フィリペ・コウチーニョのバルセロナ移籍という夢が実現した。数カ月にわたり、彼の将来についての憶測が報道されてきたが、ついにバルセロナとリヴァプールの両クラブ間での交渉がプレミアリーグ最高記録となる1億6,000万ユーロ(約217億円)で合意に達し、リヴァプールのスターはバルサ史上最高額の選手となった。
昨年夏にネイマールがバルサを去って以来、コウチーニョは、ウスマン・デンベレとともにブラウグラナのトップターゲットであった。後者は夏のマーケットで1億5,000万ユーロ(約202億円)の移籍金でバルサにやってきたが、前者はリヴァプールが強硬な姿勢を取り放出を固辞していたため待たなければならなかった。
クラブ間の交渉は夏の移籍市場最終日まで続いていたが、結局リヴァプールが首を縦に振ることはなかった。しかしそれから数カ月、交渉はついに終わりのときを迎える。今季すでにリヴァプールでチャンピオンズリーグに出場しているためバルサの一員としては来シーズンまで最高峰の舞台には出られないが、コウチーニョがサインをためらうことはなかった。
では、彼はバルセロナにどのようにしてフィットするのだろうか。ネイマールの抜けた穴を埋める、左サイドアタッカーとしてか…。彼を獲得したということは4-3-3にフォーメーションを戻すという兆候なのだろうか。アンドレアス・イニエスタのポジションでプレーすることになるのか、あるいは、4人の中盤の一人として起用されるのだろうか。

おそらく、その全てのクエスチョンの答えが“イエス”だろう。バルサの監督、エルネスト・バルベルデは今シーズンすでに4-3-3、4-2-3-1、3-5-2、そして4-4-2といくつものフォーメーションを使い分けており、バルベルデはコウチーニョをいずれのフォーメーションにもはまる選手だと見ている。
ネイマールのいた左サイドでプレーすることになれば、ルイス・スアレス、リオネル・メッシと3トップを形成することになるだろう。かつてのMSNトリオはすでに消滅してしまっているが、このトリオでもそれと同じくらいの破壊的な攻撃力を発揮するであろうし、あるいはメッシをセンターにおいて右のデンベレとの3トップというのも考えられるが、その場合はスアレスがベンチに座ることになる。
コウチーニョはブラジル代表では、ネイマールを好みのポジションでプレーさせるために、右サイドでプレーすることがしばしばある。しかし本来は左サイドでのプレーを好んでいるため、カンプ・ノウではパリ・サンジェルマンに移籍したアタッカーのポジションにそのまま入ることができるだろう。
ネイマールは昨年9月に、バルセロナへの移籍が成立しなかったことにコウチーニョはひどく落ち込んでいると明かし、また同じブラジル人でかつてブラウグラナのスターであったリヴァウドは、コウチーニョはカンプ・ノウでも輝くだろうと太鼓判を押していた。
「コウチーニョはとても良い選手であり、バルセロナへの移籍が叶えば、難なく成功をおさめるだろう」
「彼にはバルセロナで成功するために必要な選手としての特徴をすべて備えている。バルサのスタイルは彼に合うだろうし、ファンも適応するための時間を与えるだろう。彼は成功すると思うよ」

もちろん、いずれわかることだろうが、すでにデンベレを保有するバルセロナはコウチーニョを、リヴァプール時代で輝いていたような中盤で起用することも考えられる。すなわち、イニエスタの後継者と見ている可能性も否定出来ないのだ。
イニエスタは今シーズン、多くの試合に出場しており、彼が長いシーズンに渡り毎週プレーすることは出来ないと考えていた多くの人々を驚かせている。しかし、コウチーニョが加わったことで、イニエスタは(特にコウチーニョがカップ・タイドで出場ができないチャンピオンズリーグなど)シーズン後半戦のビッグマッチに対してもフレッシュな状態で臨むことができるようになるはずだ。
イニエスタ自身も1カ月前には、コウチーニョのことを「彼は素晴らしい才能をもった、最高の選手だ」と称し、自らとチームを助ける存在になると主張している。
「両足を使えて、ゴールも決められるし、コンビネーションプレーも素晴らしい。中盤と前線を繋ぐプレーをすることもできる」
「僕たちのスタイルにフィットできる選手だし、もし彼を獲得できたら最高だね。(同じポジションを争う)ライバルとは見ていないよ。クラブにとっては強力な戦力になる」
より選手層が厚く、強力なチームを持つこと、それはラ・リーガのタイトルをレアル・マドリーに譲り、チャンピオンズリーグでは準々決勝で敗退した昨シーズンからの問題に対しての答えであり、バルベルデが考えていることでもある。
ネイマールが去ったあと、バルサは1人ではなく2人のトッププレーヤー(デンベレとコウチーニョ)を獲得することを決め、またパウリーニョとネルソン・セメドの2人も、高いクオリティを備えたグループに加わった。
バルベルデのもう一つの選択肢は、4-4-2にこだわり、今シーズンすでにワイドの選手で試しているように、コウチーニョとデンベレの2人を同時に左右のサイドアタッカーとして起用し、スアレスを最前線、そしてメッシに引き気味のフォワードを任せて中盤と前線のつなぎ役とするパターンである。

「彼が来るのか、来ないのか、いずれわかるだろう」
「彼は素晴らしい選手だ。我々はリヴァプールをリスペクトしているし、選手のこともリスペクトしている」
バルベルデは先週水曜日のコパ・デル・レイ、セルタ戦前にコウチーニョに関するインタビューでこう答えていた。
それはあくまで外向的な返答ではあったが、その時すでに53歳の指揮官はコウチーニョがバルサにやってくることも、どのようにチームにフィットさせるのかもわかっていたに違いない。そしてどこのポジションで使われようと、コウチーニョは今シーズン残り、そしてこれから先もずっとチームの強化に貢献していくことだろう。
文=ベン・ヘイワード/Ben Hayward




