりつながりを得られるということですか?
これは挑戦だ。いくつかのクラブで新契約がなかったところがあっただろう。我々はクラブの再編成によって互いにモチベーションを高めていた。5年前にこのクラブに来て以来、我々は新しいものを求め、常に素晴らしい経験をしてきた。選手とスタッフ陣との間の信頼関係は素晴らしく、また健全なものだよ。これは誠実さのもとで、強制ではなく、リスペクトと愛情のような情熱を伴う関係性の中で時間をかけて生まれるものだ。それを全員が共有していることが、我々の成功の元だよ。
――トッテナムは期待された以上のことを達成していると言えますか? 当初はどんな期待がありましたか?
シーズン当初我々はとても野心的だったが、特定の目標は設けず、チャンピオンズリーグ出場圏内すら要求されることはなかった。ダニエル・レヴィ会長はトップ4に入れとも言わず、ただ試合に勝つように求めてきた。明確な目標がないことは困難でもあるが、良いことだとも言える。野心的になれるからだ、それが我々のDNAに刻まれている。現実がやがてあるべき場所にもたらしてくれる。確かにより投資すればタイトルに近づくこともあるだろう、だが新契約さえすれば良いというわけではない。もちろん、投資はすべきだ。良い家が欲しければお金をかけるべきだからね。
――何に満足していますか?
このクラブの全てと、素晴らしい関係性を築けたことだ。我々がここに来る前、ここにはコミュニケーションの欠如があった。今では連携と敬意で結びついている。また、このクラブと3つのスタジアムを渡り歩けたことも幸せだね。何より嬉しいのは、家族のような雰囲気を作り上げることができたことだよ。
――もしCLの決勝進出を逃したり、プレミアで優勝できなくても、それでも満足と言えますか?
もちろんそれらを成し遂げたいよ。できなければ失望することだろう。だが現実を見て考えれば、それでも私は満足だ。
■マンC撃破の背景
Getty Images――チャンピオンズリーグでマンチェスター・シティに勝利後も、あなたのキャリア最大の成功はエスパニョールの降格を防いだことだと仰っていました。成功は達成困難なタスクがつきものなのでしょうか?
外から見れば簡単に言えるかもしれないが、我々にとってはとても根本的なことだ。今いる場所に立つために、非常に大きな困難を乗り越える必要があるが、それが毎シーズン続くんだ。
――では、CLでどのようにしてペップ・グアルディオラを倒したのですか?
具体的なことはないんだが、とても多くのことがあった。戦術的なアプローチ以上のことだ。環境に打ち克つためのクオリティ、試合のちょっとした瞬間、それに少しの運もあった。これを誇示し続けるべきではないが、勝利に値するクオリティのあるフットボールをして、勇気を持って試合に臨めたことは確かだ。
――あの試合で最も混沌とした瞬間はいつでしたか?
(幻となったマンチェスター・シティの)5つ目のゴールの瞬間だね。失点への失意からオフサイドという判定への安堵へと、感情のアップダウンがすごかったね。あの瞬間、私は勝利がこの手から滑り落ちてしまうと思ったよ。
――グアルディオラはバイエルンでもシティでも、CLを制覇できずにいます。これについてどう思いますか?
優勝できないことを失敗だと、あまりにも早く決めつけ過ぎだね。CLを優勝するのはとても難しいことなんだ。マドリーは3連覇を果たしたが、あれは本当に信じられないことだ。それにプレミアのタイトル争いも並行しているんだから、(ペップにとっては)より困難なことだよ。シティの目標の一つにそれがあることはわかっているけど、失敗と決めつけるのはフェアじゃないよ。
――一方で近年は、イングランドのチームが再びCLで勝ち残るようになっています。何故でしょう?
この6~7年で、イングランドのフットボールは考え方に変化が生まれている。それは外国人指揮官のおかげでもあるし、哲学も変わってきた…すべてのことが少しずつ変わってきているんだ。プレミアリーグは卓越したレベルにあり、最も構造的に投資が行われている。だからこそイングランドのフットボールは発展し、他のリーグにも根付いているんだ。バルサやマドリー、バイエルンは同じレベルにあるが、リーグとしては現在もプレミアが最高のリーグだね。
■「サイクルは時間で区切る必要はない」
Getty――2014年から指揮を執っていますが、何をすれば、トッテナムでのサイクルは終わったと感じるようになると思いますか?
我々は一日一日のことを考えているが、一方で決断の中には長期にわたり影響を及ぼすものもある。それは継続的に変わっていくものだ。いつサイクルが終わるべきかはわからないし、数値を置くこともできない。3,4年続けて務めているのは長すぎるなんて、誰が決められる? 私に5年目を任せるのはリスクがあるという者もいただろう。だが今季の成績はここまでで最高だ。結局、状況をコントロールできているか否かによるんだ。サイクルは時間によって区切られる必要はない。私の場合は、ここではない外部により強いモチベーションを感じる時がくれば、それが終焉のシグナルになるだろう。異なるチャレンジを感じたら、リスペクトを持ってトッテナムを離れるだろうね。
――レアル・マドリーがあなたの招聘に関心を持っていたと聴きました。なぜそれは実現しなかったのでしょう?
私はここで今シーズンやれる自信があり、留まりたいと思ったからトッテナムと契約を更新したんだ。私は噂話については話さない。他にもイングランド国内や他国のクラブについての噂もあったようだけどね。
――ミランからの打診も聞きました。これは事実ですか?
それも報道で見かけたけど、それ以上のことは何もないよ。世界がどのように動いているか、知っているだろう。だがそうした噂話は私のエゴを満たさない。話題になりたいと思う人もいるようだが、私には必要のないことだ。フットボールという仕事ではあることだが、よそからの関心や可能性について話題があれば、それは自分への愛情の印とでも受け取っておくよ。
――メキシコからの噂もありました。メキシコ代表との間に接触があったのですか?
彼らはロンドンに来て、話をした。良い会話ができたけど、それだけだ。私は正直な人間だから話すと、それについては検討しなかったよ。
――一日一日に向けたあなたの情熱を考えると、代表監督という仕事に就くとして、幸せな仕事になると言えますか?
それは時間が来ればわかるよ、私はオープンだ。私は自分が愛する人と働きたいし、どんな場所でもそれぞれ違ったモチベーションをくれるものだ。現在は代表監督をする自分を想像することは難しい。クラブでリーグ戦に日々取り組むこのスタイルが気に入っているからね。
■アヤックス戦へ向け…
Getty Images / DAZN――どこがチャンピオンズリーグの優勝候補だと見ていますか?
優勝候補と言ったものは特にないね。ただ個人的にはリオネル・メッシがいるクラブ、つまりバルサだと思っている。個人的な感情を抜けば、ベスト4に入った全チームに25%ずつ可能性があるだろう。
――アヤックス戦に向けてどのような準備をしていますか?
ここ数日はプレミアリーグの試合に集中していた。土曜にはウェスト・ハムと戦った(●0-1)。そのあとでようやくアヤックスのことを考えている。多くの情報があるよ。今週我々は多忙で、準備に万全な時間がない。ダービーを戦ったあとのコンディションがどうなるかわからない。この段階の戦い、チャンピオンズリーグの準決勝では、全てのチームが同じだけの準備期間を与えられるべきだと思う。そうでなければ不公平だからだ。だが、それは言い訳にはできない。逆の立場なら私だってそういうはずだからね。欧州大会でイングランドのクラブは不利な立場だが、それを考慮に入れないことがある。クリスマスでも休まず試合があるし、大会もひとつ多い。それにリーグも他より1か月早く始まるんだけどね…。
インタビュー・文=ロレーナ・ゴンサレス/Lorena González
構成=Goal編集部
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

