ザック、アギーレ、ハリル…山口・霜田正浩監督が歴代日本代表指揮官から受け取ったエッセンスとは?

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今季からレノファ山口FCを率いる霜田正浩監督が、名立たる歴代日本代表監督から受け取ったエッセンスの“いいとこ取り”とは?

「なんか楽しそうだな」

練習場で観たレノファ山口FCの霜田正浩新監督に対するファーストインプレッションはそんな感じだった。

これまでもグラウンド脇に立つ霜田氏は何度も観てきた。FC東京の強化部時代に始まり、技術委員長も務めた日本サッカー協会時代には、アルベルト・ザッケローニの、ハビエル・アギーレの、そしてヴァイッド・ハリルホジッチの脇に立つ姿は何度も観ている。年代別代表の練習でもしばしば顔を合わせてきた。ただ、どちらかと言えば、難しい顔をしていた印象が強い。その意味では表情から何かが違っていた。

「そりゃ楽しいよ。だって、ずっとやりたかったんだから」

霜田監督はそう言って白い歯を見せた。

■“強化”から“現場”へ

今年51歳になったが、指導者としてのキャリアは限定的だ。われわれが彼に抱いてきたイメージは「強化畑の人」というものだろう。古巣である京都でも、あるいはFC東京でも、そして協会でも、フロント業務で力を発揮してきた。

監督業の経験は、90年代の終わりに京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)草創期のアカデミーチームでの2年間と06年のY.S.C.C(当時は関東リーグ)監督をシーズン終盤限定で務めたのみ。コーチとしても特筆すべき実績があるわけではない。そうした流れから「“強化”こそ彼の天職なのだろう」とこちらが勝手に思い込んでいた面もあったかもしれない。

とはいえ、本人の考えは違っていた。昨年、日本サッカー協会を去ることが決まった際に強調したのも自分自身のキャリアについてトライしたいという意思だった。

「やっぱり現場をやりたいんだ」というピュアな情熱はこちらが逆に面食らうほど。「このタイミングでJリーグの仕事に割って入るのは難しいから、やっぱり欧州かな」という言葉どおりに海を渡り、ベルギーのシントトロイデンでアシスタントコーチを4カ月余り務めてきた。

「すごく刺激になった」という日々は、あるいは指導者としてのスイッチを入れ直すためのウォームアップだったのかもしれない。長くさまざまな指揮官のそばにいて貯め込んできたレパートリーを一気に吐き出すように、山口での日々に向き合っている。

■歴代日本代表監督から“いいとこ取り”

「この年になってJリーグの監督になるというのは、考えようによってはハンディキャップということになる。でもこの年までいろいろな監督の下で自分が観てきたことは間違いなく財産になっているから」(霜田監督)

理想としてイメージするのはそうした指揮官たちから受け取ったエッセンスの“いいとこ取り”である。「教師にしている部分もあれば、反面教師の部分もある。青空ミーティングを2時間やる気はないよ」と笑いもとりつつ、こんな風に語ってくれた。

「たとえば練習だったら、アギーレから感じ取ったものはすごく大きい。選手が本当に楽しんで、考えながらやっていたから、あの感覚は大事にしたい。ザックが言っていた『戦術で点を取る』というイメージもあるし、そこは目指すところの一つ。これは特定のパターンを教え込むという意味ではなくてね。サッカーは相手あってのものだから。ヴァイッド(ハリルホジッチ)のような厳しさも絶対に必要。向上心のある選手たちは、むしろ厳しく指摘されるのを望んでいる部分があるのも分かったから」(霜田監督)

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監督就任にあたっては、「予算の範囲内なら欲しい選手を獲ってきていいと言われたので」と“強化畑”にかつていたことによる強みも活かしつつ、選手獲得にも精力的に動いた。MF高木大輔、FWオナイウ阿道といった選手は年代別日本代表を通じて「プレーだけでなく人柄も分かっていた」ことから即座に獲得へ動いた。

交渉の席上では「元よりお金では勝負にならない」(霜田監督)という観点から、どういうサッカーを目指すのかプレゼンしながら、「一緒にやりたい」という意思を明確に伝えた。それは「自分の目指すプレーモデルをまずしっかり作って、それに合うであろう選手に声をかけた」という監督としてのゴールから逆算したからこそできる作業でもあった。

「やっぱり昨季J2・20位というのが引っかかってしまう選手は多かった」とのことで、逃してしまった選手も4人ほどいるそうだが、補強の全体観には手ごたえもある。MF丸岡満のような期待されながらブレイクしきれなかった選手についても、「ドルトムントでのプレーも観ているから、彼の良さは十二分に分かっている」と、ここで花開かせるつもりだ。実はC大阪の強化担当者から「霜さん、鍛えてやってよ」という話もされたのだというが、これが霜田監督の目指す一つの理想形だ。

■決して受け身に構えない霜田スタイル

明確なコンセプトの下でしっかりトレーニングを重ね、個々のクオリティをシーズンの中で上げていく。

「『あそこに行ったら上手くなれる』と思われるようなチームでありたい」(霜田監督)。

選手に対しても「理想はチームとしてJ1へ行くこと。でも君たちが“個人昇格”できる選手になってくれるなら、それはそれで構わない」と伝えていると言う。選手側の「もっと上手くなりたい」という意識の強さがチームを活性化させることを知っているからだ。野心を抑えつけたところで、たった一度しかないサッカー人生を預ける選手との歯車は回らないことを、この指揮官は経験的に知っている。

「ギラギラしてもらって構わない」

サッカースタイルも受け身に構えるつもりは毛頭ない。相手のボールホルダーに対してハイプレッシャーを与えるインテンシティの高さは譲れないライン。トレーニングでは常にどこかで“走り”の要素が入っているのは象徴的だった。その上でボールを動かして、ゴールへのゲートをこじ開けるクオリティも追求していく。

攻守は一体という発想をする霜田監督には、チームとしてプレッシャーをかけられるようになっていけば、そのプレッシャーを回避する能力も向上していくという思惑がある。もちろん、その逆も然り。「(相手選手や妨害物を置かない)シャドートレーニングはしない」と言い切るのも、そうした考えが背景にある。

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J2リーグはまだ2試合を終わったばかりだが、山口は開幕2連勝で首位に立った。この段階での順位表に大した意味がないことは誰もが承知しているだろうが、クラブハウスや練習場近くのショッピングモールに掲げられていた「1位」の文字は、昨季の苦しさがあるだけに、響くものも違ってくる。

シーズンの最後、ここに掲げられる数字がいくつになるかはもちろん分からないが、今季の山口が何ともエキサイティングなシーズンを送りそうな予感が早くも濃厚に漂っているのは間違いない。

写真・文=川端暁彦

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