Manchester City vs Manchester UnitedGetty

シルバ抜きのシティに魔法は起きず…モウリーニョが停めたバス除去に必要だったのは?

持っているものの良さに気がつくのは、それを失ったときである。改めてマンチェスター・シティのサポーターはそれを思い知ることになった。

ダビド・シルバをクラブ史上最高の選手と考えるサポーターは決して少なくない。それはエティハド・スタジアムに訪れた人々を見れば明らかだった。シルバがマンチェスター・ユナイテッドとのダービーマッチを欠場すると分かったとき、多くの人は表情を曇らせていた。

シルバの不在は試合そのもののクオリティを低下させた。何千、何万、おそらく何百万ものニュートラルな立場のフットボールファンは、世界最高峰の指揮官が智略を巡らせ合うと期待してマンチェスター・ダービーを見ていたはずだ。もしそうだとしたら、おそらくがっかりしたことだろう。彼らを満足させるには、水色のユニフォームをまとうシルバという選手が足りなかった。

キックオフまで1時間を切ったタイミングで、マンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョ監督は予めプランを示唆していた。「勝ち点1を取れれば、チームにとっては素晴らしいことだ」という言葉通り、守備的なアプローチを選択した。シティのフォワードと自陣ゴールの間に10人を配置することで、モウリーニョは引き分け以上という目標を達成したのだった。

一方のシティはユナイテッドゴールに対して、今シーズン最多となるシュートを雨あられのごとく放った。しかし、選手が密集した“赤い壁”を突き破り、得点を決めることはできなかった。

シルバの不在がシティに深刻なダメージを与えていたことは明らかだった。彼は過去5年でプレミアリーグの年間ベストイレブンに一度も選出されていないが、シティファンにとってイングランド・プロサッカー選手協会を痛烈に批判することが毎シーズンの恒例となっている。シルバが最後に表彰されたのは2012年のことであり、月間最優秀選手賞を獲得したのも2011年が最後である。

David Silva Sergio Aguero Manchester CityGettyHD Sergio Aguero Manchester CityGetty

当然、指揮官のジョゼップ・グアルディオラも、シルバを起用できないことに苦しんでいたことだろう。シルバは素晴らしいパフォーマンスを見せた試合で取り立てて称賛の声を浴びることは少ないが、試合に出場していないときにその価値が認識されることをグアルディオラは知っている。

シティは先週日曜日のFAカップ準決勝のアーセナル戦で、珍しく激しいプレーを仕掛けてきたアーセナルのチャージによりシルバを試合序盤で失った。膝を痛めたシルバは開始からわずか23分で交代を余儀なくされ、同時にこのマンチェスター・ダービーの欠場が決定してしまった。シティファンにとって朗報なのは、ケガが深刻なものではなく、日曜日に迎えるミドルスブラ戦にはおそらく復帰できるだろうということだ。

ユナイテッド相手に勝ち点1の獲得で終わったことが、チャンピオンズリーグ出場権獲得には何の影響もなかったとしても、シティはエティハド・スタジアムでの試合にシルバがいて欲しかったことだろう。

グアルディオラのコーチングスタッフたちの間では、アーセナル戦の結果は審判の判定により盗まれたようなものであり、この試合に向けてチームは”カリエンテ“(スペイン語で、熱くなっている、怒っている)であると話されていた。

そして選手たちは戦う準備をし、すべてのフラストレーションをライバルであるユナイテッドに向けるよう言われていた。そして、実際に試合では意欲十分にプレーし、良いゲームも展開している。彼らは試合で確かに“カリエンテ”を見せたが、必要だったのは“パウサ”(スペイン語で、サッカーに必要なインテリジェンス、サッカーIQ)だ。グアルディオラが重要とみなし、このチームではシルバとイルカイ・ギュンドアンが少しだけ供給できる要素は、この試合でいくらか欠けることになってしまった。

Marouane Fellaini headbutt red card Manchester United Manchester City

試合が進むにつれ、ユナイテッドは次第に深い位置を取るようになり、シティはよりボール支配率を高めたが、ゴールの匂いが漂うことはなかった。マルアン・フェライニが無知で無謀なファウルの連続によって退場となったことにより、モウリーニョはさらに守備的なアプローチを選択した。全ての選手に対してボールより後ろにポジションを取ることを指示したのかと考えられるほど、選手たちは閉じこもった。その結果、シティは打開策を見出すことが難しくなってしまった。

ユナイテッドが10人になったすぐ後に投入されたガブリエウ・ジェズスは、アディショナルタイムにヘディングで宿敵のゴールをついに打ち破って歓喜の雄叫びをあげた。しかしその刹那、副審が上げたオフサイドフラッグを確認し、ファンも含めたセレブレーションは打ち消された。

若きブラジル人ストライカーは、トッテナム戦でもオフサイドのため得点を取り消されたが、すぐさまゴールを連発し、シティファンたちのお気に入りの存在として名前が挙がるようになった。彼のボックス内で違いを生み出す才覚は、シーズン最終局面を迎えた今、シティにとって大きなプラス要素である。ここに来て調子を上げるセルヒオ・アグエロとジェズスを、グアルディオラがどのように組みあわせるのかはとても興味深いところだ。

しかし、グアルディオラがチームにすぐにでも戻ってきてほしいのはシルバである。地元のサポーターはシルバの才能を評価しているが、シティファンでない人たちにとっても、それに倣うのは今からでも決して遅くはない。

文=サム・リー/Sam Lee

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