クリスティアーノ・ロナウドは歴史上、最も偉大な選手の一人となりつつある。レアル・マドリーの歴代最多得点記録を持ち、400ゴール以上をロス・ブランコスに捧げてきた。さらに4つのバロンドールを獲得し、4度のチャンピオンズリーグ優勝を経験してきた。うち3つは白い巨人に捧げたものだ。
そんなロナウドを、クラブ史上最高の選手と言っていいのだろうか？
バルセロニスタに「あなたのクラブの史上最高選手は？」という質問を投げかけたとしたら、答えは十中八九「リオネル・メッシ」となるだろう。
彼はブラウグラナを2度の“トレブル”に導いた（2008-09、14-15シーズン）。8度のラ・リーガ優勝とクラブの通算5度のチャンピオンズリーグ優勝のうち、実に4つをもたらした。カンプ・ノウのファンのために500ゴール以上を決め、多くのことを成し遂げてきたからだ。
マドリーに話を戻すと、ロナウドもまた輝かしい日々を過ごしてきた。1試合に1ゴール以上という驚異のハイペースで得点を積み上げ、ラウールが刻んだクラブ史上最多323ゴールという記録を2015年に塗り替えた。2009年に9400万ユーロでマンチェスター・ユナイテッドから移籍してきたこの男は、マドリーに信じられない恩恵をもたらしてきたのである。
Goalただし、バルセロナがペップ・グアルディオラからルイス・エンリケまでの時代に手にしたものと比べると、マドリーの輝きはそこまで際立ったものとは言えない。ここ4シーズンで3度のCL制覇という偉業は成し遂げているものの、トータルで見ると見劣りしてしまうのだ。
サンティアゴ・ベルナベウの外でファンに質問を行ったところ、「ロナウドはクラブを引っ張ってきた最高の選手の1人である」と評価したものの、クラブ史上最高の選手だと挙げる人はそう多くなかった。
かつてマドリーのGKとして活躍したパコ・ブージョ氏は「レアル・マドリーの歴史においてはとても偉大な選手たちがいる」と語る。
「（アルフレッド）ディ・ステファノのような、レアル・マドリーのみならず、フットボール史上でも偉大な選手を忘れることはフェアじゃない。クリスティアーノはレアル・マドリーのレジェンドに違いないだろう。だがこのクラブの歴史を見た時、彼が史上最高というのは難しい。もちろん、トップ3には入るだろうがね」
Gettyマドリーには数々の名選手が在籍してきた。誰がベストかというのは個人の好みや世代によるだろう。多くの若いファンはクリスティアーノを史上最高とするだろうが、年長者たちは1950、60年代のクラブ黄金時代を振り返るだろう
「多くの選手がいるね」と1980〜90年代にプレーし、6度のリーグ優勝を経験したブージョ氏は語る。
「（フェレンク）プスカシュ、（パコ）ヘントといった選手がいる。ヘントは6度のUEFAチャンピオンズカップを勝ち取っているんだ！ 本当に多くの選手がいる。我々は過去のことを忘れてしまいがちだが、そういった歴代のレジェンドのことを忘れることは不当だよ」
ではいつの日か、クリスティアーノ・ロナウド率いるレアル・マドリーは1950～60年代にディ・ステファノがけん引したチームのように記憶されるようになるだろうか？
ブージョ氏は語る。
「クリスティアーノはあらゆる意味でスターだ。彼はマドリーですべてを勝ち取ってきた。またEUROでも優勝を手にして、代表レベルでも自身の力を示した。（史上最高の選手になるかどうかは）今後、数年に起きること次第だろう。さらに多くのチャンピオンズリーグを獲得するとかね。ディ・ステファノやヘント、コパ、プスカシュといった選手たちが率いたマドリーは5回連続でUEFAチャンピオンズカップを獲得したんだ。これはとてつもないことだよ」
かつてボカ・ジュニオルス、リーベルプレートでプレーした元アルゼンチン代表GKウーゴ・ガッティ氏は、ディ・ステファノが選手としていかに特別な存在であったか語るとともに、ロナウドと彼らとの比較が困難であるとした。
「私はアルフレッドと親善試合で1965年にヘントの記念試合（ベルナベウでリーベルと対戦）、84年、そして85年に対戦した。またボカでは、彼は私の指揮官だった。そして今、彼は再びボールと共にプレーし、かつてのようにスプリントを見せた。70歳を超えても私たちの誰よりも早かったよ！ 彼はベストだった。私にとってはペレが世界最高、歴代最高だが、その次がアルフレッドだ。だからクリスティアーノと比較するのは困難だよ」
一方、マドリードで半年間、テレビ解説を務めているガッティ氏は、最近スペインクラブのファンとしてベルナベウの常連となっており、またロナウドの強力な支持者でもある。
「あらゆるシーンで私はクリスティアーノに夢中なんだ。ナンバーワンだよ。だが彼はピッチ外でも同様に素晴らしいよ。私からすればクリスティアーノはピッチの内外でナンバーワンだ。彼は素晴らしいね。大好きなんだ。彼はリーダーだよ」
Getty Images今日の選手たちは一挙手一投足をカメラに収められている一方で、ディ・ステファノの足跡はほとんど知られていない。またそのキャリアのほとんどはビデオでもインターネットでもうかがい知ることができない。彼はどのような選手だったのだろうか？
ガッティ氏はこう語る。
「私がディ・ステファノと戦った時、彼は39、40歳だった。エスパニョールに所属していたと思うが、コパ、アマンシオ、プスカシュらとともにヘントの記念試合のために帰ってきた。彼は怪物だったよ。彼は同じようにプレーした。彼はGKにボールを要求すると、背後から現れるんだ。彼は攻めるとともに守備をした」
「アルフレッドはフェノメノだ。アルフレッド以降で彼に最も似た選手と言えば（ヨハン）クライフだね。アルフレッドは私にとって（マドリーの歴史上）最も偉大な選手だ。ヨーロッパにおいても同様だね。ヨーロッパのフットボールに革命をもたらしたのがアルフレッド・ディ・ステファノだと思うよ」
「アルフレッド以降だとクリスティアーノがいるね。でも特徴が異なる。アルフレッドは常に前を向き、爆発的な選手だった。クリスティアーノは私からすれば、学ぶことを止めようとしない男だね。彼は生まれながらの勝者で、偉大なストライカーだ。全ての勝利を求めていて、常により強くなろうとしているね。クリスティアーノはテニスの（ラファエル）ナダルに似てるよ思うよ。もっと、もっと、もっとだ。もっとうまく、もっと良く、もっと強くなりたがっているんだ」
Goalフアンデ・ラモスはロナウドがマドリーにやってくる直前までクラブを指揮していた。63歳の指揮官は自分のチームにポルトガル人ストライカーを加えたかったと語った。
「ロナウドやメッシのような選手がいるということは、どんな試合、どんな瞬間でも得点できるということだ。もし試合が難しくタイトなものであっても、ああいった選手たちは問題を解決して勝ち点3をもたらしてくれるんだよ」
2004年から2010年のあいだ、マドリーはチャンピオンズリーグでベスト16以上に進むことができずにいた。これはラモスが在任していた時期を含む。だがロス・ブランコスはここ4シーズンで3度ビッグイヤーを獲得していて、ロナウドは400ゴール以上を決めてきた。
「全てが一変した」とラモスは語る。だが彼もまたクリスティアーノとクラブの歴史を飾る偉人たちを比較することは難しいと考える。
Getty Images
「比べるのは難しいと思う。なぜならフットボールとは進化し、多くの変化をするものだからだ。私はディ・ステファノをマドリーで見たことが無い。だが人々は彼について多くを語る。人々はUEFAチャンピオンズカップの優勝5回について語るんだ。私はそれらを見ていない。だから比較したくはないんだ。とても重要なフットボーラーがいるということだよ」
「ラウールもレアル・マドリーに長い間在籍していた、クラブにとって非常に重要な選手だ。ではマドリーの歴史において、彼が最高かというと、その比較は私にはできない。時代が全く違うからだ。ヘントもチャンピオンズカップを6度獲得しているが、彼らの状況は全く異なるんだよ」
その通りかもしれない。ロナウドは若い世代にとって選ばれる存在だろうが、マドリーの歴史全体を見ると、それはここ数年以上にずっと偉大なものだ。彼のスペインにおける全ての輝き、全てのゴールをもってしても、ロナウドが偉大なアルフレッド・ディ・ステファノを上回るにはまだまだ長い道のりがあるのだろう。
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