■サッカー界の最高峰の戦い「エル・クラシコ」とは
2017年12月23日、リーガ・エスパニョーラ第17節で、レアル・マドリーvsバルセロナの一戦がサンティアゴ・ベルナベウで行われる。
この試合はスペインリーグの一戦でありながら、特別な意味合いを持つ試合として、常に世界中のサッカーファンから注目を集める試合になる。
この両クラブはスペインの首都マドリード、地中海沿岸の都市バルセロナを主戦場とする名門チームであり、両者は現代サッカー界において、常に覇権争いを展開するビッグクラブとしても知られている。
1902年に創立されたレアル・マドリーは、これまでスペインリーグ最多となる33度制覇。ヨーロッパの頂点を決めるUEFAチャンピオンズリーグ(前身のチャンピオンズカップ時代含む)に至っては12度優勝の喜びを味わっており、これは並ぶクラブのない前人未到の成績となっている。
FIFA(国際サッカー連盟)からもその功績が称えられ、実際に「20世紀最高のクラブ」と認められている。21世紀に入ってからも巨額の移籍金を投じて世界トップクラスの名手を次々に獲得。ルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、カカー、クリスティアーノ・ロナウドと、時代を象徴するトップスターが、相次いで白いユニフォームに身を包んだ。
一方のバルセロナは1899年に設立され、リーグ黎明期にはスペインリーグで優勝を経験した。だが、その後スペイン内戦時にはフランシスコ・フランコ政権によってカタルーニャの有力者が迫害を受け、1936年に当時のバルセロナ会長ジョゼップ・スニョル氏は暗殺されたと言われている。
バルセロナの歴史に大きな転機が訪れたのは1970年代のこと。オランダの名将リヌス・ミケルスを招へいし、その後愛弟子ヨハン・クライフが加入するとともに、ポジションの固定概念にとらわれない、パスによる崩しのスタイルを確立した。それ以降、同クラブにはパスサッカーで相手守備網を崩す様式が現在まで受け継がれている。
■志向するサッカーも大きく異なる両クラブ
サッカーは相手より1点でも多く奪ったほうが勝利、という特性の競技。相手ゴールのネットを揺らためのアプローチも多岐に渡る。その特性が色濃く出ているのも、両チームの構図として注目すべき点だ。
ともに戦術には柔軟性を備えているものの、レアル・マドリーはスター選手による圧倒的な個人技や速攻を軸に、相手ゴールを脅かすスタイルが主流に。一方のバルセロナはクラブ生え抜きの選手を重用し、ポゼッションによる崩しを重視する方向性で一時代を築いた。
両チームは志向するサッカーの違い、新たな逸材の獲得など、ありとあらゆる面で対立構造がクローズアップされる状況となっているのだ。
ともに圧倒的な地力を持つがゆえに、普段はリーグ戦などでは試合の主導権を握る展開が目立つ。そのため、対戦相手は大半の時間、引いて守る状況を強いられることに。レアル・マドリーとバルセロナに共通する凄みは、相手が11人全員で引いて守る相手だったとしても、組織力、戦術、個人技を駆使して、ゴールを奪うための手法をハイレベルに実現している点だ。
崩しのスペシャリストを多数抱えるその両チームが直接対決するとなると、ゴール付近だけにとどまらず、ピッチ全体で局面打開の戦いが続く、息をもつかせぬ展開となる。相手から1点を奪うためのアプローチが、ピッチ上のどの位置から開始されてもおかしくなく、“サッカーの醍醐味が凝縮されている一戦”と言われる所以なのだ。
もちろん、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシという“現代最高の選手”と評される、両チームのクラックが直接対決する一戦、という点も大きな見どころと言える。実際に両エースがいかにして敵陣を崩すのか、守備陣はいかにして相手エースを封じ込めるのか、その点も大いに注目したい。
また、現在リーガでは首位に立っているバルセロナに対し、レアル・マドリーは後れを取っている状況。サンティアゴ・ベルナベウでの一戦は、ホームのレアル・マドリーにとって勝ち点3奪取が使命とも言える。
■政治問題によって対立構造がより浮き彫りに
17-18シーズンのリーガ・エスパニョーラで迎える最初のエル・クラシコは、これまでとは様相が異なり、ただならぬ雰囲気も内包している。それは現在、スペイン中央政府とカタルーニャ州の対立という政治問題が、より顕著になっているからだ。
2017年10月、スペインからの独立を目指しているカタルーニャ州は、独立の是非を問う住民投票を行った。この結果、賛成多数でカタルーニャ州がスペインから独立する方向性で可決されたのは周知のとおり。この一件は世界的な主要メディアで大きく取り上げられた。
その後も首都マドリードを本拠地とするスペイン政府と、カタルーニャ州の対立は続いている状況だ。前述のとおり、カタルーニャ州(カタラン)の人にとっては、エル・クラシコはマドリード勢に対する代理戦争の側面も強く、ただのスポーツ競技とは異なる意味合いも含んでいる。
伝統の一戦、エル・クラシコは世界170カ国、約6億5000万人がリアルタイムで視聴すると言われている。サッカー競技の最高峰の戦いが見られるカードとして、またスペイン王国vsカタルーニャの対立構造を反映した一つの戦いとして、様々な面で注目を集める戦いとなりそうだ。
果たして、運命の一戦はどちらが勝ち名乗りを上げるのか。エル・クラシコは12月23日、日本時間21時にキックオフとなる。
文:千葉正樹(フリーエディター&ジャーナリスト)
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