ゴンサロ・イグアインはビッグゲームで得点できないという問題を抱えている。特に鮮明に記録に残っているのは、アルゼンチン代表として出場した2015年のコパ・アメリカ決勝でPKを外したことだろう。この時は怒ったサポーターたちから首を切り裂かれそうになったほどだ。
実はイグアインは“決勝戦で無得点”という呪縛に長いこと縛られている。だからこそ彼はユヴェントスのストライカーとしてカーディフで行われたレアル・マドリーとのチャンピオンズリーグ決勝で、この呪縛を断ち切る決意でいたことだろう。しかし今回も決定的な仕事をすることはできず、主要大会で無得点という呪いを解くことは叶わなかった。
これまでイグアインはキャリアの中で4度、国内リーグタイトルを獲得している。そのうちの3つは古巣にして今回の対戦相手レアル・マドリー在籍時代のもの。そしてもう一つが今シーズン獲得したユヴェントスでのものである。だが多くのタイトルを手にする29歳は、いまだ決勝の舞台でネットを揺らした経験はない。
リーグ以外に目を向けても、2011年のコパ・デル・レイで優勝した際もイグアインはベンチにいた。マドリーは延長戦でクリスティアーノ・ロナウドのゴールによってバルセロナを沈めたが、彼はそれをピッチの外から祝福するしかなかったのだ。
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Getty Images2013年の夏には、3900万ユーロ(約48億円)の移籍金でナポリに移籍すると、加入初年度の終わりにコッパ・イタリアで優勝する。が、この決勝戦でもイグアインは71分までピッチに立ったものの、エースとしてチームに貴重な得点をもたらすことはできなかった。試合はフィオレンティーナを相手に3-1と勝利したが、彼自身はその勝利において決定的な役割を果たせていない。
そしてそのわずか6週間後に待っていたのはW杯という大舞台での無念である。イグアインはアルゼンチン代表として決勝の舞台に立っていたが、ドイツとの決勝では延長の末に0-1で敗戦。しかも彼はこの失意の瞬間において、アルゼンチン代表のスケープゴートにされてしまった。試合開始直後に迎えたキーパーとの一対一の決定的なチャンスでミスを犯して先制の機会を逸すると、その後メッシのドリブルからエセキエル・ラベッシにボールが渡って生まれたクロスに反応し、ネットを揺らすがこれはオフサイド。やはりここでも結局得点を決めることはできなかった。
しかしその1年後、名誉挽回のチャンスが巡ってきた。アルゼンチンはコパ・アメリカで決勝に勝ち進み、チリとタイトルを争うこととなったのだ。
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だが、またしてもイグアインは心を痛めることになる。この日、イグアインはベンチスタート。74分を回ったタイミングでセルヒオ・アグエロと交代でピッチに立つ。もちろん彼は得点を決めるべく野心を燃やしていただろう。そして時計が90分に迫ろうかという時だった。リオネル・メッシがドリブルで仕掛け、ラベッシにパス。そしてラベッシが低い弾道のクロスを放ちそこにイグアインは走り込んだのだ。しかし結果は同じ。そのシュートは無常にもサイドネットを揺らすのみであった。
さらにイグアインの悪夢は終わらない。決勝は延長戦でも決着がつかずPK戦にもつれ込んだのだが、2人目のキッカーであったイグアインが蹴ったボールはバーの上に大きく外れていった。結局アルゼンチンは1-4で優勝を逃している。
そして歴史は繰り返す。翌2016年、コパ・アメリカ・センテナリオの決勝に勝ち進んだのは昨年と同じアルゼンチンとチリであった。しかもこの試合もまた最後まで均衡が崩れず、PK戦でチリが勝利している。スターティングメンバ―に名を連ねたイグアインだったが、23分にフリーで迎えた絶好の機会でシュートを大きく外す。その後も得点を挙げることができず70分にピッチを後にした。試合を決めることができなかった彼はこの時も糾弾されてしまった。

少なくとも、イグアインは先月スタディオ・オリンピコで行われたラツィオとのコッパ・イタリア決勝では勝利している。だが驚くべきことに、この試合でも彼は得点を挙げられていない。前半ダニエウ・アウベスからのパスを受けたイグアインがボックス内約5.5メートルの位置で放ったシュートは、ラツィオGKトーマス・ストラコシャの真正面へ。試合を決定づけることはできなかった。
こんな暗い歴史を抱える中、先日のチャンピオンズリーグ決勝ではこれまでの汚名を返上すべく、ビッグチャンスをものにして、9000万ユーロ(約103億円)の移籍金に見合う存在であることを示したかったことだろう。だが今回も彼は決定的な仕事をすることはできず、そればかりかまた悲しい記録を伸ばすのみであった。
彼は勝負に弱いのか、それともいくぶん運がないのか。その答えを知りたいのは誰よりもイグアイン自身であろう。
文=マーク・ドイル/Mark Doyle
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