■サッカー界にも不可欠となったSNS
今やSNSは人々の生活においてなくてはならないもの、そう表現しても決して大げさではないであろう。それはサッカー界においても同じである。SNSは必要不可欠なツールなのだ。今では各クラブがSNSを使ってファンを集めることに重きを置き、日々、工夫を凝らして試合結果やファンのためにイベントのお知らせなどを発信している。スタジアムでは国内のファンしか確保できないが、インターネットに限界はない。世界中のファン獲得のために、常に競争が繰り広げられているのだ。特にイタリアではSNSはサッカーファンにとって欠かせないツールである。試合が近づくと数百万人が情報収集のためにインターネットを開くと言われ、応援するチームの情報や、相手チームの歴史、スタメン予想などの情報を手に入れているそうだ。現代において、セリエAのクラブがFacebookやTwitter、Instagram、YouTubeなどの公式アカウントを開設していないなどもはや考えられないこととなってしまった。このほかにもスナップチャット、Google+などの媒体をプラスαで利用している場合もある。
公式戦開始前にTwitterに投稿されるスターティングメンバーはあっという間に世界へ広がっていく。ハッシュタグを利用すれば、よりサポーターの目にとまりやすいだろう。今や世間の注目を集めることが世界中のクラブにとって任務となった。
クラブチームにはSNSの担当マネージャーがいることは当たり前だ。彼らは人々が求めている情報を投稿し、収益を上げ、チームに再び投資することで成長に繋げている。拡大→周知→収益→再投資→成長というサイクルを繰り返すことのできるよう、努力しているのだ。まさにピッチで圧倒できるクラブは、当然ネットでも同様に圧倒できる、ということだ。

■王者ユヴェントスはSNSでもトップ
セリエAで6連覇を果たしたユヴェントスは、SNSの媒体において多くの世界中のフォロワーを抱えておりFacebookやTwitter、Instagram、YouTubeでの「いいね!」やフォロワー、登録者の数は約3600万でイタリア勢ではトップである。ユヴェントスはスタジアムを常に満員にし、たくさんのファンを持つチームだ。ホームの観客収容率も、セリエAにおいてトップ。だからこそ、最も人気のあるチームであり、嫌われているチームでもある。ただ、この嫌われているという点がSNSにとっては重要な要素なのかもしれない。良くも悪くもSNSの盛り上がりには“アンチ”の存在は欠かせない。他チームのサポーターがわざわざ反対意見を述べるために、ユヴェントスの公式アカウントに訪れる。そして必然的に公式アカウントのフォロワー数やリツイートが増えていくのだ。
■各クラブがSNSで複数言語に対応
ユヴェントスのSNSのフォロワー数はイギリス勢やスペイン勢には遥かに及ばないのだが、これは英語やスペイン語話者が多いという言葉のハンデからであるので仕方のないことなのだろう。ただ、SNSでの使用言語に関しては多くの国の人が理解できるように各クラブが努力を重ねている。例えばナポリではイタリア語の公式アカウントに続いて、スペイン語、英語のTwitterアカウントも開設している。またユヴェントスは英語、スペイン語に加え、インドネシア語、日本語、アラビア語のアカウントを、ローマはスペイン語と英語に加えて、ギリシャ語とポルトガル語、インドネシア語、アラビア語のアカウントを開設している。一方、フィオレンティーナ、ラツィオ、ミランは1つのアカウントしか持っていないが複数言語でメッセージを発信している。インテルについては、スペイン語はないものの、英語、ポルトガル語、トルコ語、日本語、アラビア語、インドネシア語でTwitterのアカウントを開設している。
Getty■セリエAにおけるSNSランキング
Twitterでは、ローマ、インテル、ナポリのアカウントを合計しても、その数字には及ばないほどミランとユヴェントスの2チームがネット市場を独占している。Facebookに関しては、ユヴェントスがミランに対して50万ほどリード。FacebookやTwitter、Instagram、YouTubeの合計では、ユヴェントスが3600 万、ミランが3200万、ローマが1100万と上位を占めた。インテルはInstagramとYouTubeにおいて、ユヴェントスとミランに続き3位となった。YouTubeでは50万人以上の登録者を抱えるユヴェントスがトップで、これは世界中のサッカー関連のチャンネルの中では16位(『Goal』も19位にランクインしている)となる。たかがSNS……そう思うかもしれないが、この数値は各チームに対する世界中の注目度を反映する貴重な資料だ。より高い収益を上げ常に高いレベルで戦い続けるだけでなく、ミランのように近年の低迷にも関わらず、世界中でファンを獲得し続けるためにも有益となる。
他のイタリア勢についてはどうだろうか? 登録者、「いいね!」、フォロワーの数を合計した場合、4位以降はインテル(900万)、ナポリ(600万弱)、フィオレンティーナ(280万)、ラツィオ(130万)と続く。そしてトリノ(82万)、ウディネーゼ(75万)、カリアリ(65万)がトップ10となる。現在セリエAに所属するチームの中で、最下位はクロトーネで15万。ヴェローナ、バリ、パルマは2部以下に所属しているにも関わらず、熱狂的なサポーターも多いことからSNSのフォロワー数も多い。
■他リーグと比べた場合
ただセリエAのチームのSNSの影響力を考えた際、例えばバルセロナはFacebookだけでも「いいね!」の数が9600万にも上るように、リーガエスパニョーラやプレミアリーグとの比較は不可能であるという点にも触れておかなければならない。その理由は母国語者の数に加え、近年の経済力の影響、そしてSNSが浸透し始めたこの10年での勝利数や獲得したトロフィーの差が影響しているといえるであろう。ただし、これからはどの国においてもサッカー界も時代の流れを読んでいかなくてはならないのかもしれない。すでに“スマホを片手にサッカーを楽しむ”ということがなんの不思議でもない時代に来ているのだから。
文=フランチェスコ・シッル/Francesco Schirru




