GFX Serge Gnabry FC Bayern 11062017Getty Images

ニャブリがバイエルンにとって“お買い得”な選手になる理由…驚きの移籍に隠された意図

ドイツ、ミュンヘンの町に驚くべき移籍情報が飛び込んできた。ついにMFセルジュ・ニャブリのバイエルン・ミュンヘン移籍が発表されたのだ。やっと…と言ってもいいのかもしれない。なぜならすでに昨年の夏には、この21歳の若手選手のバイエルンへの移籍がうわさされていたからだ。

それでも移籍が決定したことは驚きだった。メディアはほんの数日前にニャブリがTSG 1899ホッフェンハイムへ移籍すると伝えたばかりで、ここまで迅速にバイエルンへ移籍する体制が整うとは予想だにしなかった。

バイエルンファンの中にも多くの驚きの声が上がった。というのも、バイエルンのウリ・ヘーネス会長は近々大きな移籍の動きがあると予告はしていたが、その一つがニャブリだとは誰も考えていなかったからだ。バイエルンでプレーした経験を持つ元ドイツ代表のシュテファン・エッフェンベルクでさえもスポーツ番組『Sportclub』で「ニャブリにはまだバイエルンに移籍する準備は整っていない」と断言していた。だが、ニャブリは今その一歩を踏み出したのである。

しかし彼の移籍を諸手を挙げて喜ぶことができるファンはまだ少ないのかもしれない。彼がバイエルンで活躍できる可能性は未知数なのだ。

■レナト・サンチェスとは対照的

確かに、ニャブリはバイエルが狙っていたとされるアレクシス・サンチェスのような選手ではないかもしれない。だが、昨シーズンのニャブリはブレーメンで11ゴールを挙げ、バイエルンで質の高いメンバーとして戦えることを印象的に証明している。彼より多くの得点を挙げている選手はブンデスリーガには9人しかいない。さらにニャブリの移籍に要した金額はたったの800万ユーロ(約10億円)である。バイエルンにとってはごくわずかな出費に過ぎず、まさに低リスクで本物の掘り出し物を手に入れたと言えよう。

例えば昨シーズン、バイエルンに移籍したレナト・サンチェスは、ニャブリとは対照的に高い移籍金を払ったものの不甲斐ないシーズンを送った選手だ。しかしニャブリは彼とは違う。ブンデスリーガで輝きを発揮できることはすでに証明済で、ドイツ語も話す。それにまだ21歳ながら、すでにトリッキーでクリエイティブな発想を持ち、常にゴールを脅かすことのできる選手なのだ。今後の伸びしろも考えると、レナト・サンチェスの4分の1の金額でニャブリを手に入れたことはまさに“お買い得”と言えるだろう。

さらに好調時のニャブリはブンデスリーガ最高の選手の一人と言っても過言ではない。ウィングの位置で最高の働きを見せるだけでなく、多くのポジションをこなせるという特典付きだ。ニャブリは左ウィングでも右ウィングでも、さらにはパサーでもトップ下でも機能するし、必要であれば本物のセンターフォワードの務めさえ果たすことができる。実際に昨シーズン、ニャブリはブレーメンで5つの異なるポジションでプレーしていた。これこそ数々のトップクラブが喉から手が出るほど欲しがっている特質だ。

GFX Serge GnabryGoal

■リベリを想起させるポテンシャル

その上、ニャブリにはドイツ代表というスペックも備わる。前々からバイエルンには目論見があり、ニクラス・ズューレやセバスティアン・ルディとの契約に続いてできるだけ使い回しの利く強力なドイツ代表メンバーを加え、自らの戦列をさらに充実させようとしていたのだ。追加として求められたニャブリというピースは、磨き方を心得ていれば息を呑むような輝きを放つダイヤモンドの原石だ。

となると、ニャブリの活躍はバイエルがどれだけうまく磨くことができるかということにかかってくる。しかしブレーメンで大いに活躍した彼のポテンシャルを解き放つことができれば、1年後、あるいは2年後には彼は間違いなく世界有数のトッププレーヤーとなるに違いない。

だがいずれにせよ、長い目で見ればセルジュ・ニャブリにはバイエルンの大御所フランク・リベリやアリエン・ロッベンのような圧倒的な印象を与える足跡をたどれるようなポテンシャルが彼にはある。

そのためにもまずはいいスタートダッシュを切り、ニャブリは自らの実力のほどを見せつける必要がありそうだ。彼はバイエルンでのデビューの瞬間を待ちわびているに違いない。

文=マキシミリアン・シュメッケル/Maximilian Schmeckel

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