■解任が囁かれる中での「事件」

大敗が積み重なり、「くたばれサッリ・ボール」のチャントが響き渡ったら今度はケパ・アリサバラガの「反乱」だ。今シーズンのチェルシーは事件が絶えない。しかし、今回の問題は昔からクラブが抱えているものだ。
チェルシーGKケパはカラバオ・カップ決勝で交代を拒否した。ペナルティーキックに滅法強いウィリー・カバジェロはピッチ際で立ち尽くすしかなく、サッリはアリサバラガの行動を反抗とみなして怒りを爆発させた。もっともサッリは、後にお互いに「誤解」があったと説明している。クラブもすでにケパに週給分の罰金処分を下し、彼自身も謝罪文を公表した。
しかし、そうだとしてもサッリが選手をどのくらいコントロールできているか疑問がある。ケパの「らしくない」行動は指揮官解任の噂が流れた直後に起きたのだ。サッリは過去の指揮官たちが直面した問題を目の当たりにしているにすぎない。スタンフォード・ブリッジでは選手側の影響力が大きいのだ。
■チェルシーにおける選手と監督の力関係
Gettyチェルシーの前監督アントニオ・コンテは現在チェルシーに対して900万ポンド(約13億2000万円)の賠償金を求める訴訟を起こしているが、その在任中に何回か選手と派手な衝突を起こした。
タイトルを制したシーズンでも、中国への移籍を求めたジエゴ・コスタと練習場で口喧嘩をする出来事まであった。
コンテはダビド・ルイスに対する扱いをきっかけにブラジル人グループとの関係が決裂したとされている。ダビド・ルイスはチャンピオンズリーグのローマ戦で交代を命じられた際に悪態をついたことがコンテの怒りを買った。
ウィリアンは昨シーズン、FAカップを獲得した後の集合写真で、コンテをトロフィーの絵文字で隠した。後に、「コンテが続投していたらチェルシーを去っていただろう」と明かしている。
ジョゼ・モウリーニョがチェルシーを追われた際にはエデン・アザールに対してファンから「裏切り者」という声が飛んだ。アザールが彼の解任に“一役買った”かは明らかではないが、選手の影響力がことチェルシーでは非常に大きいことは事実である。ペトル・チェフ、ジョン・テリー、フランク・ランパード、ディディエ・ドログバがいた頃のチェルシーはスーパースター軍団であり、多くのタイトルを獲得したのと同時に、多くの指揮官交代も経験してきたのだから。
■アレックスも認める選手の“強さ”
元チェルシーDFのアレックスも「自分がいた頃は」と注釈を含めつつ、チェルシーでは選手のパワーが監督のそれを上回ることは珍しくなかったと認める。
「私はそういった(ケパみたいな)状況をたくさん見たよ。特に監督が選手を好まない時によく起こったね。状況がどんどん悪くなっていって、結局どっちかがクラブを去るんだ」
「こういったことはたくさんのクラブで起こっていると思うよ。サッカーではよくある話さ。そしてチェルシーはドログバが(ロマン)アブラモビッチと会談したとも言われている、フェリペ・スコラーリの一件で有名になってしまった」
Goal / Gettyまた、アンドレ・ビラス・ボアスの解任劇にも言及。2011年、当時若手指揮官のホープであったビラス・ボアスは33歳という若さでチェルシーの監督の座についた。しかし、結局は1年ももたず、シーズン途中に解任される。アレックスはビラス・ボアスについて多くの間違いを犯していたと指摘している。
「選手が監督の解任を心から望むといったようなことはどのクラブでも起こると思うよ。例えば、ビラス・ボアスは当時のチェルシーで経験不足と若さが裏目に出てしまったね。私は彼のトレーニングが好きだったし、彼は選手に刺激を与えることができていた。けれども個人的な意見を言うと、彼は時々かなり傲慢でいくつか間違いを犯したと思う。特にランパードのような選手をベンチに座らせたのは間違いだったと思う」
「彼は選手とあまりコミュニケーションを取らなかった。ランパードなどをベンチに置く時は自分がそうした理由を説明すればいいってもんじゃない。私はカルロ・アンチェロッティやフース・ヒディングから学んだのだが、選手に寄り添って理解を求めることのほうが大事なんだよ」
「ビラス・ボアスはそれをしなかった。彼は単純に自分が選びたいメンバーを選び、やりたいことをやったのさ。それは少し傲慢だったと思うし、結局ドレッシングルームは不満を漏らす選手が多くなって悪いムードになっていったね」
もちろん、チェルシーのレジェンドたちは監督解任の責任の一端を担うべきだろう。しかし、「テリーとその仲間たち」は数えきれないほどの成功を収めてきた。選手たちは監督が誰であろうとその強さを示してきたのだ。
■次々と変わる監督がもたらした弊害
Getty Imagesアブラモビッチは2003年にチェルシーを買収して以来、暫定監督も含めると15人もの監督を据えてきた。これにより選手がクラブを去るよりも先に監督が去っていくというのが当たり前になってしまった。
アブラモビッチはトップチームの選手とは直接コンタクトを取らないようにすることで選手の影響力を弱めようと試みている。とはいえ、それだけでは根本の問題を変えることはできない。チェルシーがすぐに監督を解任する風潮は自然と監督の力を弱めるものだ。
これによりチェルシー監督というポストは徐々に魅力的でなくなり、難しい仕事となっている。
ありがたいことに、サッリはベンチ降格という処分を最後にケパとの一悶着を水に流そうとしている。しかし最近の歴史を見ればわかるように、7160万ポンド(約105億5000万円)で獲得した選手と争えばどちらが勝つかは明らかだっただろう。
このクラブで監督が選手に勝つことはないのだ。
文=ニザール・キンセラ/Nizaar Kinsella
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