2017-11-10-halil(C)Tomoo Aoyama

ブラジル戦で求められる3つのポイント…ハリルスタイルで手応えを得るために

「ブラジルは現段階で世界で一番強いチーム。しかし、私は負けるための準備はしたことがない。このようなチームに対して、もしかしたら10回のうち1回成功するかもしれない。勇気と勇敢さ、野心を持ってやりたい」

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が前日会見で強調した通り、10日にリールのスタッド・ピエール・モーロワで挑むブラジルは日本代表にとって高く険しい壁に他ならない。2018年ロシアワールドカップ南米予選で破竹の勢いを勝ち上がったチッチ監督は今回の先発11人を前日会見で堂々と発表。GKアリソン(ローマ)、DFダニーロ(マンC)、ジェメルソン(モナコ)、チアゴ・シウバ(PSG)、マルセロ(レアル・マドリー)、アンカー・カゼミーロ(レアル・マドリード)、右インサイドハーフ・ジュリアーノ(フェネルバフチェ)、左インサイドハーフ・フェルナンジーニョ(マンC)、右FWウイリアン(チェルシー)、左FWネイマール(PSG)、トップにジェズス(マンC)というメンバー構成で行くことを明言した。日本戦最近3戦6ゴールのネイマールを筆頭に、豪華タレントが並ぶことになる。

強敵と対峙する日本はほとんど守勢に回るかもしれない。が、数少ないモノにする試合巧者ぶりを示せれば下剋上のチャンスはゼロではない。ボスニア人指揮官が送り出す面々は8日の練習でグループ分けされた通りの可能性が高い。守備陣はGK川島永嗣(メス)、DF(右から)酒井宏樹(マルセイユ)、吉田麻也(サウサンプトン)、槙野智章(浦和)、長友佑都(インテル)という手堅い顔ぶれ。中盤はボランチに長谷部誠(フランクフルト)と山口蛍(C大阪)が並び、トップ下に代表初招集の長澤和輝(浦和)が抜擢されそうだ。そしてFW陣は右に久保裕也(ヘント)、左に原口元気(ヘルタ)、1トップに大迫勇也(ケルン)の3枚が濃厚。一番慣れた4-2-3-1の布陣で王国にぶつかる見通しだ。

■ネイマール対策は?

そんな日本が真っ先にやらなければならないのが徹底した守備。今回、記念すべき代表100試合のメモリアルマッチを迎える長友も「やっぱりまず守備じゃないですか。チームとしてブラジルにどれだけ守れるかが大事。監督もポゼッションで勝てるわけではないと言っているし、次のワールドカップは結局、相手にボールを持たせて、しっかり守ってカウンターというサッカーになってくる」と最大のテーマを強調する。

とりわけ、日本としては対戦するたびに点を取られているネイマールを何とか封じるところから始めなければならない。マッチアップする酒井宏樹は「パリでやっているときとブラジル代表でやっているときの彼は全く違う人。連携面を含めるとブラジル代表のネイマールはさらにすごい選手で、気持ちよさそうにプレーしている。僕個人1人で止めるのはほぼ不可能なんで、チームとしての守備が大事になる」と10月22日に対峙したばかりの相手エース対策を自分なりに思い描いていた。1対1で勝つことは大前提だが、酒井宏樹が1枚はがされた際には吉田や山口らがスムーズにフォローに入らなければならなくなる。息の合った連携、守備組織を構築できれば、ロシアにも明るい希望が見えてくる。相手のレベルは全く異なるが、10月のハイチ戦(横浜)でまさかの3失点を食らった悪夢を繰り返さないこと。それを徹底すべきだ。

■初招集の長澤はキーになれるか

2つ目のポイントは新戦力の長澤の一挙手一投足。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝・上海上港戦の奮闘を買われ、いきなり代表に抜擢された25歳のMFは2014〜15にかけてケルンに在籍。3シーズンでブンデスリーガ通算21試合出場という経験値を誇り、他の国内組とは一線を画している。「海外でやっていたときから知っている選手が多くいるから、そこまで気を遣うことなく入れた。1・5列目というか、攻撃的MFで攻守のよさを出せるかなと思います」と本人もスムーズに溶け込めた様子だ。

彼のハードワークと球際の強さ、豊富な運動量はこれまでトップ下を担ってきた香川真司(ドルトムント)や清武弘嗣(C大阪)にない部分。そこがハリルホジッチ監督の琴線に触れたからこそ、このタイミングで抜擢されたのだろう。加えて1トップの大迫とは元チームメート。大迫の方は「誰かを意識ってわけではないです」とアッサリ受け流していたが、長澤の方にとっては心強い要素のはず。ボールを高い位置で奪えた場合などは、大迫に預けて自らが一気にゴール前へ抜け出すようなプレーもやりやすいだろう。「(僕らの方は)シンプルな攻撃になる。効率よくゴール前になるべく速くって形はみんなの頭の中にある」と大迫が思い描くイメージを長澤が共有し、ピッチ上で表現してくれれば理想的だ。

■強敵の隙を突いて“本気”を引き出す

もう1つ攻撃面で大事になってくるのが、サイドアタック。原口が「相手は相当強いですけど、ふらっとサボる時もあるので、サイドバックと2対1を作れたりするシーンはもしかしたらあると思う」と話したように、外から一瞬のスキを突いていくことが、2006年ドイツワールドカップの玉田圭司(名古屋)以来、11年半ぶりのブラジル戦ゴールのカギになりそうだ。

原口とタテ関係を形成すると見られる長友も「そこは駆け引きになりますよね。ホントに行ける時は思い切っていかなきゃいけないし。ただ、(対面に位置する)ウイリアンがどこまで守備をしてくるか分かんないし、わざを残ってカウンターを狙ってくる場合もあるし。バカみたいに空いてるから行って、相手のドツボにはまるんじゃ意味がない。行くべきところ、止まるべきところはしっかり判断していかないといけない」と臨機応変な対応の重要性を口にしたが、日本の選手はそういう自己判断力が往々にして足りない。ブラジルはそこに長けたチームであるだけに、少しでも相手を出し抜くずる賢さ、イマジネーションを出すことも意識していくべきだ。

2012年10月のポーランド・ブロツワフでの対戦時は0-4、2013年6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジリア)は0-3、2014年10月のシンガポールでのゲームは0-4と直近3試合の日本は1つのゴールも割れていない。だからこそ、相手に余裕のゲーム運びをさせてしまった。ブラジルを本気にさせたいなら先に1点を取ってプレッシャーをかけること。ドイツワールドカップがまさにそうだった。本気のブラジルを体験しておくことこそ、ロシア本大会に向けた財産になる。もちろん勝利という結果もほしいところだが、「今まで積み上げてきたハリルスタイルで十分戦える」という手ごたえを得ること。それがこの試合の最重要テーマと言っていい。選手たちには120%の力を出して大胆にチャレンジすることが求められる。

取材・文=元川悦子

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