Kylian Mbappe MonacoGetty Images

ゴールの狂気!モナコを最もエキサイティングなチームと呼べる理由

今ヨーロッパで最もエキサイティングなチームはどこか。それは間違いなく、先日17年ぶりのリーグ・アン優勝を決めたモナコであろう。レオナルド・ジャルディム率いるモナコの変幻自在な攻撃的サッカーには多くのサッカーファンが魅了された。そして、最終戦でレンヌからも3得点を奪って勝利し、38試合で107得点という驚異的なゴール数で今季のリーグ戦を終えた。

ディフェンディングチャンピオンのパリ・サンジェルマン(PSG)に対し、モナコは経済力、経験、そして選手層で劣りながらも、シーズン前半からリーグをリードしてきた。そして準決勝まで進んだチャンピオンズリーグでの勢いそのままに、シーズン最終週で優勝を決めたのだ。

PSGはフランス・リーグカップの決勝とフランス・カップの準決勝で、控え選手中心のメンバーで臨んだモナコを破っている。しかしリーグ制覇はならなかった。PSGはライバルたちの喜びの瞬間を羨望の眼差しで眺めるしかなかったようだ。

今季のモナコの成功は、猛烈な攻撃的メンタリティーに基づいている。もちろんその“思考”はリーグだけにとどまらない。ビッグクラブを相手にしなければならないチャンピオンズリーグにおいてもだ。PSGは圧倒的な財政力を誇っているにも関わらず準々決勝の壁を越えられないでいるが、モナコはすでにその壁を越えて見せた。モナコの成功はメンタリティー、そして個々の力が一体となったが故にもたらされたものであろう。

Monaco CelebrateGetty Images

モナコにとって今シーズンは若手選手を中心に多くのスター選手が生まれた年となった。特に18歳のキリアン・ムバッペの成長は凄まじいものだ。ゴールとアシストを量産し、モナコの優勝に大きく貢献している。またMFのトーマス・レマーとティエム・バカヨコや、サイドバックのジブリル・シディベとベンジャミン・メンディも信じられないクオリティの攻撃力を見せつけ、ヨーロッパのビッグクラブの補強リストに名を連ねるまでに成長した。メンディに関して補足をすれば、モナコのレギュラー格の選手の中で唯一リーグ戦でゴールを挙げていない選手であるが、彼以上に質の高いクロスボールを供給できる選手は世界中探しても他にはいない。

ただし、モナコのサクセスストーリーは若い選手たちだけが主人公のものではない。例えばカミル・グリクはパートナーとしてジェメルソンを携え、ディフェンスのリーダーとしてチームをまとめている。またベストゴールキーパーに選ばれたダニエル・スバシッチと、DFアンドレア・ラッジの2人も、チームが2部で停滞していた頃にモナコに加入し、紛れもなく今日、優勝を遂げるまでのクラブの成長に大きく貢献しているだろう。モナコのアカデミー出身でクラブ在籍12年目となるヴァレール・ジェルマンもサンテティエンヌ戦でのラストプレーでゴールを奪うなど、苦しい時にチームを支えた選手の一人だ。

そしてこの選手、ベテランながら、エースとしてチームをけん引したラダメル・ファルカオの存在も忘れてはならない。深刻なケガに苦しみ、レンタル移籍先であったマンチェスター・ユナイテッド、そしてチェルシーでは全くと言っていいほど活躍ができなかった彼の復活劇は目を見張るものがあった。今シーズンのリーグ戦において、ファルカオはおよそ90分に1ゴールの割合でゴールを記録しているのだ。ストライカーはモナコで息を吹き返した。

見るものを魅了するようなボールの扱いに優れた選手揃いのチームで、もし傑出したプレイヤーを一名だけ取り上げるのであれば、22歳のベルナルド・シルバだろう。彼はジャルディムが描くアーティスティックなサッカーを完璧なまでに体現できる選手である。スピードやパワーだけに頼らず優雅さとテクニックを武器としていて、攻撃のギアをあげる役割を担いながらも守備も積極的にこなすことができるのだ。マンチェスター・シティを率いるジョゼップ・グアルディオラが惚れ込み、大金を注ぎ込んで、獲得したのも納得がいく話だろう。

■納得行かない表彰も「優勝」の輝きに比べれば…

そんな多くの選手たちがモナコで活躍を収めている中で、先日発表されたリーグ・アンの年間最優秀選手に選ばれたのはPSGのエディンソン・カバーニであった。これはまさに不当な出来事と言えるだろう。しかし何よりも重要なことはモナコがリーグ戦をトップで終えたということだ。

リーグ・アンの表彰式の場でPSGのチアゴ・シルバは「リーグ優勝を逃したのは僕ら」と発言し、優勝したモナコを称えた。敵チームを感嘆させるほどモナコはリーグ優勝に値する素晴らしいプレーを見せてきたのだ。その本物の強さを疑うものは誰もいない。

モナコはシーズン最終戦でレンヌに勝ち、勝ち点を95まで伸ばした。この数字は昨シーズン優勝したPSGが挙げた勝ち点にわずか1ポイント及ばないものの、30勝という数字は昨シーズンのPSGと同じとなり、得失点差はリーグ史上2番目に多いものとなる。さらに107という驚異的なゴール数も、歴代ベスト3に入る。

2部低迷から復活したモナコの劇的な優勝は、これから何十年もの間フランスのサッカー界で語り継がれていくだろう。そして最終節でも3ゴールというモナコらしさを失うことなく、ファンたちの期待にも応えた。優勝を果たしてもなお、最後まで我々を楽しませてくれたこのチームにはまさに“勝利”という言葉がふさわしい。

文=ロビン・ベアナー/Robin Bairner

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