「私はメッシが引退する日を恐れている」
バルセロナ会長のジョゼップ・マリア・バルトメウは語った。彼に懐疑的な目を向ける人間も多いが、今回の発言は彼らに向けてのものだ。
だが、バルトメウはフットボール界全体に対して発言したともいえる。今、世界中のフットボールファンはリオネル・メッシが引退するまでの一挙手一投足を噛み締めている。
メッシは現在32歳で、来年6月には33歳になる。そうなると彼の引退時期についての疑問が自然と浮かび上がってくる。パフォーマンスが悪くなったからではない。メッシは今年、史上最多6度目のバロンドールを受賞した。しかし、誰にでもいつかは引退の時が来る。
「自分がどれだけ歳をとっているかは分かっている」。メッシはパリでの祭典で話した。タイムリミットは近づいている。 「僕はこういう瞬間を最大限に楽しんでいる。なぜなら引退が近いことは分かっているからだ。時が経つのは早いよ」
■クラブの象徴
Getty Imagesメッシ不在のフットボール界は、かなり違ったものになるだろう。特にバルセロナではそうだ。メッシとは、現代最高かつ史上最高の選手である。
1人の卓越した選手に頼りっきりのクラブがどうやって彼の喪失に適応できるだろうか? クラブは準備ができているのだろうか? メッシはいつ去るのか? メッシの年齢が話題に上ると必ずこのような質問が生まれ、疑問符が部屋中を埋め尽くす。
「我々はメッシ後の時代の用意はできている」
バルトメウは主張するが、それはむなしく響く。会長はメッシの契約が終了する2021年まで残留することに自信を持っており、その後メッシが13歳から所属するクラブともう1度サインすることに確信を持っている。
2003年、ジョゼ・モウリーニョ率いるポルトとバルセロナの親善試合が、メッシのデビュー戦だった。それから彼はカンプ・ノウに計り知れない成功をもたらしてきた。10度のラ・リーガ制覇と4度のチャンピオンズリーグ制覇に加えて、メッシは史上最も有名で愛されるクラブの象徴であり続けている。
メッシが先頭に立った、ペップ・グアルディオラのバルセロナは象徴的なチームで、ボールを愛するというチームのアイデンティティを確立させた。彼らのチームは2009年と2011年にチャンピオンズリーグ決勝でサー・アレックス・ファーガソンのマンチェスター・ユナイテッドを破っている。
メッシが去った後、バルセロナへの反動は、ファーガソンが去った後のオールド・トラフォードと同じく厳しいものになるだろう。
ボールを愛するアイデンティティは、タタ・マルティーノ、ルイス・エンリケ、エルネスト・バルベルデの下で消えてしまったが、世界中の人々は今も毎週メッシを見るためにテレビをつける。才能ある選手は他にもたくさんいるが、メッシがチーム最大の魅力であり、彼が去る時までそれは変わらない。
■代わりのいないスーパースター
Getty/Goalバルセロナの問題は、メッシの代わりがいないことだ。それは10日のチャンピオンズリーグ・インテル戦でも垣間見えた。メッシをスペインに残してイタリアに旅立ったチームはカルレス・ペレス、アンス・ファティら若者の得点で2-1と勝利したが、節々にエース不在の影響を感じさせた。
今シーズン爆発的な活躍を見せているルイス・スアレスは、その未来の一部ではない。スアレスは1月に33歳になる。相も変わらず素晴らしいペースで得点を重ねているが、おそらく来夏か契約の切れる2021年にチームを去る可能性が高い。
一方、3トップのもう1人アントワーヌ・グリーズマンは、3月に29歳だ。7月にアトレティコ・マドリーから加入して以来、チームとうまく噛み合っているとは言い難い。無論、メッシの代わりだと証明できてもいない。同じことはウスマン・デンベレにも当てはまり、疑いようのない才能を頻繁なケガと素行不良で消費してしまっている。
17歳のアンス・ファティは誰にとっても予想外の活躍を見せているが、彼をメッシと同列で語るには荷が重すぎる。最近スペイン国籍を取得した彼は2022年までの新しい契約を結んだ。素晴らしいニュース、だがそれだけのことだ。彼の年齢では、今後どのようなレベルに達するのかは未知数である。
そのため、バルセロナがメッシ後の時代について本当に用意があるのなら、それは現在のチームメンバーを含むものではない。こうした疑問には、以前はネイマールという答えがあった。
ネイマールはバルセロナでメッシの弟分としてタイトルを分かち合ってきた。が、その陰から脱するために2017年にPSGへと移籍せざるを得なかった。今夏には復帰に向けて具体的な交渉も存在したが、パリで思い描いたようなスーパースターにはなれていない。
ブラジル出身の彼は世界最高の選手の1人に数えられる。だが、メッシの活躍は異次元だ。ケガでシーズン開幕を迎え、7試合無得点のスタートだった。それでもリーガ第8節からの5試合で8ゴールと荒稼ぎ。13試合で13ゴールを奪い、あっという間に“定位置”である得点ランクトップに立った。こんなことができる選手は過去にも未来にも存在しないだろう。彼は、今やバルセロナのすべてなのだ。
■デ・ヨングのバルセロナへ
Gettyバルセロナはゴール前で決定的な仕事をする選手が必要なだけではない。メッシはフィニッシュ以外でも素晴らしい働きをする。美しくて正確なパス、追跡不能な動き、そして第六感とも言えるもので、他の選手が真似できないプレーを創り出す。
もしバルセロナで信頼できる選手が1人いるとしたら、それはフレンキー・デ・ヨングだろう。
もちろん、デ・ヨングは文字通りメッシの代わりになることはできない。デ・ヨングはセントラルミッドフィルダーであり、メッシと同じようなアジリティや決定力はない。しかし、22歳の彼はすでに年齢以上に成熟しており、足元の技術や正確なパスワーク、そして時間をコントロールできる。バルセロナという哲学に、最も必要なものを兼ね備えているのだ。
もし過去15年間が“メッシのバルセロナ”だとすると、次の10年は“デ・ヨングのバルセロナ”になるかもしれない。そうすれば、バルセロナは失われたアイデンティティをいくらか取り戻し、メッシ後の暗黒期に軸となるものを見つけ、ラ・マシアの選手たちの目標にもなれるだろう。
現在チームは宇宙人によって導かれており、若手選手たちは全員「真似できない」と考えている。それが現実だ。だが、デ・ヨングがチームの新しい象徴になれば、それは変わる。アヤックスで育ち、バルセロナのDNAを持ち、技術のあるデ・ヨングは、これからの選手にとって手の届かない目標ではない。
フットボールの歴史において、メッシに対するバルセロナのように、1人の選手に依存してきたチームはない。もっとも、彼の特異な能力を考えると自然のことではある。そのため、代役を探すのは不可能だ。だがしかし、“その時”は確実に近づいている。
史上最高の選手が決断を下した時、バルセロナは自ら慣れ親しんだものに回帰し、デ・ヨング中心のチームを作るように焦点を移さなければならない。
メッシ不在の中で元気なく戦い、変えるべきものを知らないまま彼の代わりとなる新しい選手を獲得しようとすると、バルセロナは何年も何十年も取り残されることになるだろう。
文=リック・シャーマ/Rik Sharma
▶UEFAチャンピオンズリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう
【関連記事】
● DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZN(ダゾーン)をテレビで見る方法7つを厳選!超簡単な視聴方法を紹介
● DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃ 料金体系→こちらへ ※
● 【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
● 【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
● Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です



