サプライズではなく必然…代表初招集のG大阪DF三浦弦太が持つブラジル代表DFに通じる可能性とは

コメント()
(C)Getty Images
加藤恒平には劣るかもしれないが、「三浦弦太」、彼の名前がスクリーンに映ったときにも報道陣からはどよめきの声が上がった。ガンバ大阪の長谷川監督は何を評価し、チームの中心に据えることにしたのか? 日本代表に招集されるまでの今季の戦いぶりを振り返る。

FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選のイラク戦に向けた日本代表メンバーが発表された25日、15時からの代表発表を前に午前練習を終えた選手たちは帰宅の途に就くため、番記者たちは代表入りが予想される選手から囲み取材でコメントを引き出していた。

GK東口順昭やMF倉田秋ら「当確」組とは対照的に、ひっそりと家路へ向かおうとする三浦弦太を囲んだ記者は3人だけ。代表メンバーの発表日さえ知らなかったガンバ大阪の背番号2だが、彼の代表入りを強く予感し、事前にコメントを求めた。

親善試合ではなく、ワールドカップ本大会出場を懸けた大一番での初招集。世間的にはいわゆる“サプライズ”に相当するのかもしれないが、今シーズンのパフォーマンスを振り返れば、いわば必然の招集だったとも言える。

昨年は清水エスパルスで明治安田生命J2リーグを戦っていたが、G大阪の長谷川健太監督は早くからそのポテンシャルの高さを見いだしていた。

「(宇佐美)貴史やパトリックをそれなりに抑えているのを見て、いいなと思っていた」

長谷川監督のリクエストで今シーズンからG大阪の一員となった三浦だが、2014年に三冠を達成した指揮官がその能力に魅入られたのは2015年4月12日の清水戦。宇佐美とパトリックが爆発し、3―2でG大阪が勝ち切った一戦で、彼は持ち前の“個の強さ”を随所にのぞかせていた。

2年越しのラブコールでガンバ大阪のユニフォームを着た三浦。そして一気に定位置を獲得することになる。「レギュラーになりたいとは思っていたけど、これほど早くとは思っていなかった」と常に謙虚な姿勢を崩さず控えめな言葉を口にするが、彼に追い風が吹いたのが今年1月のチーム始動直後。長谷川監督は元日本代表の丹羽大輝と昨年著しい成長を見せた金正也を擁していたセンターバックコンビを刷新。三浦は同じく新加入組のDFファビオとのコンビで最終ラインを形成し、「二人とも個が強いし、スピードもある」とした指揮官の期待に応え続けて来た。

相手チームを攻撃的に押し込む続ける上で不可欠となるのが、最終ラインを高く保ち続ける意識。さらに抜群の身体能力も彼の大きな魅力だ。移籍後初の公式戦となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)戦では滞空時間の長いヘディングでMF遠藤保仁のCKを叩き込んで初ゴールをマーク。現代サッカーでは当たり前の要素となる対人プレー(日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、これを「デュエル」なる言葉で強調するが)でも持ち味を発揮する選手である。

アウェーで柏レイソルを3―1と撃破した3月5日のJ1第2節は、変則的な3バックの右センターバックで先発。この試合でJリーグで屈指の個の力を持つクリスティアーノを完封すると、ACLグループステージ第3節の江蘇蘇寧(中国)戦でも元U―20ブラジル代表FWアレックス・テイシェイラとのスピード勝負で互角以上の戦いを見せ、局地戦ではほぼ完勝していた。

Jリーグのプレーテンポや局面でのインテンシティーが世界標準にはほど遠いのは否めないが、国内外のステージで強烈な個を持つブラジル人らと互角に渡り合って来た三浦は、インターナショナルに通じるスケール感を確かに持ち合わせている選手。実のところ、チーム内でいち早く三浦の代表入りを予言していた男がいる。

4月21日のJ1第8節大宮アルディージャ戦、右サイドバックとして後半途中からピッチに立ち、三浦のすぐ隣でプレーした米倉恒貴は「弦太と初めて一緒にやったけど、能力がヤバい。そのうち代表に行くと思う」と舌を巻いていた。

「まだ早いかなと思いますけど、呼んでもらえたらありがたい」

初の代表入りを知る2時間ほど前、控えめながら日本代表への色気を口にしていた三浦だが、G大阪移籍を決断したのも日本代表入りへの近道だと信じていたからこそ。柏戦のパフォーマンスについて、ハリルホジッチ監督が評価したことを聞かされた直後、「そういう評価はうれしいし、ガンバでしっかりと結果を残せれば、日本代表もそう遠くないことが分かった。このまましっかりと自分の良さを出し続けたい」と手応えも得ていた。

市立吹田サッカースタジアムがどよめくような素晴らしいロングフィードを連発しつつ、リーグ最少失点の最終ラインを支えるなど「良さ」を出し続けて来た青黒の背番号2。時折、凡ミスでピンチをまねく悪癖は今後の課題でもあるが、「ACLだとワンチャンスをものにされてしまうことを痛感した」とグループステージ敗退の憂き目を見た自身初のACLで国際試合特有の緊張感も体感済みだ。

今年3月に22歳を迎えたばかり。まだ荒削りな若武者の魅力は、無限の伸びしろにある。183センチ、77キロとサイズを武器で戦う選手ではないが、スピードと空中戦の強さはすでにJリーグ屈指。まさしくブラジル代表DFとして活躍するチアゴ・シウヴァ(パリ・サンジェルマン)のような存在になりうる逸材だ。果たして彼は今回の代表招集をいかなる成長の糧にするのか。そしてどんな結果を出してくれるのか、初めて青いユニフォームに袖を通す彼の現在地と将来性をしっかりと見ておく価値は十分にある。

文=下薗昌記

サッカーのライブを観るならDAZNで!1ヶ月間無料のトライアルを今すぐ始めよう。

閉じる