タグ・ホイヤーがJリーグ・クラブに所属する23歳以下の若手を表彰する『TAG Heuer YOUNG GUNS AWARD』。日頃から精力的に取材を重ね、分析を続けているサッカー専門誌の編集長・編集者たちは、23歳以下の若手たちのプレーをどのように見ているのだろうか。日本で最も歴史のあるサッカー専門誌『サッカーマガジン』の編集長を務める佐藤景氏は、「ベテランの選手寿命が延びて上が詰まっているなか、そこを打開できる若手に出現してほしい」と語り、“東京五輪世代”の台頭や、サッカー界全体のことを考え、発信できる若手の出現に大きな期待を寄せた。
――『TAG Heuer YOUNG GUNS AWARD』についてどう思われますか?
Jリーグ全体の課題として若い選手が出にくい状況になっている気がするので、このような賞ができたことで張り合いになると思いますし、すごくプラスの面があると思います。今、日本代表では21歳の井手口陽介(ガンバ大阪)が活躍していて、代表では“若手”と見られていますが、今までの代表の歴史を見れば、活躍して当たり前の年齢なんですよね。若い選手にもっと台頭してほしいと思っていたところにこのような賞ができて、今後さらに若い選手が注目され、活性化されていくと思うので、歓迎すべきことだと思います。
――5人の若手注目選手を選考していただきましたが、選んだ際の基準を教えてください。
2020年の東京オリンピックに出場する権利のある、1997年1月1日以降に生まれた選手で、所属チームでレギュラーをつかんでいる選手という基準を設定し、今シーズン、個人的に衝撃を受けた選手をピックアップしました。
――各選手それぞれの選考理由を教えて下さい。
1位 中山雄太(柏レイソル)
他媒体の記者から「昌子源(鹿島アントラーズ)に注目しているセンターバックを聞いたところ、中山の名前が出た」という話を聞き、注目するようになりました。元々ボランチの選手で、飄々としていてソツがないですよね。サイズの面では物足りなさを感じますが、このまま伸びていってほしいという思いを込めて選出しました。柏では中谷進之介とセンターバックを組んでいて、チームはJ1で上位争いをしていますし、あのレベルでやれるのはなかなかいないんじゃないかなと思います。
昨年、松本山雅FCに加入した時から注目していて、昨シーズンは出場機会に恵まれなかったんですが、今年、水戸ホーリーホックに期限付き移籍して大ブレイクしました。スピードはもちろん注目なんですがスタミナも抜群で、前からプレスに行き、動き直してまたプレスに行くというプレーを後半になっても繰り返せるんですよね。松本での新体制会見の時に「今まで年代別代表に選ばれたことはないですが、東京五輪世代なので、そこに食い込んでいきたい」と宣言するほど気持ちが強いですし、それが今年、ピッチで出ています。今シーズン、最も驚いた選手です。
曺貴裁監督の下で急成長しています。とにかく前に走り込んでいくという曺監督の戦術を体現している選手ですね。今年のU-20ワールドカップで感じた壁や差を意識しつつJリーグでプレーしているように見受けられますし、シーズンを通してレギュラーを務めていますからね。クロスの質もいいですし、タイミングを見て前に出ていく能力が魅力的な選手です。市立船橋高校時代のチームメートで、アルビレックス新潟に加入した原輝綺とのライバル物語がフィーチャーされている部分も含めて、面白い存在ですね。
4位 冨安健洋(アビスパ福岡)
アビスパ福岡の番記者の方から「岩下敬輔が加入したことで刺激を受け、最後の局面で体を張るなど、彼に足りなかった部分が身につけばさらにいい選手になる」と教えられて注目していたんですが、その言葉どおりいい選手ですね。ボール扱いは落ち着いていますし、周囲との関係性もいい。ギリギリの局面での判断も以前より磨かれていると思います。元日本代表DFだった井原正巳監督が求める基準を満たした上でピッチに立っていると思いますし、J1で見たいと思わせる選手です。
5位 田川亨介(サガン鳥栖)
浦和レッズ戦(J1第27節/2-2)で2ゴールを決めたシーンを見て「すごいな」と思いましたね。そのゴールのインパクトがあまりに強かったので、5位に入れました。サガン鳥栖は豊田陽平に頼る部分が多いチームなんですが、他にゴールを決められる選手が出てくれば上位も狙えるかな、と思っていて、彼はその期待に応えられる選手だと思います。思い切りもいいですし、常にゴールを意識している感じもいいですよね。
――他に注目している選手はいますか?
ケガでの長期離脱がなければ、本当は小川航基(ジュビロ磐田)を入れたかったんですけどね。名波浩監督も、U-20W杯から戻ったら起用したいと言っていましたし。万能型で、ポテンシャルは大迫勇也(ケルン)に匹敵するぐらいすごいと思います。
――TAG Heuerのモットーは「#DontCrackUnderPressure(プレッシャーに負けるな)」です。選手への取材経験から、プレッシャーに打ち勝てる選手に共通していることはありますか?
「想像できるかどうか」がけっこう大きいと思っていて、たとえばU-20W杯で世界との差を感じたとして、Jリーグでそれを想定しながらプレーしようと思っても、ほとんど想定できないじゃないですか。「これじゃ足りない」と想像できるかどうかが非常に重要で、そのあたりがプレッシャーに打ち勝てるかどうかの大きな差になると思っています。日常から想定してプレーしている選手に期待したいし、そういう選手がたくさん出てくると、日本のレベルも上がるんじゃないかなと思います。
――日本サッカーの若手選手に対して、どのようなことを期待していますか?
日本サッカー界のため、Jリーグのためなど、ジャンルのことを考えられる選手に出てきてほしいですよね。黎明期の選手たちは、日本サッカー、Jリーグを盛り上げるためにという気持ちが絶対にあったはずなんですよね。でも、これだけ長くやっているとそういう視点も当然なくなってくる。お客さんが満足してくれたかどうかという視点に乏しい気がします。だからその部分を考えられる選手に出てきてほしいですね。全体を考えて、自分の立ち位置を語れる人が出てきた時に、Jリーグやサッカー界がより発展すると考えていて、そこに期待しています。
文=池田敏明
写真=浦正弘

【Profile】
佐藤景
1971年生まれ。
北海道札幌市出身。大学卒業後、株式会社ベースボール・マガジン社に入社。日韓ワールドカップが開催された2002年からサッカーマガジン編集部に所属し、週刊サッカーマガジン、ワールドサッカーマガジン、J2マガジンの編集にも携わる。また、1974年の西ドイツ大会からサッカーマガジンが発行するワールドカップ決算号の制作も担当。来年のロシア大会決算号で、ローター・マテウスならぬ“5大会連続”制作となる。
【TAG Heuer YOUNG GUNS AWARD】
Jリーグの次世代を担う若い選手層の育成・Jリーグの発展を目的に、各メディア・著名人など、本企画に賛同するアワード サポーターが、J1、J2、J3のクラブに登録されているU-23選手の中から候補者30名を選出。その後、一般投票を含む最終選考にて11名を選抜、2017年12月に表彰する。
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