■若き天才GKの出発点と才能の開花
トゥールーズFCに所属しているアルバン・ラフォンはつい最近18歳の誕生日を迎えたばかりのゴールキーパーだ。しかしながら彼の才能はすでに多くの人が認め、それはフランス版ジャンルイジ・ドンナルンマと言われているほどである。しかしサッカーを始めた頃の彼は、自分がこんなにも“大物”になろうとは思っていなかったであろう。なぜなら当時の彼は、ゴールキーパーをやりたいとは微塵も思っていなかったからだ。
ラフォンが生まれたのは西アフリカのブルキナファソ。その後、家族とともにフランスへ引っ越し、彼が7歳のときにモンペリエにある小さなチームでサッカーを始めた……フォワードとして。
だがラフォンの運命が変わったのは2011年、彼が12歳の時である。この年、少年ラフォンはピレネーに引っ越したのだが、そこでゴールキーパーをやってみようと決めたのだ。グローブをはめ、ゴールを守ってみた。するとどうだろう。攻撃をしていた時よりも、明らかに良い結果を得られるではないか。好成績を収める彼のうわさは瞬く間に広がり、2年後にはトゥールーズから声が掛かった。
トゥールーズの下部組織に所属してからも彼の成長は衰えることはなかった。いや、衰えるというよりも予想をはるかに超える成長を見せたのだ。短期間でU-16からU-18へ仲間入りし、さらにはリザーブチームへ、そしてトップチームへと信じられない速さで辿り着いた。

■史上最年少デビュー
2015年12月、ラフォンのリーグ・アンデビューは思わぬ形でやってきた。このシーズン、トゥールーズの成績は常に最下位かその上を行ったり来たりするばかり。そこでアリベッジ監督は最後の手段と言わんばかりのアイデアでその混沌へラフォンを放り込むことを決めたのだ。ラフォンは当時16歳と10か月で、ミカエル・ランドローの記録を破り、ゴールキーパーとしてフランスサッカー史上最年少デビューを果たした。しかし彼にとってリーグ・アンデビューはただの通過点に過ぎない。
「ランドローの最年少記録を破った事は嬉しく思うよ。でももし出来るならリーグ・アンの出場試合数で記録を破りたいね」
ラフォンは時折ドンナルンマと比較されることがあるが、ラフォンには頭一つ抜けた柔軟性、嗅覚、そしてポジショニング能力が備わっている。それはファビアン・バルテズを彷彿とさせる。バルテズがキャリアのスタートを切ったのがラフォンと同じトゥールーズであったのはきっと偶然ではないだろう。
■価値は急上昇、しかし本人は謙虚
今シーズンもラフォンの活躍は目まぐるしく、パリ・サンジェルマンなど特に強豪との試合でも無得点に抑えることに成功している。またジロンダン・ボルドーとの熱気溢れるダービーでは彼のキャリアにおいても初となるPKセーブに成功している。自身の成長とプレッシャー下でも自分のプレーができることを証明した瞬間だ。しかしそれも彼にしてみれば、一つの通過点に過ぎない。「僕ははっきり言って冷静だよ。ここで簡単に満足はしないさ。だってこれで僕の目標が達成したわけではないからね。これからも練習を続けて、楽しみ、そしていいプレーをし続けなくてはならないからね」
そんな彼にはすでにヨーロッパのビッグクラブが注目をしている。もっとも有力な移籍先候補と言われているのがアーセナル、そしてイタリアからはラツィオが名乗りを上げている。
ここ2年間でラフォンの価値は急上昇した。2015年12月には30万ユーロ(約3600万円)だったのが、今では650万ユーロ(約7億8000万円)(Transfermarkt調べ)。トゥールーズはラフォンをチームの財産と見なしており、彼と2020年までの契約を結んでいる。どんなビッグクラブからの声が掛かろうとも、トゥールーズは交渉の出発点として1000万ユーロ(約12億円)以下の金額は提示しないだろう。
ラフォンはどんなに成功を収めようと、そしてどんなに称賛されようと、決して自分を見失わない。たとえ人々が彼のことをフランス版ドンナルンマだと言ったとしても、「ドンナルンマはACミランでプレーしていることを忘れてはならないよ。そのプレッシャーは僕がトゥールーズで感じているよりもはるかに大きいからね」と気に留める様子はない。
“新星”選手としてこれ以上完璧な答えなどないだろう。それ以上の言葉は必要ない。


