パリ・サンジェルマン(パリSG)のフォワード、ネイマールとエディンソン・カバーニの2人の関係をめぐる様々な報道が、目まぐるしく駆け巡っている。「パルク・デ・プランス」で2-0と勝利したリヨン戦でPKキッカーをめぐる争いが起こって以来、この2人の関係性がメディアの注目を集めており、それは今後も続いていくだろう。
しかし、このエースの座をめぐる争いにより、他のもう1人のスター選手が居場所を失いつつあるという事実は、忘れられているようだ。24歳、まさに絶頂期を迎えようとしているユリアン・ドラクスラーのことである。
■超大型補強最大の“犠牲者”
カバーニとネイマールの関係が険悪だとしても、リーグ戦8試合で8ゴールを決めているカバーニがベンチに座ることを受け入れるはずはない。ウナイ・エメリ監督がカバーニをベンチに座らせるという決断を下す前に、2人の関係は壊れることになるだろう。エメリの下、30歳のカバーニは替えのきかない存在であることを結果で証明しており、3年にわたりズラタン・イブラヒモビッチの陰に隠れ、ウイングのポジションで奮闘をしていたところからようやく彼の望むセンターフォワードのポジションを手に入れたのだ。
そんなカバーニと同じような状況に、ドラクスラーも陥ることになるとみられる。ヴォルフスブルクで難しい時間を過ごした後の今年1月に、4,000万ユーロの移籍金でパリにやってきたドイツ人だが、シャルケを離れて以来彼の望むような待遇を得られてはいない。
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ヴォルフスブルクでは、チームのスタイルにフィットしなかったことからファンからブーイングを浴び、フランスでは好調な滑り出しを飾ったものの、今はその時と同じように厳しい状況を迎えている。
エメリは4-2-3-1のフォーメーションを好む監督という触れ込みであったが、2016年夏にパリSGの監督に就任以降は4-3-3を好んで使っている。そのシステムがチームバランスを適切に保っているようにも見え、またネイマール、カバーニ、キリアン・ムバッペの前線3人はアンタッチャブルな存在だ。ドラクスラーが付け入る隙はほとんどないように思われる。
今シーズン起用されたポジションは、自身の好む左サイドではなかった。マルコ・ヴェッラッティの3試合出場停止期間中に、ハビエル・パストーレが負傷離脱中だったこともあって、ドラクスラーに求められたのは10番ポジションでの役割だった。
彼の好むサイドのポジションはスペースを攻略するような選手が求められる。ネイマールはその左ワイドの位置から中へ切れこむことのできる本能を発揮している。
勝ち目のない戦いに挑んでいるようなものだ。出場機会を失うドラクスラーは、リーグ・アンで出場した330分間では1ゴール1アシストにとどまっている。
対照的に、ネイマール、ムバッペ、カバーニの3人は単純計算でトータル25点に直接絡んでいる。9月22日に行われたモンペリエ戦ではネイマールの欠場により出場機会が与えられたドラクスラーだったが、チームが18試合ぶりにリーグ戦でノーゴールに抑えられた試合で印象に残るようなパフォーマンスを見せることができなかった。
レギュラーメンバーの座を奪うチャンスが潰えるほどの最悪なパフォーマンスではなかったものの、パストーレ、ルーカス・モウラ、アンヘル・ディ・マリアが虎視眈々と少ない出場機会でのアピールを狙っている。彼らとも争わなければいけない中で、エメリ監督の信頼が上がるほどのパフォーマンスは披露できなかった。

■世界に名を知らしめた大会の“弊害”
わずか3カ月前の7月には、今シーズンはドラクスラーがブレイクを果たすシーズンになるように思われた。コンフェデレーションズカップではドイツ代表のリーダーとして経験の浅いチームを引っ張り、戦前の予想を覆す躍進の原動力となった。そして彼の活躍ぶりは、大会MVPに選出されるほどのものだった。
しかしパリに戻ってからは、ネイマール、そしてムバッペが加入した影響を受け、ベンチが定位置となる有様だ。
さらに、彼の知名度と存在感を挙げたコンフェデ杯が、皮肉なことに大きな足かせとなったのだった。
「コンフェデレーションズカップの後、合流したのが遅れたのもあって、チームメートのことを追いかけなければならなかった。トレーニングから競争があるけど、僕は少しずつ前進していると思う。先発メンバーに入れるように全力を尽くすし、そうできると確信しているよ」ドイツメディア『ヴェレ』のインタビューにそう答えている。
ドラクスラーの、自身の能力に対する信念には尊敬の念を抱くが、移籍金トータル3億5,000万ユーロの攻撃トリオは、現在のところ誰一人として替えの効かない選手たちだ。そしてこの3トップを生かしたシステムもバランスが取れているように見える。
怪我や出場停止、あるいはネイマールとカバーニの間での争いがエスカレートでもしない限り、ドラクスラーがパリSGで今後も出場機会を得ていくことは難しいかもしれない。
9月27日に行われたチャンピオンズリーグのバイエルン・ミュンヘン戦は、母国のベストチームに対して自身が特別な選手であることを証明できるチャンスでもあったが、残念ながら十分な時間を与えられなかった。
現在24歳。最も出場機会が欲しい時期だ。しかし“花の都”パリの世界一リッチなクラブで、ドラクスラーには茨の道が待っている。
文=ロビン・ベアナー/Robin Bairner
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