カーンが大学で学んだこと。ブンデスリーガの“50+1ルール”の限界も指摘/インタビュー

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かつてバイエルンのGKとして一時代を築いたオリバー・カーンが、大学でのマネージメントの勉強やテンニエスとの話し合い、ブンデスリーガの“50+1ルール”について語る。

バイエルンの守護神として14年間に渡ってゴールを守り続けたオリバー・カーンは、現在『Goalplay』(GK養成講座の提供やグッズの販売を行う)の経営者として成功を収めており、おそらく2020年にはバイエルンへ復帰すると伝えられている。

カーンは『Goal』のインタビューに応えて、引退後にMBA(経営学修士)取得のために大学で学んだことについて語り、2009年にシャルケからのオファーを断った理由を明かす。

さらに、議論の多い “50+1ルール”(投資企業ではなくクラブに過半数の議決権を保証する取り決め) やプロフットボール界の世界的趨勢、伝統の保持というテーマについても見解を語り、バイエルンでの新たな仕事の可能性にも口を開いた。

■引退後に大学で学んだこと

2018-11-24 Oliver Kahn

――カーンさん、あなたは2009年から2011年の間に、オーストリアのゼーブルクにある私立大学でMBAの課程を修めました。“ジェネラルマネージメント”に重点を置きつつ、副専攻でスポーツマネージメントを学んだそうですが、プロのフットボーラーとして20年を送った後で新たな人生に乗り出すのは大変でしたか?

“学ぶこと”を学び直しながら新しい知識を自分のものにするのは、初めのうちは確かに大変なことだった。大学に設けられた課程への参加資格を得るために、あらかじめいくつかのコースを受講しなければならなかった。授業の初めにはみんなが自己紹介を求められるんだが、そういう時にはこんなふうに言ったんだ。「私はオリバー・カーンという者です。以前ちょっとGKをやっていました」。こう言うと、必ずちょっと笑い声が上がったね。

――勉強しながら、それが自分にとって本当に意味があるのか、時には疑問に思うこともありましたか?

いや、それはなかったよ。学問を修めるのはいつでも楽しいことだったからね。理論として何を教わるのか? そして、教わったことの中から実践の中で何を活かせるのか?こういう問いの組み合わせはわくわくするほど興味深いと思ったよ。

――勉強の最中の2009年、引退から1年しか経たない時期に、シャルケのマネージャーのポストに欠員ができたことで、あなたとシャルケの間で話し合いが持たれましたね。大学で学んでいるうちから、いずれはまた、言ってみればなじみの仕事に戻ろうと考えていたんですか?

誰でも、自分がよく知っているものを拠り所にしがちなものだ。私の場合、それはフットボールに関わる仕事だった。だから私は、前もって何度か話し合った上で、レーダ=ヴィーデンブリュックでクレメンス・テンニエス(企業家でシャルケの代表者)と会う約束をしたんだ。

――話し合いの後であなたは、「オファーがあと半年遅ければよかったのに」と言いましたね。

今でもよく覚えているが、私はレーダ=ヴィーデンブリュックのホテルの部屋に座っていた。すべてがまったく秘密裏に行われて、誰にも知られていないことになっていた。テレビでニュースが流れていた。その時突然、画面の下の方にテロップが流れているのに気づいたんだ。「オリバー・カーンがレーダ=ヴィーデンブリュックで会見」ってね(笑)。

――ですが、そのせいでシャルケのオファーを断ったわけじゃありませんよね?

そう、そのせいじゃない。どちらにとっても非常に興味深いアイデアだと思えたんだが、とにかく最終的に私は、自分がまだ準備ができていないと感じた。これは言っておきたいんだが、私はある事柄に対して、自分の準備ができているのかいないのか、非常に敏感に気づくことができるんだ。

■「シャルケのオファーは時期尚早だった」

oliver kahn schalke 04

――後で監査役会会長のテンニエスは、あなたの提示した構想を褒めていましたね。あなたは一体いつそういうことについて考えて、構想をまとめ上げていたんですか?

私はその頃フットボールビジネスの戦略的側面についていろいろ考えていたし、大学でも特にその方面について学んでいた。だから、クラブの基本方針について考えをまとめることは、当時の私にとってまったく当たり前のことだったんだよ。

――一般的に言って、シャルケとオリバー・カーンが一緒に仕事をするというのは想像しにくいと思うのですが、それもあってあなたはシャルケのオファーを断ったのでしょうか?

色々と細かい理由があって、先程も話したが、シャルケのオファーは私にとって時期尚早だと思ったんだ。あの頃も今も、とにかく私には120%バイエルン・ミュンヘンのやり方が染み付いている。だが、バイエルンの極端に成果を追求する考え方が他のクラブでもうまくいくのかどうか、確かに私は疑問に思っていた。

――では、あの申し出が半年後か1年後であったなら、あなたは引き受けることになったのでしょうか?

それは仮定の話にすぎないね。

――シャルケはこれまでずっと、数少ない社団法人(非営利法人)の一つとして存続してきています。当時のあなたとしては、現代のフットボール界の潮流に遅れずについていき、タイトルを勝ち取れるような力をつけるには、プロフットボール部門を切り離して企業化する必要があると考えていたのでしょうか?

プロ部門を切り離して資本会社(法人課税が適用される)化するというのは、まず何より純粋に構造的なプロセスであって、ドイツの場合にはその後も引き続きクラブが少なくとも51%の議決権を保有することになる。つまり、クラブの影響力はそれまでと同様に維持されるということだ。私が言いたいのは、切り離しによって、損失に対する責任や経済の観点から、純粋に非営利的なクラブとは違った振る舞いをするのに必要な条件が作り出されるということにすぎない。切り離しが行われてもなお、フットボールの面での成果が長期的に保証されるわけではない。ところで、レアル・マドリーは依然として非営利団体だが、そういう形態でも非常に大きな成果を挙げられることを示している。

■“50+1ルール”は必要か?

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――ディートマー・ホップ(TSG1899ホッフェンハイムの出資者)やクラウス=ミヒャエル・キューネ(ハンブルガーSVの出資者)やレッドブル(RBライプツィヒの出資企業)のように、フットボールに投資する個人や企業はドイツでは常に不審の目で見られますが、他国では投資家との関係はドイツほど緊張したものではありません。これはドイツに特有の問題なんでしょうか?

“50+1ルール”はドイツにしかない取り決めで、その意味ではドイツ的な現象だね。私の考えの前提になっているのは、現在のような形で運用されている“50+1ルール”による縛りは根本的にヨーロッパやドイツのカルテル法に抵触しているから、今年のうちにも連邦カルテル庁(ドイツの独占禁止法を施行する3つの省庁のうちの一つ)によって無効と判定される可能性があるということだ。フットボールクラブへの出資者の関与を制限して、いわばDFB(ドイツフットボール連盟)とDFL(ドイツフットボールリーグ機構: DFB傘下の組織で、ブンデスリーガの運営主体)の独占体制を許すように作られたルールが今の世界で生き延びるチャンスはほとんどないだろう。そういう意味では、この点をこれ以上問題にすることはないだろうね。

――ドイツのプロリーグ内で“50+1ルール”の問題について意見の一致を見出すのはかなり難しそうに思われますが。

ドイツで“50+1ルール”の問題が持ち出されると、反射的に、ルールの保護者が善玉でルールの敵対者は悪玉だという作り話が呪いのように呼び出されてくるんだ。善玉と悪玉があるだけで、中間には何も存在しないも同然だ。だが私の見るところでは、強固な伝統と出資者の関心をフットボールの中で結びつけることだってできるはずだ。マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、ASローマ、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンといったクラブは、出資者の助けによって、一流の陣容を整えたグローバルなフットボール企業へと成長を遂げている。そういったクラブは、有効な形で投資家たちをクラブに組み込むために新たな権限を追加している。ドイツでも競争力を維持しようと思うなら、何かと言えばすぐに伝統という棍棒を持ち出して振りかざすのはやめて、この問題に取り組まざるをえないだろう。

――にもかかわらずドイツには“50+1ルール”に対する強いこだわりがあるというのは、あなたにとって実感として理解できることですか?

非常によくわかるね。我々の社会では、18時になればテレビでスポーツニュースが流れると常に信じていられる。そんな社会で、一体感を生み出す前衛のような働きをしているのがフットボールなんだ。急速に変化していく世界の中で、フットボールが最後の確かな拠り所としての役割を果たしているんだよ。私はそういう環境の中で育ってきた。だから、フットボールにまつわる強固な伝統と文化を身をもって理解しているし、大切に思ってもいる。だが、私はリアリストだ。フットボールをグローバルな展開から切り離しておくのは無理だと考えている。さもなければ、いずれ我々はヨーロッパのトップリーグと競争する力を失ってしまうだろう。

――では、どうすればいいと思いますか?

別にいい考えがあるわけじゃない。だが、“50+1ルール”が通用しなくなる時代に向けて十分な備えをしておくべきだろうと考えている。その課題にどう応えるかは、どのクラブも自分で自由に決定することができる。時間に逆行するような考えやいつまでも現状にしがみつこうとする態度が本当に役に立ったことは一度もない。伝統あるクラブが沈没して姿を消していく一方で、ホッフェンハイムやライプツィヒのようなクラブが新たな可能性を示してくれている。

――DFLは、2020年にブンデスリーガの次の4年間の放映権を新たに売りに出す意向です。イギリスのEU離脱によって見込まれる効果と相まって、これはドイツのフットボールがイングランドに対して失地を回復するチャンスになりそうですか?

イングランドはすでに、EU離脱によって生じるかもしれないネガティブな結果に対して準備している。その場合まず重要なのは、労働法上の問題が提起されることだ。被雇用者の移動の自由が撤廃されれば、おそらくプレミアリーグにとって重大な結果をもたらすだろう。為替相場でブリティッシュポンドの下落も起こるかもしれない。だが、そんなことを真剣になって考えても仕方がないだろう? いずれにせよ今のところその辺は不確実なことだし、そのせいでブンデスリーガが得をすることもないだろうね。

――カーンさん、あなたはキャリアを終えて以来ほとんどインタビューのたびごとにバイエルンへの復帰について尋ねられていますね。まもなくそれも終わりになることを思えばうれしいですか?

今までで一番いい質問だね(笑)。それに、その質問にならちゃんと答えることができる。そう、もうすぐそのことを訊かれなくなるのは本当にうれしいね。

インタビュー・文=ヨヘン・ティットマール/Jochen Tittmar

構成=Goal編集部

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

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