今季のブンデスリーガで最も印象深い活躍を見せているのがフライブルクのニコ・シュロッターベックだ。
2021-22シーズン前半戦、シュロッターベックをブンデスリーガ最高のDFと評価する声は多い。フライブルクは17試合を終えてわずかに16失点で、バイエルンと並ぶリーグ最少失点だ。チームはこれまで7つのクリーンシートを記録し、3位につけており、最終的に3位で終えた1994-95シーズンに匹敵する好調ぶりだ。そのフライブルクを後方から支えているのがシュロッターベックである。
一方で、シュロッターベックは自身の去就について以前にはっきりとした宣言を行っている。ドイツ誌『キッカー』のインタビューでこう話す。
「イングランドやスペインでプレーしたいと思ったことが本当にないんだ。僕はいつでもブンデスリーガでプレーしたいと思っていた。叶うなら最高のチームでね」
王者バイエルンからはニクラス・ジューレが出ていきそうな状況で、新しいDFを獲得する必要がある。そしてシュロッターベックは現在ドイツで最も期待されている若手タレントだ。考えられる未来はひとつだろう。
■かつてのドイツ代表DFを彷彿とさせるスタイル
(C)Getty Images2021年序盤時点では、彼の名前を知っているドイツ人はほとんどいなかった。それもそのはず。2019-20シーズンはほとんどプレーすることができず、さらに昨シーズンはローン先のウニオン・ベルリンでも筋肉系のケガで前半戦を棒に振っていたのだ。
だが1月に回復したシュロッターベックは卓越したパフォーマンスを見せ、ウニオンの7位フィニッシュに貢献。ヨーロッパ・カンファレンス・リーグへの切符獲得に貢献した。
ウニオン・ベルリンはローン期間を延長したがっていたはずだが、フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督がシュロッターベックのレンタルバックを望んだ。それ以来シュトライヒ監督はシュロッターベックを中心にチームの守備を構築。この万能な左利きストッパーは4-4-2でも3-5-2でも同様に安定したパフォーマンスを提供するのだ。
長身で運動神経も良く、空中戦を得意とするシュロッターベックだが、同時に敏捷性も高く、戦況を読む力にも長けている。さらにはビルドアップ能力も高い。
シュロッターベックの優雅なプレーは、カールスルーエのアカデミー最高のDFであり、2002年W杯ファイナリストのイェンス・ノヴォトニーを彷彿とさせる。果敢な攻撃参加こそまだ試みていないが、ノヴォトニーと同じく守備的MFとしてもプレーできるのだ。
ノヴォトニーは、カールスルーエがブンデスリーガ1部で猛威を奮った時代に育った。現在のカールスルーエは2部で厳しい時期を過ごしているが、かつてはシュロッターベックも下部組織に在籍していた。当時カールスルーエのアカデミーで長を努めていたエドムンド・ベッカー氏は『ka-news』に対してこう語っている。
「ニコは歩みを続け、トッププロとして自身を確立しているのは間違いないが、常に地に足が着いているんだ。私たちともいまだに連絡を取ってくれている」
■ハーランドとの対戦で成長を実感
Getty Imagesウニオンへの期限付き移籍期間中バイエルンやドルトムントと対戦することができなかったシュロッターベックは、今季は“怪物”アーリング・ハーランドと初めて対峙。第2節でドルトムントと対戦すると、アンラッキーな1失点に抑えて2-1の勝利をもぎ取ったのだ。
「本当のワールドクラスのストライカーとデュエルするのはあれが初めてだった。僕にとって特別な経験だった。自分の現在地と、目指すべき場所がわかったんだ」
「ハーランドのフィジカルとクオリティはすさまじかった。だから試合を通じて集中していなければならなかった。彼にはゴールを許さず、僕はこのレベルのストライカーと競い合えると分かったんだ。これは重要な経験だったね」
この8月の経験から、自信が一気についたシュロッターベック。そして、代表招集ももちろん大きな上乗せになっている。W杯予選に先駆けて9月にドイツ代表に加わったのだった。
ハンジ・フリックはシュテファン・クンツからの強い推薦を受けたのだった。クンツはU-21ドイツ代表の指揮官として、夏には欧州選手権優勝に導いた功績がある。シュロッターベックはU-21ではアルミニア・ビーレフェルトのアモス・ピーパーとコンビを組み存在感を発揮。6試合で4失点に抑え、決勝のポルトガル戦でも1-0の勝利に貢献した。
(C)Getty Images結局、ドイツ代表では5試合をベンチで過ごしたため、まだフル代表ではデビューしていない。だがアントニオ・リュディガー、ティロ・ケーラー、ジューレらのプレーを目の前で見ることができたことは価値のある経験だっただろう。
マッツ・フンメルスも含め、彼らは全員右利きだ。マンシャフトでは左利きのセンターバックが強く望まれている。そしてフリックは成長を見ることができ、「左利きのストッパーを見てみたいはずだ。そしてニコの才能はとても幅広い」と評価している。
シーズン前半を通して、シュロッターベックはほとんどミスを犯さなかった。1-2と敗れたバイエルン戦でさえ、フライブルクは印象的な守備を見せていた。王者の首脳陣は今夏の移籍市場に向け、21歳の才能を注意深く眺めていたことだろう。
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