Radamel Falcao

ファルカオがモナコで完全復活…天性の得点力を再び披露するまでの道のりとは

■プレミア挑戦は“失敗”

今シーズン、モナコのリーグ・アン優勝は、心温まる話でいっぱいだった。チームとしても、所属選手の個々としてもその話題は多岐に渡っているが、その中でも特に感動的だったのはラダメル・ファルカオの復活劇であろう。

1986年生まれ、現在31歳のファルカオは14-15シーズンからプレミアリーグのクラブへ2度に渡ってレンタル移籍をしたが、2年間のトータルで7得点に留まり、完全に期待を裏切る結果となった。著名なサッカー評論家たちはこぞって「ファルカオは終わった選手」と批判したが、モナコで改めてチャンスを得たことで彼の選手キャリアは今一度脚光を浴びることとなった。

これはあまり表沙汰になることのない事実だが、ファルカオの復活劇は著名な理学療法士のエドゥアルド・サントス氏の尽力あってのものだった。

アトレティコ・マドリー時代、左右両足、そしてヘディングとあらゆるシュートでゴールを量産し、多彩なゴールパターンを見せたファルカオは当時、世界最高のストライカーの一人として称賛されていた。

2013年夏、ドミトリー・リボロフレフの投資により、6000万ユーロ(約72億円)でアトレティコ・マドリーからモナコへの移籍を果たしたファルカオであったが、2014年のクープ・ドゥ・フランス(フランス杯)で、アマチュアチームのモンドール・アゼルグ・フットと対戦した際に負傷。ファルカオは苦悶の表情を浮かべ、ピッチ上でうずくまっていた。診断結果は「前十字じん帯損傷」と深刻なもので、彼は2014年のブラジル・ワールドカップ出場の機会を奪われた。ここからキャリアは右肩下がりとなっていく。

6カ月に及ぶ長期離脱から復帰したファルカオは、14-15シーズンのリーグ・アン開幕戦でいきなりネットを揺らした。すぐに完全復活を果たしたかに見えたが、彼はフランスにそう長く留まることはなく、ナント戦でゴールを決めてからわずか2週間でイングランドへと渡った。

しかし、ケガに苦しんだファルカオはルイ・ファン・ハール監督率いるマンチェスター・ユナイテッドでレギュラーの座をつかむことはなかった。その1シーズン後には再びレンタルでチェルシーに新天地を求めたが、そこで再び負傷する不幸に見舞われ「ファルカオはトップレベルで戦えない選手」というレッテルを貼られてしまったのである。

GFX Falcao colobia chelsea

■エル・ティグレの復活には理学療法士の尽力あり

理学療法士のサントス氏は『Goal』の取材で次のように語ってくれた。

「ファルカオとトレーニングを始めたのは2016年の前半だった。彼は非常に強いメンタルの持ち主で、とにかく意志が固かった中、彼は私のアドバイスを受け入れることを決めたんだ。彼にはピッチ上で心がけていることがあったようだが、フィジカル面で何かが足りなかった」

実に2年半にわたって低迷に苦しみ、一時はキャリア引退の危機にあったファルカオ。再び最盛期のレベルを取り戻すにあたり、彼のメンタルの強さは必要不可欠な要素となった。

「取り組む上で3つの大事な要素がある。それは体、心、そして魂だ。選手には強靭なフィジカルが必要だが、強い心もまた必要である。それによって、彼らは以前と同じレベルで臆することなくプレーできるようになる。試合で選手の身体能力をフルに発揮するためには、試合でのプレー時間が重要な要素となり、そのためにはしっかりと準備をしなければならない。準備を怠れば、さらなる不安や恐怖を生み出す要因になり兼ねない」

「フィジカル的にも、メンタル面でも、選手をよく観察する必要がある」

サントス氏の下でトレーニングを開始してから、ファルカオは自らの復活劇を楽しみ、マンチェスター・シティと戦ったUEFAチャンピオンズリーグ、ラウンド16のファーストレグではそれを象徴するように2ゴールを挙げる。プレミアリーグで失敗の烙印を押された男が、マンチェスター・Cから2つのアウェーゴールを奪ったのはエモーショナルな瞬間であった。

32分にはゴール前でライン際で駆け引きをしながら、右サイドから放り込まれたクロスに合わせて豪快なダイビングヘッドを決めて見せた。

とりわけ素晴らしかったのは61分に決めた2点目だった。ファルカオは左サイドからドリブルを仕掛け、マッチアップしていたジョン・ストーンズをかわすと、カットインしながらGKウィリー・カバジェロの頭上を越える素晴らしいシュートを放った。このようなシュートは「確実に決める」と確信しているストライカーだけが成せる技と言っていいものだった。

Radamel Falcao

■31歳のさらなる躍進に期待

理学療法士のサントス氏によれば、彼の仕事を成功させるためのポイントは、一人一人に合った治療法である。

「私のプログラムやリハビリは、各々に合わせたオーダメイドで同じものは一つもない。なぜなら、同じ人間なんていないからね。私と治療に取り組むアスリートたちのプログラムは全てオリジナルでとてもプライベートなものだから、詳細は言えないんだ。選手たちを比べることはない。選手一人一人を尊敬してるよ」

サントス氏はファルカオが負傷で低迷するよりも以前の状態まで回復していて、自信を取り戻した今後は、さらにメンタル面でも強くなっていくと見込んでいる。

「ファルカオは飛ぶように、次々とゴールを重ねていくと思う。彼は完全復活を果たしたんだ。彼はこれまで長い間、ピッチ上から離れてプレーできなかった時期があったからね。私が思うに、ファルカオはトレーニングでも試合でも、日に日に良くなっている。きっとこれからはさらに良くなっていくはずさ」

ファルカオが見せた今シーズンの結果が、サントス氏の論旨を確かなものとしている。

今シーズン公式戦41試合に出場したファルカオは28ゴールを挙げ、それは平均すると100分に1得点の割合だ。チャンピオンズリーグでは出場した8試合中5ゴールを決めており、彼の決定力は欧州でもやはりトップレベルの域にあると改めて認められたことだろう。

実際のところ、ファルカオのゴール数は最盛期に比べて減少しているかもしれないが、10-11シーズンのポルト時代に残した数字(公式戦42試合38ゴール)を除けば、現在の方がゴールに要する時間は短くなっている。

モナコはリーグ優勝を果たし、チャンピオンズリーグではベスト4に進出した。ファルカオが躍進の大きな原動力になったことは誰もが認めるところであり、彼は31歳で完全復活を果たした。

リーグ・アンでのモナコの覇権奪回、そしてファルカオの再ブレイクを支えた大きな要因として、理学療法士サントス氏の功績があった。この事実は、サッカー界に多大な影響を及ぼした一つの物語として、語り継がれるべき復活劇なのだ。

Falcao GFXGetty Images

文=ロビン・ベアナー/Robin Bairner

広告

ENJOYED THIS STORY?

Add GOAL.com as a preferred source on Google to see more of our reporting

0