ペップ・シティ、プレミアリーグ制覇までの軌跡ー2年間で何をもたらしたのか

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Getty Images
カタルーニャ指揮官が行ったトレーニングは昨年とほとんど変わりなかった。何がシティをここまで劇的に進化させたのか?

ペップ・グアルディオラにとって、ディティールこそ“全て”だ。それが昨季と変わらない真実であり、彼がまだ監督としてのキャリアを始めた10年前と何の変わりもない。

スペインとドイツで成し遂げたような成功を、彼がイングランドで達成できるか多くの疑問があった。しかし、彼は過去2カ国でやってきたことを変わらず続け、時間は今までよりかかったが、同じことを起こした。

確かに1年目は、「金でタイトルは買えない」ということが示された。しかし、2年目はさらなる補強を敢行。グアルディオラはタイトルを保証できる、世界でも数少ない指揮官であることを改めて見せつけた。

昨年と比べて変わったことはしていない。トレーニング場のマーキング、芝の長さも同じ、ディフェンスラインは同じ指示で動く。攻撃陣も高い位置からプレスをかけ、奪えばパスをつなぐ。

違いはほんの小さな修正だ。ペップは何度も昨シーズンとの違いは何かと質問されてきたが、その答えはいつも簡単なものだった。

「チームとしてさらに結束したからだ」

シンプルであるがゆえに軽く聞こえてしまうが、彼は正しい。選手たちは彼が求めていることを理解したのだ。

シティの選手がペップの細かい戦術について公に話すことはないが、クラブOBでもあるクレイグ・べラミーを通してヴァンサン・コンパ二は明らかにした。選手たちは何カ月も練習でできなかった、高いレベルの要求を今は理解しているという。

「ペップは彼の行きたいところに僕らを連れていくのに少し時間がかかったんだよ。だが正直な話、それは目の前にあったようだ。僕たちは今取り組んでいることが、何のためにあるか理解している。彼は道を示してくれた。トレーニングは治療みたいなものだったよ。なぜなら彼がしたいことはすでに僕らの中に植え付けられていたからね」

Vincent Kompany

イングランドでの初年度は、時折成功への道筋のサインが見えることもあったが、シティは個々の小さいミスでしばしば自滅した。現在、NACブレダにレンタル中の若手、ティエリ・アンブローゼはグアルディオラの完璧主義がどのように報われたのか振り返る。

「ペップにとってボールポゼッションは全てだ。ポゼッション、ポゼッション……。ボールを簡単に失うようなことがあれば、5~10分練習を止めるんだよ。彼はただのパスについても『君の利き足はこうあるべきだ、そしてボールを受ける前に周りを見渡せ』って口うるさく言うんだ。失えば、練習は止まる。その後だと、ボールを失いたくはないね」Thierry Ambrose quote

教え子たちの言葉だけでなく動画でもその完璧主義ぶりはうかがえる。バルセロナBを率いていたときと練習方法は変わらず、そして情熱は衰えるところを知らない。

ペップが行うトレーニングにおいて、「練習のための練習」になることは決してない。アンブローゼが数週間前に語ったように、ペップはボールを持ったときにどう位置取りをすればよいかを常に説明し、選手たちはその言葉に耳を傾ける。

特にラヒーム・スターリングにはそうだった。ちょうど上記のビデオは、ボールを受ける際、どう位置取りをすればよいか教えているのを映している。そのすぐ次の日、スターリングはこれをチャンピオンズリーグ・フェイエノールト戦で実行に移し、(イルカイ)ギュンドアンからのパスをゴールに変えてみせた。

「今までだったらボールを落ち着かせるためにアウトサイドでコントロールしていただろう。ペップは『左サイドバックの裏へ走れ』といつも言っている。『身体の向きを意識し、リズムを取り戻せ』ともね。本当にシンプルなことだった。でも試合中にやるには難しかったよ」

スターリングは今季キャリアハイとなる22ゴールを挙げている。そのほとんどがワンタッチゴールだ。ペップが要求することをよく理解している選手の一人と言えるだろう。グアルディオラが特に指示も出さずシーズン初めのワトフォード戦に送り出したことが物語っている。選手たちはただ与えられたことを形にしただけだ。試合開始38秒後に彼らはゴールを挙げた。スターリングによる素晴らしい動き出しからのフィニッシュだった。もちろん、それは昨夏の新加入選手たちがグアルディオラの手法を取り込んだ結果である。

Ederson Pep Guardiola Manchester City Composite

まだそれほど名も知られていなかった23歳のブラジル人GKエデルソンとのサインは素晴らしい仕事だったと証明された。この期待の若手はグアルディオラが欲した全てを持っていた。質も高く、彼らの攻撃陣に違いを植え付けた。エデルソンが短くつなごうが、長いパスを使おうが、相手が次の予測を立てるのは難しい。

そして、昨年との間で明確な違いになったのがトッテナムからやってきたカイル・ウォーカーだ。SBとしてグアルディオラが求める全てのものを兼ね備え、彼の要求に戸惑っていたパブロ・サバレタやバカリ・サニャに代わる素晴らしい戦力となった。また、ベンジャミン・メンディの到着は、使ったお金の量が戦力に比例していることも示した。

メンディはシティでの素晴らしいスタートを切り、サイドから正確なクロスを何度も供給した。このフランス人の存在によってグアルディオラはセルヒオ・アグエロとガブリエウ・ジェズスが共存できる道を見つけた。事実、この2人とスターリングが先発に入るとき、シティには3人の“9番”がいた。6-0で圧勝したワトフォード戦ではそれこそチームが向かうべき道だと示していた。だからこそ、メンディの負傷離脱はシティにとって最悪のシナリオだった。

他に左サイドバックを務められる選手がおらず、シティにとっては大きな痛手となった。だがグアルディオラは修正を施す。新しい選手を見つける代わりにファビアン・デルフを使い、ゲームタイムが少なかったレロイ・サネをワイドに置いた。中央をすっきりとさせたことでスペースが生まれ、彼の左足から多くのゴールとアシストが記録された。

それこそが今シーズンの変化を表している。下方修正もあったが。ゲームの中で数えきれない変化があり、それがシティを誰も手の届かない場所へと到達させたのだ。

Leroy Sane Manchester City Everton Premier League

昨年12月のオールド・トラッフォードでの一戦で、ハーフタイム後にギュンドアンを連れ出し、フェルナンジーニョをCBに下げる決断は、何があっても彼らの試合をするというメッセージだった。

今シーズン何度も“9番”なしで始め、ベルナルド、スターリング、サネを頻繁にポジションチェンジさせた。エヴァートンとの一戦は全選手がいたるところでプレーしている。アイメリック・ラポルテは左サイドバックとしても機能し、3バック時はCBもできる。スターリングは“偽9番”としてジェズスとともにプレーし、ケビン・デ・ブライネは深い位置でフェルナンジーニョの横に並んだ。ウォーカーは横幅を広げる右ウィンガーとしての役割も担う。

結果的にタイトルを決める試合となったトッテナム戦でも多様性は見て取れた。スパーズを陥れるためにデルフをWB、スターリングを最前線に置いた3-5-2を採用。大きな試合であるほどグアルディオラの修正が裏目に出るときがある。この試合はそうならなかったものの、チャンピオンズリーグのアンフィールドでは多大な犠牲を払った。それもいまだにポゼッションを高めようとしているためだ。

言い換えれば、グアルディオラはシティに土壌を植え付けようとしている。もう数年経てばシティの選手たちはグアルディオラが要求していることを全て完璧に理解するだろう。彼が去った後にも“ペップ色”が色濃く残る可能性だってある。

まずは1年後の彼らがどれほどのものになっているのか想像してみようじゃないか。

文=サム・リー/Sam Lee

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