2017-12-04-Cerezo-hiroshi-kiyotake(C)Getty Images

セレッソ大阪、ACL出場権確保も最後で「ツメの甘さ」を露呈…来季こそはJ1制覇を!

11月26日のJ1第33節・ヴィッセル神戸戦を3-1で勝って3位以内を確定させ、ラスト1試合を残してアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を確保したセレッソ大阪。今季10番を背負った山口蛍が繰り返し言い続けてきた目標が現実になり、チーム全体に安堵感が広がった。

しかしながら、杉本健勇が「3位以内確定して『ようやった』という方が沢山いると思うけど、僕はそう思わない。勝ってた試合を落としてしまったり、ちょっとしたところで2~3試合勝てていたら、Jリーグのタイトルが取れていた」と話したように、尹晶煥監督も選手たちも「もっとやれた」という不完全燃焼感が少なからずあるはず。その思いを12月2日の最終節・アルビレックス新潟戦にぶつけ、白星で有終の美を飾りたかった。

すでにJ2降格が決まっている新潟相手ということで楽観的な見方が広がったが、彼らは終盤5試合無敗。今季で引退するレジェンド・本間勲を勝利で送り出したいというモチベーションもあり、凄まじい闘志でぶつかってきた。セレッソは序盤、エース・杉本に決定機が訪れたが、決めきれず、前半はこのシュート1本に終わってしまう。後半に入ってからようやく攻めのスイッチが入り、水沼宏太がゴール前に侵入して左足シュートを放つなど反撃したが、新潟最多スコアラーのホニに手痛い失点を許してしまう。終盤にも杉本が積極果敢にゴールを狙ったが、そのままタイムアップの笛。最終戦で0-1と6試合ぶりの敗戦を喫し、杉本も小林悠(川崎)に抜かれて得点王タイトルを逃すというまさかの結末を余儀なくされた。

「悔しいの一言ですね。前半の立ち上がりからあまりよくなくて、いつかよくなるだろうと思っていたけど、最初から最後までセレッソらしいプレーができなかった」と杉本は不完全燃焼感を吐露したが、それはチーム全体に共通する思いだったに違いない。

今季J1を振り返ってみても、無得点試合はわずかに5。J1通算得点数も65と優勝した川崎フロンターレの71に次ぐ2位の数字を残していて、それだけ今季のセレッソは攻撃力が大いに光った。それを最終戦で出し切れなかったのは悔やまれるところだが、22ゴールをマークした杉本のブレイクはやはり賞賛に値する。川崎から1年で復帰した昨季は左サイドアタッカーのポジションでシーズン通してプレーし、14得点をマークしていたが、今季は最前線にコンバートされて期待に応えた。当初は「左に戻りたい」という迷いも少なからずあったようだが、「自分がセレッソを勝たせるんや」という責任感が日に日に強くなり、ゴールという結果もついてきた。

尹監督が山村和也をトップ下のポジションに起用したことも、杉本の前線での負担を経験したことだろう。終盤には柿谷曜一朗も本来の真ん中に戻り、杉本といいコンビネーションを披露した。チームメートとのいい連携があったから、187㎝の大型FWが覚醒したのだ。それはアカデミーに力を入れてきたクラブ力の成果でもある。すでにセレッソは下部組織出身の柿谷、山口を2014年ブラジルワールドカップに送り出しているが、杉本も2018年ロシアワールドカップに参戦してくれれば、アカデミー全体の士気も上がる。そういう方向へと突き進んでほしいものだ。

攻撃陣に関して言えば、杉本以外の選手にもう少しゴールがほしかった。山村が8点というのは大成功と言えるかもしれないが、柿谷が6点、水沼が3点というのはまだまだ少ない。今季古巣復帰した清武弘嗣も6点。4度のケガに見舞われ、18試合しか出ていないのに、このゴール数はまずまずかもしれないが、やはりシーズン通してコンスタントに結果を残してほしいところ。杉本に依存しない得点パターンをいかに構築していくか。そこは来季のセレッソに課された重要テーマ。ACLも並行して戦うことになるだけに、得点源は多ければ多いほどいい。選手の組み合わせや戦い方のバリエーションを広げる努力がより一層、重要になってくる。

一方の守備は、尹監督がオフシーズンから強固なディフェンス組織を作り上げるべく徹底したトレーニングを積んだ成果もあって、ボールの奪いどころが明確になり、粘り強く相手を跳ね返せるようにはなった。今季加入したマテイ・ヨニッチ、急成長した木本恭生の存在もプラスに働いたのは確かだ。山口も「昨年に比べて守備が非常によくなった」と話していたが、守りの安定化が今季の大躍進の原動力になったのは事実だろう。

とはいえ、J1通算失点数は43と、リーグ最少だったジュビロ磐田より13も多い。優勝した川崎が32、2位の鹿島アントラーズが31、4位の柏レイソルが33、5位の横浜F・マリノスが36といずれも30台にとどまっているのを見ると、やはりセレッソの失点数は多すぎる。今季の中で最もチーム状態が悪かった9月のベガルタ仙台戦の4失点、川崎戦の5失点などが象徴的だが、1つのきっかけでガタガタと崩れてしまう脆さが全くなくなったわけではない。そういう課題を克服しない限り、長年の夢であるJ1タイトルには手が届かない。「まだまだ甘さがある」と杉本も自戒を込めて話していたが、そういう甘さをなくすべく、チーム全体が意識を変え、勝利を貪欲に追求できる集団へと変貌していく必要があるはずだ。

Jリーグ・ルヴァンカップを制し、95年のJ初参戦時から追い求めてきた初タイトルを手にしたセレッソ。今季はまだ天皇杯優勝の可能性も残されていて、強豪の仲間入りを果たした感も強い。だからこそ、来季は本気でJ1を狙いに行くしかない。2013年・J1で4位に入ってACL出場権を得ながら、まさかのJ2降格を強いられた2014年の二の舞を繰り返すことだけは、決して許されない。「セレッソはいい時と悪い時の波が大きい。そこから抜け出さないといけない」とクラブOBの香川真司(ドルトムント)、乾貴士(エイバル)も話していたことがある。それを実践し、常勝軍団への道を歩んでいくこと。今のセレッソに求められるのはそれしかない。

文=元川悦子

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