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ダービーの熱さを知る男、磐田DF森下俊…静岡ダービーは「絶対に勝たなくてはいけない」/インタビュー

明治安田生命J1リーグ第28節を終えて6位につけているジュビロ磐田。残留争いに巻き込まれた昨季から一転、好調を続ける要因のひとつがリーグで2番目に少ない失点数が示す守備力。その安定した守備を最終ラインで支えているのが森下俊だ。

静かな男が、ピッチに入ると鬼神に変わる。気迫溢れるプレーで魅せる森下は磐田ユースの出身で、若いときから静岡ダービーの熱さを知る男でもある。2005年にトップに昇格。09年から3チームで「多くを吸収した充実した時間」を過ごし、14年に磐田に復帰。今季は不動のCBとして先発出場を続けている。4月のホーム戦では、自身のJ1初ゴールとなる先制弾を挙げて攻守で勝利に貢献した熱きDFに、静岡ダービーへの思いを聞く。

――静岡ダービーで印象に残っている試合は? 

森下 エコパでの2006年のホーム戦ですね。僕はスタンドから見ていたのですが、そのときの清水エスパルスにはヨシくん(太田吉彰)のお兄さん(太田圭輔氏)がいて、試合前から“兄弟対決”が注目されていました。試合終盤に対決が実現して、かなりバチバチ激しくやっていてダービーの熱、独特の雰囲気というものを改めて感じた試合でした。

――やはりダービーは特別ですか?

森下 そうですね。ユースでの対戦のときから、他のチームとの対戦以上に負けたくないと強く思っていましたから。トップではなおさらです。熱くなり過ぎても良くないし、それまでと同じようにやろうとは思ってはいます。ただ、何というか表現するのは難しいけど、どうしてもいつもとは違うというか、チーム全体の気持ちが高ぶります。サポーターの方もいつも以上に熱くなりますし、「必ず勝ってくれ」という思いがひしひしと伝わってくる。絶対に勝たなくてはいけないし、負けるなんて考えたくもないですね、ダービーは(笑)。

――4月のダービーでは先制点を決めました。

森下 カップ戦の清水戦に先発したことはありましたが、リーグ戦では前回対戦が初めて先発したダービーなんですよ。エコパに4万人も集まってくれて、熱気に包まれる中てプレーできることは選手として幸せだなと、まず感じました。先制点はFKの場面で頭を出したら、俊さん(中村俊輔)からすごく良いボールが来たという感じでした(笑)。相手DFをうまく抑えられたのも良かったですけど。

――しかも森下選手のJ1初ゴールでした。

森下 うれしかったですね。試合にも勝てたので、記念に試合球をもらいました。今、家のリビングに飾ってあります。

――その試合を振り返ってください。

森下 シーズン序盤で清水がどういうサッカーをしてくるのか明確にはわからなかったので、相手がどんな動きをしてくるのかをしっかり見ようという意識で試合に入りました。それと、特に気をつけたのはDF同士の距離感です。あのとき、自分たちは4バックだったので4人の間があかないようにと。他のチームとの対戦でもそこは変わらないけど、ダービーは声も通りにくいし、清水の前線には良い選手がいますから、より大事になります。

――結果は3-1で勝利しました。

森下 でも、アディショナルタイムに(鄭)大世選手に決められて、完封できなかったのが悔しかったですね。試合後は勝った喜びよりも、悔しさの方が大きかったと思います。あのシュートはすごかったですけど。迫力に気押されたかも知れません。時間が止まったというか、スローモーションで見えました。清水の意地を感じたゴールでしたけど止めたかった。ああなったら、もう突っ込んで止めるしかないですけど、それくらいの気持ちでやらないとダメだと痛感しました。

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――前回対戦を踏まえて、10月14日のダービーのポイントは? 

森下 まずは、気持ちです。ホーム戦での一番の勝因は気持ちが入って、全員が前に前に行けていたことだと思います。清水は、残留争いに巻き込まれないためにも必死だと思います。昨年、僕たちもその苦しさを経験しているので、絶対に勝つという闘志がどれくらい強いかわかります。それに対して引いて受けてしまったら相手の思うツボだし、今はそれを跳ね返す力が自分たちにはある。決してリアクションにならずに、攻撃でも守備でも全員が前にアクションを起こせるか、だと思います。特に立ち上がりに、しっかり勢いを出すことが大事だと思います。

――その中で、森下選手が最も意識することは? 

森下 熱く戦うことはもちろんですけど、自分は冷静にファイトすることを一番に心掛けたい。ダービーは気持ちが高ぶるだけに、前に行き過ぎてしまうこともあると思います。自分が後ろでしっかりバランスをとり、常に周りを見て全体のことを考えながらやらないといけないと思います。今、自分はかなり冷静というか、周りをよく見ながらプレーできていると感じています。変わったというか、成長したところかなと思うので、その力を出したいですね。

――成長の理由は?

森下 今年は(高橋)祥平と(大井)健太郎くんと3バックを組むことが多いのですが、右の祥平は攻撃が好きで攻め上がる回数が多い。右のウィングバックの(櫻内)渚も今は攻撃的なプレーが武器になっていて、そこがチームの強みにもなっています。彼らの攻撃力を生かすためにも、健太郎くんと自分がうまくバランスをとるという意識が強くなってきました。それに健太郎くんがいると、すごく安心感があるんですよ。チャンスがあれば自分もどんどん前に行くことができるので、機を見る、状況を見るということをより意識するようになっていると思います。

――警戒する清水の選手は? 

森下 前線の選手です。先程言ったように、強力な選手が揃っているので。大世選手はボールが収まるし、チアゴ・アウベス選手の仕掛けやドリブル突破は脅威です。清水の試合のビデオを観て、チアゴ選手は身体がキレキレだなと。彼らにボールが入ると厄介なので、そこに出させないように前からのプレスではめることができれば、と思います。左サイドバックの松原(后)選手の攻め上がりとクロスにも警戒が必要です。でも、そのサイドで渚たちが主導権を握ったら前に出てこれないと思います。一人では守れないので、そういうように全員で相手の長所をどんどん潰して、前向きにやりたいですね。

――リーグ再開戦がダービーです。

森下 中断明けのアウェイ戦で難しさもあると思いますが、チームとして良い準備ができています。しっかりコンディションを整えて、自信を持って臨みたいですね。ダービーの勝利は勝点3以上の価値があります。ここで清水に勝てば、終盤戦に向けてすごく勢いがつく。乗っていきたいという気持ちはあるし、そういう意味でも大事な一戦です。

――勝利すれば、YBCルヴァンカップでの勝利も含めて清水に“シーズントリプル”を達成できます。

森下 滅多にそういうチャンスはないですからね。でも、前の2試合とはお互いチーム状況が違うし、また別の試合になると思います。清水は順位が下ですけど、それも関係ありません。フレッシュな気持ちで臨むことも大事だと思います。

――今季ここまでのジュビロの戦いについて収穫と課題は?

森下 収穫は、失点してもガクッと下を向くことがなくなったこと。昨年までと大きく変わったところだと思います。失点した後も先制した後も、今はこういう時間帯だからこうしようということを、共有できることが増えました。1点失ったけどまだ時間があるから焦らないでやろうとか、苦しい時間をしっかり耐えようとか、先制した後は前から行くのか行かないのかをよりはっきりさせよう、ということができるようになったことが収穫です。課題は、それでもまだ失点することが多い時間帯があること。後半の序盤です。それで苦しくなる試合が多いので改善していきたい。ダービーでも注意したいですね。

――6位という順位については?

森下 正直、想像していませんでした。懸命にやっていたら、この順位にいるという感じです。今シーズンは過ぎるのがすごく早いんですよ。充実しているからかな、と思います。

――最後に、ダービーに向けてサポーターにメッセージを。

森下 今季も苦しいときに、スタンドの声が何度も僕たちを奮い立たせてくれています。感謝をしています。ダービーでも気持ちを前面に出して、全員がいきいきと躍動するプレーを見せたいと思うので、後押しをしてください。チケットは完売でジュビロのサポーターの方もたくさん応援に来てくれると聞いています。エールに勝利で応えて、皆さんに気持ちよく帰ってもらえるように頑張ります!

●インタビュー・文:高橋伸子

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