■風格
それは後半が始まってから、約15分後のことだった。
8月25日、ポンフェラディーナの本拠地トラリンでは、リーガ・エスパニョーラ2部第2節が行われていた。収容人数が8400人ほどのトラリンは、スタジアムも小さければピッチサイズも小さく、だからこそアウェーチームにとってはやりにくい。これまで通りのプレーをしようとしてもピッチは窮屈そのもので、かてて加えて、表情すら見える距離の観客は少数だからこそ一枚岩となって圧迫してくる。乗り込んできた選手たちにとって、息はしづらい。こうした逆境の深みにはまれば、何か特別なものが必要となる。
レアル・サラゴサにはそんな特別なものがあった。特別な選手が、いた。そう、香川真司だ。彼が59分に決めた先制点は、息も絶え絶えだったサラゴサに酸素を送り込むものであり、昨年2月からトラリンで無失点を維持していたポンフェラディーナの鉄壁を打ち破るものにもなった。
サラゴサのユニフォームを袖にまとった香川は、2試合目の出場にして早々にゴールを記録した。通算出場時間から数えれば151分目、シュート数であれば3本目である。彼が実現したフィニッシュは、リーガ2部には似つかわしくない、エリート選手としての風格を感じさせるものだった。
ゴールシーンのハイライトが始まるのは、右サイドを駆け上がったジェームス・イグベケメのクロスから。彼がファーサイドに送ったクロスに待ち受けていたのが、このハイライトの主役・香川真司だ。日本人MFはフットボールで最たる違いを生み出せる一条件である、両利きの選手に思える。繊細なタッチでクロスボールを天から地に下ろすと、対面するDFを相手に右足でボールを少し右に出してからシュート。これはDFに弾かれたが、跳ね返ったボールに本能的に反応すると、今度は左足でダイレクトシュートを放った。DFに弾かれてから一瞬間の出来事だったが、ボールはほかのDFとGKの隙間を突き、ネットを揺らしている。
■家族
(C)Goalサラゴサ監督ビクトール・フェルナンデスが、チームへの適応やフィジカルレベルの向上の必要性を説いているように、最高の香川を見るためにはまだ数週間がかかるはず。しかし、それでもボールが彼の足もとに転がってくれば、このスポーツは光り輝く。それが、たとえ難攻不落の鉄の要塞トラリンであっても、だ。
サラゴサのサポーターにとっては、まさに待望のゴールである。サラゴサという町に生まれた新たなアイドルの活躍を、彼らは心待ちにしていた。サラゴサから600キロ離れたスペイン北西部、カスティージャ・イ・レオン州に拠を構えるトラリンには約100人のサポーターが駆けつけたが、香川のゴールはクラブへの忠誠と努力に報いるものとなった。もちろん、その中には23番と「KAGAWA」の名がプリントされたユニフォームを着ているサポーターも多い。今季、8月上旬からサラゴサのユニフォームを買うならば、23番と「KAGAWA」は最有力候補になっているのだから当たり前だ(自分の名前をプリントしない限りは)。
惜しむらくは、香川のゴールがトラリンでのサラゴサの勝利に繋がらなかったこと。勝ち点3の内の2は、香川が76分に交代した後、86分にポンフェラディーナが同点弾を決めたことでこぼれてしまった。サラゴサの次戦は30日、本拠地ラ・ロマレダでのエルチェ戦。香川が、今度は少し暑苦しいかもしれないほどの熱狂を帯びる“我が家”でゴールを導き、サポーターと勝利を分かち合う姿を見られることを願っている。彼がサラゴサという家族の一員であることは当然として、私たちはもう、彼に首ったけなのだから。
文=ルイス・ファンド(Luis Fando)/『エル・ペリオディコ・デ・アラゴン』サラゴサ番
翻訳・加筆・構成=江間慎一郎(Shinichiro Ema)
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です





