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プレミアリーグ最高の選手はアザールか…デレ・アリ、ケインを上回るその存在価値とは?

■FAカップ準決勝で際立ったアザールのスキル

4月22日に行われたFAカップ準決勝、チェルシーvsトッテナムは4-2でチェルシーが勝利を収めた。

トッテナムのFAカップ制覇の夢を打ち砕いたのは、チェルシーのエデン・アザールだった。61分からの途中出場ながら、アザールが決めたゴールと、アシストによる鮮烈な活躍により、チェルシーはFAカップ決勝進出を決めた。

ウェンブリーでのビッグマッチで、チェルシーは攻撃の要とも言えるジエゴ・コスタとアザールを先発で起用せず、代わりにミッチー・バチュアイとウィリアンを先発させたことはリスキーな選択だと思われた。しかし、試合が終わる頃にはまたひとつ指揮官アントニオ・コンテの天才的な采配ぶりが示されることとなった。

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75分のアザールのゴールは、彼が何もないところからまるで魔法のように何かを生み出すことができる好例を示したものである。CKからのこぼれ球をペナルティーエリア端で拾い、フリーな状態から放たれたシュートはまるでレーザービームのような弾道でウーゴ・ロリスが守るゴールを破った。

トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督は、FWのソン・フンミンを不慣れなウイングバックに置くという奇妙な采配を見せたが、選手交代により修正を図り、ようやくトッテナムが押し込み始めていた状況でのゴールであり、試合を支配され始めていたチェルシーにとっては貴重な一発であった。

ウィリアンは前半に2ゴールを決めたにも関わらずアザールに代わって下げられ、彼にとってはシビアな途中交代となった。しかし、誰がチェルシーのナンバー1アタッカーであるかは、ブラジル代表アタッカーもよくわかっていることだろう。

事実、アザールはプレミアリーグで最高の選手である。前半にハリー・ケインのゴールでトッテナムは同点に追いつき、一度は突き放されたものの、後半開始早々に生まれたデレ・アリのビューティフルゴールで2-2に追いついた。これでスパーズが盛り返すきっかけになるかと思われたが、試合を手中に収めたのはチェルシーであり、アザールであった。

バチュアイはD・コスタが7試合ゴールなしという状況で、自らの存在価値を示す絶好の機会であったにも関わらず、先発でピッチに登場しただけで、結果を残すことは出来なかった。バチュアイの先発出場は1月以来のことで、いくつか良いプレーは見せたものの、全般的には試合勘のなさが垣間見られている。

アザールがコンテ率いるチームに必要とされる活躍を残した一方で、同じく途中出場のD・コスタはあまり良い出来ではなかった。

シーズンも終わりが近づき、アザールの勢いは増すばかりだ。もしアザールがここまでクオリティーの高いプレーをする選手でなければ、トッテナムが2冠獲得に向けて邁進するところを、今頃目にしていた可能性も否めない。

アザールはこの日の短時間のプレーをネマニャ・マティッチによる4点目へのアシストで締めくくった。試合を決定付けたマティッチのゴールは、今シーズン最も強烈な一撃のひとつと言えるほどのファインゴールであった。

GFX Eden HazardGoal

■昨年トッテナムのリーグ優勝への望みを阻んだアザール

スパーズファンにとっては、アザールこそが昨シーズンのスタンフォード・ブリッジでトッテナムのレスター追撃を打ち砕き、リーグ優勝への望みを断った存在であった。この日トッテナムサポーターは、アザールが投入されたことで流れがチェルシーに傾くことを恐れたに違いない。

2-2というスコアは、昨シーズン終盤にトッテナムの勢いが止まったスタンフォード・ブリッジでの試合を思い出させるものだ。しかし、もしあの晩のアザールの一撃がトッテナムファンの記憶からすでに消し去られているとしたら、それはアザールの今シーズンの驚異的なパフォーマンスが際立っているから、その記憶が薄れていると言って過言ではないだろう。

26歳のベルギー人アタッカーは、スパーズ戦では通算5ゴールを挙げている。これはアザールが対プレミアリーグのクラブから決めたゴールの中では最も多いもので、この活躍ぶりはレアル・マドリーを始め、彼のことを追っているビッグクラブも大いに注目している勝負強さであろう。

この日、ウェンブリーで行われたロンドンダービーでのアザールのパフォーマンスは、改めて彼が“チェルシーの王様”であることを知らしめた。

ケインとデレ・アリのゴールをもたらしたクリスティアン・エリクセンの2アシストも素晴らしいものであったが、話題は完全にアザールに持っていかれた格好となった。“プレミアリーグ最高”のアザールによって、チェルシーは2冠獲得の夢を継続させ、FAカップ制覇とプレミアリーグでの逆転優勝を虎視眈々と狙っていたトッテナムに、冷や水を浴びせる結果を残したのである。

チェルシーが16-17シーズンのプレミアリーグ王者となり、FAカップ決勝でもアーセナルを下して2冠制覇を達成したら、アザールの輝きはチェルシーサポーターの間で未来永劫語り継がれることになるだろう。

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文=Nizaar Kinsella/ニザール・キンセラ

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