■偉大な連覇を達成
「近いうちに我々はもっと評価が上がることになるよ」
お祝いのメッセージが躍るなか、マンチェスター・シティの裏方で支えるスタッフの一人は、こうツイートした。
マンチェスター・シティは、ブライトン戦で先制された後、狂乱の83分間を支配し、結果的には4-1と快勝してプレミアリーグ連覇を決めた。これにより、10年ぶりに2年連続で同じチーム名がトロフィーに刻まれることとなった。
この勝利は、プレミアリーグ史上最も優れたチームはどこかという論争を再燃させた。今や、マンチェスター・Cはそのリストのトップに書かれるべきチームではないのだろうか。
先のツイートは、日曜の午後ではなく、火曜の夜になってからアップされたもの。その時間、お祭り騒ぎだったのは、バルセロナ相手にチャンピオンズリーグで奇跡の逆転劇を成し遂げたリヴァプールの選手たちであった。つまりあのツイートは、世界中の注目を浴びたリヴァプールを抑えて優勝を手中に収めようとしていることを誇示するものだったわけだ。後に削除されることとなるが、ペップ・グアルディオラのチームが正当に評価されていないという、マンチェスター・Cの苛立ちがそこには見え隠れする。
それもそのはず。多くの専門家、メディアはマンチェスター・Cのほぼ100点満点かつ、あらゆる記録が付随しているシーズンを控え目に扱おうとしている。加えて、もっと活躍すべきであったとさえ主張しているのだ。
■本物だった今季の強さ
Getty Imagesでは、実際のところ、どうなのか。
確かにユルゲン・クロップ監督率いるリヴァプールが、特別なチームだった。チャンピオンズリーグの決勝に進出し、プレミアリーグでも97もの勝ち点を獲得している。今シーズンでなかったら、優勝を果たしていたことだろう。
しかし、あまりにマンチェスター・Cは注目されていない。昨シーズンだけならまだしも、連覇も達成した今季も、というのは信じられない。
あのリヴァプールに打ち勝ってタイトルを獲得したのだ。プレッシャーが最高に達していたであろう、ここ14試合をすべて勝利したマンチェスター・Cは、“本物”であることに疑いはない。
思い起こせば、今シーズンのマンチェスター・Cは、ケヴィン・デ・ブライネがほとんど出場できない中でこの偉業を達成した。昨年11月から本職の左サイドバックが不在となり、要となるべきフェルナンジーニョも、2月のカラバオ・カップ決勝以降は、試合に出たり出なかったりが続いていた。
過去25年のプレミアリーグの歴史において、連覇を果たしたチームは2つしかない。ここ10年では初めてのことでもある。
この偉業の難しさは言わずもがなであり、勝ち点を合計198もあげて2年連続優勝を果たすなど、前代未聞である。同時に、国内のカップ戦でも快進撃を続けているとなると、素晴らしいどころではない。
マンチェスター・Cは順位表だけでなく、直接対決でもリヴァプールを上回っている。アンフィールドでは引き分け、エティハド・スタジアムでは勝って、1月にタイトルレースを首位で折り返すことができた。
そして、それ以外のチームには、もちろんすべて勝った。文字どおり他の全部に。
Playing Surfaceリーグの全チームに勝つというのは、言うのは簡単だが、実際に行うのは非常に難しい。マンチェスター・Cはそれをやってのけた。それも、2度も。昨シーズン実行した快挙を再び達成したのだ。リーグ戦で2年連続、全チームに勝ったというのは、129年前のプレストン・ノースエンドFC以来のことである。
マンチェスター・Cは昨シーズン、プレミアリーグの最多勝利記録を打ち立て、今シーズンもそれに匹敵することをやってのけた。2017-18シーズンに負けた試合はほんの数試合だったが、今シーズンもそうなのだ。
まったくありえないことだ。マンチェスター・Cは普通のチームではない。
■“カネ”は理由にはならない
Getty Imagesもちろん、マンチェスター・Cの成功には、あれほどの金持ちクラブが成功しないはずがないという論評がついて回る。
確かにマンチェスター・Cはお金を湯水のように使う。だが、この論評には、これまで連覇を果たした2チームが他の全チームよりカネを使うというのは、いつものことだという事実を無視している。この2チームは、いつだって基準としてやり玉に上がっている。
それに、カネがあればサッカーで必ず成功するというものでは、決して、そして断じてない。
まして連覇が約束されるものでもない。
ここかしこで貴重なトロフィーを獲得することは、マンチェスター・Cの目標の一つである。実際、ここ10年で早々と達成した。だが、今まさにこのクラブが行っているように、芸術的に勝つことが優先されている。チャンピオンになるということの意味を、マンチェスター・Cは定義し直しているところなのだ。
ここで、時間をさかのぼって、過去のチャンピオンたちが、実際のところ、どう印象深かったのか、見てみよう。
サー・アレックス・ファーガソンが率いたマンチェスター・ユナイテッドについては、再評価が行われている。勝ち点75で優勝した1997年のチームだけでなく、勝ち点79で優勝した1999年の3冠についても。
勝ち点80以下で優勝を逃したチームと言われて、さっと思いつくだろうか? 勝ち点90以下では? ましてや勝ち点97を獲得して優勝できないでいるチームがあると、想像できるだろうか?
マンチェスター・Cが素晴らしいのは事実だ。国内のある新聞は、マンチェスター・Cが3冠を取れば「ビタースウィート(甘くて苦い)」とすら言っている。そう、彼らは素晴らしいチームであり、3冠も獲得できるだろう。だが、多くの人々にとってそれ以外のチームが勝たないことは、ある意味残念なのである。
■次なる目標は…
チャンピオンズリーグでの躍進は、次のシーズンの目標となるだろう。グアルディオラ監督は、チームを、イングランドで誰にも文句を言われないトップチームとして築きあげてきた。
指揮官は何よりもそれを渇望しており、リーグでは自分たちよりも下位に終わり、国内のカップ戦では結果を出せなかった2チームがチャンピオンズリーグを勝ち進んでいくのを見るのは、つらく悲しいことだろう。
だが、トッテナムが偉大な決勝戦に進出したことは、マンチェスター・Cにとっても意味のあることかもしれない。そう、比較的低予算のスパーズを倒せなかったことで、マンチェスター・Cは責められるだろうし、あの2試合でマンチェスター・Cがミスを犯したことは確かだ。
だが、あの2試合でのロンドンっ子たちの不屈の闘志と、髪の毛一本ほどの差でトッテナムが勝利したという事実がそこにはあった。マンチェスター・Cとグアルディオラ監督を口撃するために、あの2試合を持ち出すのは無理があるだろう。
ただし、シティが越えるべきハードルはすでにCLだけである。それは、これ以上なく高い目標であり、多くのクラブが成し遂げられなかった悲願でもある。しかし、このチームであれば、いずれビッグイヤー獲得も夢ではなくなるだろう。そう確信できる素晴らしいシーズンであった。1週間後にあるFAカップ決勝の後に、さらにその思いは強まるはずだ。
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です