11月4日に迫った2017年Jリーグ・ルヴァンカップ決勝(埼玉)。悲願の初タイトルを狙うセレッソ大阪は、川崎フロンターレと一大決戦に向け、臨戦態勢に突入している。
今季から指揮を執る尹晶煥監督は、J1、ルヴァン、天皇杯の3つのトーナメントを並行して勝ち上がるため、ここまでJ1主体の「主力組」とカップ戦主体の「ルヴァン組」の2グループに分けてチームを構成してきた。「ルヴァン組」をけん引するベテランDF茂庭照幸も「ルヴァンも天皇杯も監督がうまくターンオーバーをしてくれてるから、僕らにとってはいいモチベーションになっている。今はホントにチームが1つになってます」と好循環を実感している様子だ。
彼ら「ルヴァン組」を大一番に起用するのか、それともJ1の主力組で挑むのか。そこはファイナルを戦う上で重要なポイントだ。尹監督は9月の準々決勝・浦和レッズ戦、10月の準決勝・ガンバ大阪戦のそれぞれ第2戦に山口蛍、杉本健勇、キム・ジンヒョンの代表組を除く主力組を送り出している。ルヴァンのようなカップ戦は勝敗が決まる第2戦の重圧がより大きい。そこに主力組を抜擢してきたということは、今回のファイナルもベストメンバーをぶつけるはずだ。
となれば、ルヴァン出場機会の少なかった選手たちは、「ルヴァン組」の労に報いるためにも、勝利に直結する明確な仕事を果たさなければならない。代表組の山口、杉本、キム・ジンヒョンの3人は特にそう。杉本が「みんなに連れてきてもらったファイナルだからしっかりやらないといけない」と話すように、彼らの一挙手一投足が勝負の行方を大きく左右するのは間違いない。彼らが闘争心を前面に押し出し、仲間たちを力強くけん引してくれれば、チームの一体感はより一層、高まる。そこが肝心なのだ。
95年にJリーグ初参戦してから23年。2000年の第1ステージ、2005年のJ1が象徴的だが、あと一歩でタイトルに手が届く状況まで辿り着きながら、頂点に立つことができなかったセレッソには、どこかチームとしての結束力や確固たる自信が足りない部分があった。だが、今季の選手たちなら歴史を変えるだけの底力がある。それを遺憾なく示してほしい。
とりわけ、今季J1で19ゴールを挙げ、日本代表FWとしても頭角を現しつつある背番号9にはゴールという明確な結果が求められてくる。ご存知の通り、杉本にとって川崎は2年前に1シーズンを過ごしたクラブ。当時は大久保嘉人(FC東京)、小林悠(川崎)らを強力FW陣の壁に阻まれ、出場機会を増やすことができなかった。そんな古巣相手に成長した姿を示そうと挑んだ9月30日のJ1・アウェー戦は1-5とまさかの大敗。ゴールも奪えず「厳しい試合でしたね。勝ちたかったですけど、全てにおいて相手より劣っていた。負けを認めてしっかり次に進みたいと思います」と潔く力不足を認めるしかなかった。
その後、杉本は10月15日のJ1・サガン鳥栖戦で1点、21日の同ヴァンヴォーレ甲府戦で2点とゴールラッシュを披露。わずか1カ月の間に逞しさを増した。本人も「等々力のゲームと同じ失敗を絶対に繰り返すわけにはいかない」と強い思いを抱いているはず。山村和也の負傷離脱以降、柿谷曜一朗がトップ下に入ってタテ関係を形成するようになったのも、背番号9には新たなエッセンスがもたらされている。彼らが織りなす豊富な攻撃バリエーションを発揮すべき時は今しかない。 セレッソにとってもう1つ前向きな要素は、左ハムストリング筋損傷から9月下旬に復帰した清武弘嗣の復調だ。2012年夏からドイツ、スペインでプレーした男は鳴り物入りで今年1月に古巣に戻ってきたが、4度のケガに苦しみ続けた。本人も慎重な姿勢を示し続けていたが、10月の鳥栖戦で先発に復帰。そこからはコンスタントに4-2-3-1の左FWのポジションでプレーしている。
「マル(丸橋祐介)とソウザと左で絡んで崩したシーンは何回かあったし、もっともっといい感じでできると思う」と鳥栖戦後も手ごたえを口にしていたが、多彩な組み立てやリズムの変化、リスタートの精度の高いキックなど背番号46がもたらすものは少なくない。山口も「やっぱりキヨ君が復帰してきたのは大きい」と絶大な信頼を寄せている。ドイツ・ブンデスリーガという凄まじいプレッシャーのかかるリーグを4シーズンも戦い抜き、日本代表でも数々の大舞台に立ってきた男はハイレベルの経験値も違う。そういう選手がいるだけで、チーム全体が動じることなく90分間を戦える。川崎に中村憲剛がいるなら、セレッソには清武がいる。そんな司令塔の戦術眼や駆け引きもこのゲームの勝敗を大きく左右するだろう。
そして、キャプテン・柿谷曜一朗の得点感覚が研ぎ澄まされてきたこともプラス要素に他ならない。10月29日の大宮アルディージャ戦でも右CKをファーサイドで待ち構え、狙いすました右足シュートでネットを揺らしている。今季通算ゴール数も6に伸ばし、ようやくエンジンがかかってきた印象だ。今季の柿谷はリーダーとしての責任感が強すぎるあまり、守備やハードワークなど黒子の役割に徹することが多かった。が、この男ほど華やかな大舞台が似合う男もそうそういない。本人は「俺、メンタル弱いから」とかつて冗談交じりに話したことがあったが、非凡な得点感覚と攻撃センスは誰もが認めるところ。それを杉本、清武、水沼宏太らとの共演で発揮できれば、セレッソを初タイトルへと導くことも可能なはず。背番号8の意地とプライドに賭けて、ゴールに直結するプレーに数多く絡んでほしい。
爆発力のある川崎を守備陣がしっかりと封じ、攻撃陣がしっかりと結果を残す。そんな理想的な試合運びを4日の埼玉スタジアムでは披露してもらいたい。尹監督と選手たちが歓喜の雄叫びを挙げるのを、セレッソサポーターは心待ちにしている。
