フェルナンド・トーレスの現役ラストマッチである8月23日のヴィッセル神戸戦からはや1カ月以上が過ぎた。昨年7月10日のサガン鳥栖加入会見から引退まで、1年あまりを日本で過ごしたトーレス。
この間、トーレスの取材を重ねてきたDAZN(ダゾーン)では、その集大成であるドキュメンタリー『THE LEGACY』を制作、現在配信中だ。
世界的なトッププレーヤーが九州の小さな街・鳥栖を選び、日本の文化に触れ、自身初の残留争いを経験する。彼が鳥栖に、Jリーグに残したものとは? その濃密な1年が凝縮されたドキュメンタリーを前後編に分けてお届けする。前編は鳥栖加入から2018年J1残留を決めるまでにフォーカスする。
■サガン鳥栖を選んだ理由

練習を終えて自家用車を運転するトーレス。車内には音楽が流れている。
「音楽は聴くよ。レッドツェッペリン、フーファイターズ。今日はロス・ロドリゲスの『カラマロ』を聴いているよ」
車の窓からは鳥栖ののどかな田園風景が見える。川の上に架かる橋。穏やかな夏の景色が続く。
「鳥栖は静かな街。人々はとても親切でいつも助けてくれる」
佐賀県鳥栖市とはどんな町なのか? サガン鳥栖の竹原稔社長は説明する。
「人口は7万人くらい。誰が何をして何を食べているかが分かるような小さな町です。そしてサガン鳥栖は(Jリーグで)最も小さなホームタウンで活動していて、責任企業を持たないクラブです。市民クラブ、ファンに支えられて活動しているクラブだと思っています」
そんな小さな街の小さなクラブに、元スペイン代表のスーパースターがやって来た。「最初は信じられなかった、嘘だと思っていました」。何人もの鳥栖サポーターが、興奮気味に驚きと喜びを語る。
フェルナンド・トーレス。アトレティコ・マドリーの下部組織出身で、アトレティコ、リヴァプール、チェルシー、ミランでプレーした。2007年から2010年まで所属していたリヴァプールではエースとして得点を量産。トーレスに何度もパスを送った盟友・スティーブン・ジェラードは振り返る。
「彼の後ろでプレーするのが大好きだった。フェルナンドは一緒にプレーした中で最も優れた選手の一人だ」
リヴァプール、チェルシー、そしてアトレティコ・マドリー。トーレスはいくつもの印象的なゴールを決めてきた。
親友・アンドレス・イニエスタが語る。
「フェルナンドは17歳の若さでアトレティコでプロデビューを果たした。多くのタイトルを獲得したし、どのチームでも欠かせない存在だった。スペインを代表するワールドクラスの選手だ」
子どものころから何度も対戦し、代表では共闘。UEFA U-19欧州選手権、A代表ではユーロ、そしてワールドカップを制した。当時はまさか日本で、鳥栖でトーレスのラストマッチを戦うとは思ってもいなかっただろう。
■日本のフットボールの力
©DAZN2018年7月15日、成田空港。日本のアトレティコ・マドリーのファングループが待ち構える。サインを求める人々。本当にトーレスがやってきた。そして舞台は記者会見会場へ。「ありがトーレス」としたためられた掛け軸を竹原社長が披露した。
トーレス獲得に当たって尽力した竹原社長が感慨深く語る。
「日本のフットボールの力が彼をここに来させました。我々だけの力ではない。彼が来ることによって、選手もクラブもファンも見られない景色を見られたんです」
東京から鳥栖に移動したトーレスを今度は多くの鳥栖サポーターたちが迎える。マフラーを回し、チャントを歌うシーンが続く。
再び自家用車を運転するトーレス。スーパースターのあなたはなぜ鳥栖を選んだのですか?
「タイトルを求めてこのクラブに来たのではないよ。残留争いをするチームのために力になりたかった。そして将来的に良いクラブになるように手助けしたかったんだ」
■日本の文化、食、すべてにトライする

サガン鳥栖クラブハウスのミーティングルーム。チームメートとの初対面の場面だ。トーレスが入ってくると選手たちから大きな拍手が起きた。豊田陽平は最初に会ったときのことをこう語る。
「楽しみでワクワクしていました。数々のビッグクラブに所属していたし、足りないものだらけだろうと思っていたので、サポートできることがあればとみんなで話したんです。すると、『そんなものはどうでもいい』と。フィットしやすくしてくれることのみが必要だと言ってくれたんです」
初出場は、2018年7月22日、明治安田生命J1リーグ第17節・ベガルタ仙台戦だった。50分、田川亨介に代わって背番号9がピッチに立つ。CKからのいきなりのヘディング。ドリブルからのシュート。しかし、この試合は87分に西村拓真に決められ、鳥栖は0-1で敗れた。
トーレスは何度もサポーターへの感謝を口にする。「試合開始前からサポーターがずっと応援してくれて素晴らしかった。彼らのためにも一生懸命プレーして結果を残したい」。
日本になじむ努力も続けた。「家庭教師をつけて日本語の勉強をしたり、日本になじもうとする姿は印象的でした」と高橋秀人は語る。
クラブハウスの一室。長机の上に食事が置かれていく。「クラブハウスが小さいからこの部屋で何でもやるんだ。ミーティングもするし、ビデオも見る。食事や写真撮影もする。すべて受け入れているよ」。おたまを使って自ら食事を配膳する。「食べ物は何でもトライするようにしているんだ」。納豆をかき混ぜる。「こうやってするんでしょ?」。納豆から引く糸をぐるぐる回す。
■多くを語るのではなく
2018年8月26日、第24節・ガンバ大阪戦の試合映像。
「右サイドでボールを持った福田がクロスを上げると飛び込んだトーレス! 頭で合わせてゴール! リーグ戦初ゴール、フェルナンド・トーレスーーー!」
鳥栖はこの年、残留争いに巻き込まれ苦しんでいた。
「フェルナンドが取れば違います。それ一つでチームの雰囲気が良くなるんです。(自分も)フェルナンドの点に絡むことができればと思ってプレーしていました」。チーム最古参の高橋義希は回想する。
高橋秀人も言う。「多くを語るというよりは、態度や姿勢で示すところが大きくて。サガン鳥栖のエンブレムを背負って、サガン鳥栖の選手として勝つための言動なんです。レフェリーに対してもそうだし、チームメートに対しても。奮い立たせような姿勢は常に示し続けてくれた。そういうものを見習わないと」。
時に激しく相手に詰め寄る。レフェリーに抗議する。そしてゴールを外した金崎夢生を抱きしめる。来日後、試合で見せた印象的なシーンが続く。
リヴァプールでキャプテンマークを巻いたジェラードの映像。チェルシーのジョン・テリーの映像。そしてトーレスは、鳥栖でキャプテンマークを巻いている。
「これまで偉大なリーダーたちから多くのことを学んできたんだ。私もチームの規範となるようなリーダーになりたいと思ってきた。プロとしての振る舞いやチームメイトを手助けするようなね」

再び自家用車を運転するシーン。
「去年日本にきたとき、サガンは残留争いの真っただ中だった。今(2019年)の状況とすごく似ている。でも、来ることを決めたんだ」
2018年11月24日、第33節・横浜F・マリノス戦。1-1で迎えた78分、勝ち越し点を流し込んだのは背番号9。爆発するスタジアム。涙を流すサポーターたち。
「残留に貢献したF・マリノス戦のゴール。みんなで泣いたことは忘れられない」(後編:2019年開幕から引退までに続く)
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

