Alberto ZaccheroniGetty

ザックが語るセリエA優勝争いとローマ奇跡の逆転劇…UAE代表の指揮には手応え/独占インタビュー

かつて日本代表で指揮を執り、現在はUAE(アラブ首長国連邦)代表を率いるアルベルト・ザッケローニ監督が、セリエAやイタリアのクラブについて『Goal』で語ってくれた。

インタビュー=フェデリコ・カソッティ(『Goal』イタリア編集部)
文・編集=Goal編集部

■ローマの奇跡には「私も嬉しい」

先日、イタリアいや世界を騒がせる大きな逆転劇が欧州最高峰の舞台で達成された。チャンピオンズリーグ準々決勝でローマがバルセロナを敗退に追いやったのである。それも、ファーストレグを1-4と落としていたにもかかわらず、3点差をひっくり返してみせた。

ザッケローニは「試合が始まってから奇跡を信じ始めた」と話し、エウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督が選択した戦術を称えた。

「それでもバルセロナがスコアをコントロールできるものと思っていたことは認めるよ。ローマの殊勲と言える。特にすぐさま先制点を挙げられたのは良かった。ディ・フランチェスコがあのようなアプローチを決断し、実行した勇気はすごく気に入った。3バックを敷いて、さらにサイドバックを使った。そこから攻撃へと押し込ませ、ゲームを組み立てさせた。5バックの守備にはしなかったね。理論上のシステム自体ではなく、どのようにプレーするかが常に違いを生むと思う」

続けて、ザッケローニはイタリア人らしい表現を用いながら、指揮官を評価する。

「ディ・フランチェスコは、上手い着想、例えて言うなら“服”を見つけた。それを選手たちが上手に“着こなした”と言える」

また、ユヴェントスは惜しくもレアル・マドリーの前に敗退となったものの、イタリアサッカーがスペインサッカーに一矢報いたことには、胸がすく思いだったようだ。

「イタリアのチームがスペインのチームを相手に偉業を成し遂げたことには、私も嬉しい。スペイン人にいつも負けているなどと言われることは、もうなくなるかな。それに全く事実ではないからね! 私もミランを率いていた1999年9月にバルセロナに勝ったんだよ。確かにイタリアサッカーは厳しい局面を迎えているが、スペインからすべてコピーしなければならないわけではない。我々にも生かしていくべき長所はあるんだよ」

■スクデット争いはユーヴェ有利?

今シーズンは欧州5大リーグで唯一優勝争いが混戦となっているセリエAにも言及。残り5試合で首位ユヴェントスと2位ナポリの差は4ポイントとなっているが、ザッケローニは王者が逃げ切ると予想する。

「リーグ戦で、ユヴェントスがスクデットを逃すことはないだろう。イタリアで唯一、レギュラークラスのフォーメーションを2チーム分組めるクラブだからね。ナポリはまさにその対価を払っていると言える。レギュラー陣は非常に良い選手が揃っているが、控えが十分ではない」

今季は復調の兆しを見せるミラノの2クラブにも注目。特にインテルについて言及しつつ、「継続性」をキーワードに挙げた。

「両チームとも良い構成だと思う。ただ継続性が必要だ。良い調子かと思うと、不調の時期が訪れる。インテルについては、誰もが期待していないときに良い成績を残せた。チームのアイデンティティが定まったかに見えたところで突然、危機に陥ってしまった。今からスクデットを狙うには、非常に多くのポイントが必要になる。チームに好不調の波がある間は、頂点を目指すことは難しいだろう。インテルは2010年から現在に至るまで、継続性のある結果が出せていない」

■UAE代表での指揮には手応え

昨年10月からUAE代表の指揮を執るザッケローニ監督は「まだワールドカップ予選でリベンジするには十分な時間ではない」と、チームは整備中であると語る。一方で就任直後に行った試合では一定の成果を得ることができたと手応えをつかんだようだ。

「キングスカップに参加し、ガルフカップでは決勝まで行けた(オマーンにPK負け)。我々はよくやったと思うよ。その直前、私は国を飛び回り、リーグ戦の試合を生で見て、選手を視察していた。前任者(エドガルド・バウサ)はテレビで確認していたようだけど、生のほうが良いと思ったからね」

UAEにとって次なる主要大会は、来年に控えるアジアカップ。ザッケローニ監督は「次のアジアカップへ向けては、40~50人のラージリストを作り、1カ月近く一緒に練習して準備したい」と大会前の展望を明かす。ライバルとなる国には、当然のごとく“第2の故郷”を挙げた。

「日本やオーストラリア、イランやサウジアラビアが我々の前に立ちはだかるだろう。アジアのレベルは日々上がっているし、タフな大会になるはずだ」

■凋落した母国には…

2カ月後に控える世界最高の舞台に、母国の代表の姿はない。イタリア代表はロシア・ワールドカップ欧州予選でプレーオフの末にスウェーデンに敗れ去り、60年ぶりに本大会出場を逃した。

ザッケローニ監督は「ワールドカップに行かないことに慣れていないが、他のチームがワールドカップでイタリア代表を見ないことにも慣れていないだろう」と苦笑いを浮かべながら語る。

また、イタリア代表は現在も後任を探している真っ最中。ロシア・ワールドカップ出場を逃したジャンピエロ・ヴェントゥーラが解任され、暫定的にU-21監督のルイジ・ディ・ビアージョが指揮を執っている。しかし、ディ・ビアージョ監督が親善試合でそれほど芳しくない戦いぶりを見せたため、いまだ後任候補の名前が流れ続けているという状況だ。

ザッケローニ氏もその中の一人であるが、就任の可能性はきっぱりと否定した。

「2006年からイタリア代表とは密接な関係にあるが、今回私は(新監督の)候補に挙がっていないよ。私はUAEのサッカー協会の深い結びつきがあるし、それを続けたい。疑いはないよ」

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