2019-20シーズンのプレミアリーグが、9日のリヴァプールvsノリッジ・シティで開幕を迎える。3連覇を目指すマンチェスター・シティや昨季1ポイント差で涙をのみながらもチャンピオンズリーグでは戴冠を果たしたリヴァプール、レジェンドが指揮官に就任したチェルシー、最終ラインを強化したマンチェスター・ユナイテッドのほか、移籍市場最終日で積極的に動いたトッテナムとアーセナルのノースロンドン勢も虎視眈々だ。
開幕を前に、スポーツ実況者の下田恒幸氏と解説者として活躍中の元日本代表DF岩政大樹氏が対談。VAR導入など今季プレミアリーグの変化について語った前編に続き、後編では2019-20シーズンの行方を占う。
■シティ&リヴァプールの“2強”ムード

下田恒幸(以下、下田): 昨シーズンはシティが98ポイントでリヴァプールが97ポイント。3位のチェルシーは実に25ポイントも引き離されました。“ビッグ6”ではなく、前評判では今季も“2強”です。
岩政大樹(以下、岩政): シティ&リヴァプールとそのほかのクラブは今季も差があると思います。両チームがどのようなシーズンスタートを切るかにもよりますが、他の4チームは昨季のように走られると追っていくことはできないと思います。“走れる”のは、地力を見ればシティかリヴァプールしかない。
下田: パフォーマンスと継続性を見れば、岩政さん言う通り、この2チームが少し抜けている。ただ、実はこの2チームはあまり補強をしなかった。シティはロドリ、カンセロを獲りましたが、リバプールは若い選手とGKの控えのアドリアンくらい。なので、両チームとも〝マンネリ〟が起こる危険性があるのではないかと、個人的には懸念しています。
特にペップ。彼自身、チームのサイクルは3年というのをずっと言ってきて、バイエルン時代もそれで退団している。それでも、昨季もシーズン中に攻略を目指してくるチームを退けつつ、勝ち点98を獲得した。“マンネリ”、ありますかね?
岩政: ペップの4年目、というのは僕も引っかかっている部分です。彼は選手から監督になった選手で、4年目の監督っていうのが色々マンネリが生まれてくる時期というのも分かっている。そこへの意識が強すぎる部分があったとは思うのですが、今季シティのプレシーズンを見てみると、あまりやり方を変えていない。
バルサ時代の前半と後半では、マンネリを生まないために、3バックなどいろんなことを導入して選手に新たな刺激を与えることを意識していました。だけど、今年は今までやってきたことをプレシーズンでもやってきている。当然、相手によってディテールを変えてはいるので、マンネリはないのかもしれないですが、ペップ自身の捉え方も変わってきているかもしれませんね。
下田: 確かに、バルサの4年目はセスクのゼロトップなんかもやってましたね。我々を含めメディアはシティのシステムを「4-3-3」だと紹介しますが、実際はペップって相手のシステムややり方によって自分たちの立ち方や並び方を細かく変化させて戦ってきた。そういう意味では、実はすでに多彩さは持っている。そう考えれば、今季も自信があるのかもしれない。…やはり強いでしょうね(笑)。
岩政: ロドリの加入もしましたしね。34歳のフェルナンジーニョ一人にアンカーを任せるのは、もう難しかった。懸念があるとすれば選手のマネジメント部分。昨季にデ・ブライネが離脱したこともあってベルナルド・シウバが重要な存在となった。そして今では、彼は鉄板になりつつある。で、今季はデ・ブライネも好調のままシーズンに入る。右のインサイドとウイングがこの二人で確定すると、他の選手たちのモチベーションコントロールが難しくなりそうです。
下田: 出番の少ない選手のガス抜きというか、メンタルコントロールは大事ですよね。デ・ブライネが常に健在だとマフレズの出番が凄く少なくなる可能性もあるから、そのやり繰りは繊細さを要すると思います。リヴァプールに関しては、自慢の前線3人が揃っていればいいけどフィルミーノがいないとかなりニュアンスが変わる。彼の代役は簡単に出来ないし、いないけど、今季のリバプールが幅を持って戦えるかどうかのカギは案外オックスレイド=チェンバレンなのかなと思います。昨季は負傷で棒に振ったけど、彼は速いし、巧いし、戦術的にもオリギより柔軟性はあるように思う。「チェンバレンが新戦力」と考えれば、前線の補強はなかったけどそれほど悪くないかもしれない。
岩政: 僕は2年目のケイタに注目しています。彼も昨季にケガがありましたから、「+1」になれるかどうか。もともと推進力があってドリブルでボールを運べるので、彼が真価を発揮できればより面白くなる。チェンバレンを含め、彼らがいかに昨季のチームからプラスをもたらせるかですね。
下田: リヴァプールは昨季、97ポイントで2位ですからね。あり得ないですよ。プレミアリーグ史上3番目に多い勝ち点で優勝できないという…。
岩政: 消去法で考えても、仮にシティとリヴァプールがいくら足をすくわれても、じゃあそのほかの4クラブがチャンスを活かして対抗していけるのかと言われれば、昨季を見てもちょっと難しそうですね。
■ランパード就任のチェルシー、スパーズはCL権なら優位

下田: 昨季3位のチェルシーも、優勝争いまでは厳しそうですね。今夏に来日もしていましたけど、印象いかがでした?
岩政: 驚くような戦術を採用する様子は無さそうですけど、ベーシックにチーム作りを進めている印象ですね。でも優勝となると難しいでしょうし、今シーズンはそこを狙うまでは考えてないような気がしますよ。
下田: なんといってもアザールがいなくなったのは厳しい。コンテの時代でも、最後は結局アザール、というところでやってきた。彼がいなくなったのはもう、「-1」どころではない。ただ、一人の選手に頼らない分、「まとまりやすい」可能性はあるし、それがポジティブに出るかもしれない。補強が制限された中で、ローンから帰ってきたエイブラハムとかバチュアイらがどこまでやれるか。でもやはり、点を取る部分の軸はジルーになるのかな。個人的には若いマウントに期待しています。
岩政: 良い選手は揃っていると思います。仮に優勝ラインが80ぐらいになれば、チェルシーだってノーチャンスではないと思いますよ。昨季のような90台になれば厳しいでしょうがね。僕も鹿島アントラーズ時代に経験しましたが、チーム力を考えて、「今年は突っ走れる」というシーズンと「もつれてくれないとちょっと優勝は厳しい」というシーズンがありました。チェルシーも優勝経験があるので、最後のところで踏ん張って食らいつく経験値はクラブとしてもっている。
下田: 開幕戦の(マンチェスター・)ユナイテッド戦はまず注目ですね。スパーズはどうですか?
岩政: スパーズの試合は個人的に一番見ているかもしれません。ポチェッティーノ、面白いなと。システム的にもベーシックな4-2-3-1だけでなく、中盤ダイヤモンドの4-4-2や3-4-3もやる。同じ4バックでもやり方が多彩で、どのような意図をもってその布陣を敷いているのか考えるのが面白いですね。
下田: 確かに、相手によって結構変化させますよね。ただエリクセンが残るか残らないかでチームとしての持って行き方はかなり変わるんじゃないかと思います。プレミアリーグの市場は閉鎖しましたけど、レアル・マドリーに出ていく可能性はまだあるらしいので。
トリッピアーが抜けた右サイドバックもちょっと不安。前線は一皮むけたソン・フンミンを含めてケインがいて、かなり強力なんですけどね。ソンに関しては、日本人としては嫉妬しますね(笑)。プレミアであそこまでやれた日本人はいない訳で。彼が凄いのは正確で強いシュートを打つ技術ですよね。同じアジアの仲間として応援しましょう、みたいに言う人もいるけど、僕は日本人として嫉妬があるので凄いとは思っても応援する気にはあまりならない(笑)日本人よりもやれてる彼をみて悔しさの方が先に立ちますから(笑)。
岩政: 確かに、ソンは凄いですね。あと、マネジメントの面で言えば、ペップ、クロップを除くとポチェッティーノが最も掌握できている印象があります。そういう意味ではスパーズは、チェルシー、ユナイテッド、アーセナルに比べて、CL出場権争いでは最も優位だと思います。
■最終ライン強化のユナイテッド、アーセナルは…

下田: アーセナルや最終ラインを強化したユナイテッドはどうですかね。
岩政: ユナイテッドはマグワイアを獲れたのが非常に大きいですよね。8000万ポンド(約103億円)の移籍金が色々言われていますが、お金に糸目を付けずに獲得しなければならないポジションだったので、遅すぎるくらいです。ファン・ダイクにあれだけのお金をかけてリヴァプールは成功しているわけですしね。
下田: スールシャール自身もどのようなものを見せるか注目です。昨シーズン、就任直後は連勝を続けたけど、3月下旬の正式就任からチームは調子を落とした。
岩政: スールシャールが何をしていきたいのかは、まだ分かりにくいですよね。就任直後の攻撃的なサッカーも、スールシャールの意図がどれだけ組み込まれていたのか分からない。ただ単に、モウリーニョが制約していたものを解放して、「ある程度自由に」と選手に依存していたものが大きかったようにも見える。正式就任後にはプレースタイルもやや後ろ向きになった。
ただ、守備に定評があるワン=ビサカが加わって、ショーとリンデロフも昨季は良かった。デ・ヘアを含め、守備陣のメンバーはいいので、中盤の底をソリッドにしてアタッカー陣のスピードを活かすサッカーの方が強い気もしますけどね。
下田: 最終ラインを考えれば、アーセナルよりもユナイテッドの方が4位に食い込める可能性は高いような気がします。アーセナルはコシールニーの退団が痛いですよね。駆け込みでダビ・ルイス、ティアニーを獲ったけど、センターバックの層は心許ないですから、守備の不安は残ります。ただ、人気ウインガーだったペペ、監督と同じスペイン人で万能のセバージョスを獲得できたのは大きいです。オーバメヤン、ラカゼットを含めた強力な前線には期待していますが、イウォビを売ったのはどうでしょう…、FFP的に仕方なかったからだと思いますが。
岩政: 勝つチームというのは、うまさとか速さだけでなく、チームに硬質な空気感があるもの。今のシティとかリヴァプールにはそれがありますよね。でも、アーセナルには今、それがない。でも、エメリはまだ2シーズン目で、ここからのチームです。見ていて面白いし、好きなので期待しています。
下田: そのほかのチームでは、個人的にボーンマスに注目しています。エディ・ハウは2012年からの長期政権ですけど、一貫して攻撃的なサッカーを展開し続けている。前線のタレントに関しては中堅クラスのクラブとしてはかなり魅力的。フレイザーが残留したのが何より大きいし、ウィルソン、キング、ソランケ、ブルックスと人材は揃っている。ビッグ6相手に攻撃的に臆せず立ち向かってくれたら結構、面白い試合をしてくれるんじゃないかという期待感はあります。殴られてボロ負けする可能性はありますし、安定感もないでしょうけど(笑)。
岩政: 僕は昨季7位のウルブス(ウォルヴァーハンプトン)がビッグ6の壁を破るような躍進をしてくれることに期待してます。4シーズン前にレスター・シティが優勝しましたけど、ビッグ6以外のクラブも頑張れば、プレミアリーグの活性化になりますから。楽しみにしています。
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

