左足一本さえあれば、なんでもできる。ベビーフェイスの11番はピッチ上で時折美しく輝かしい笑顔を浮かべながら、改めてそれを証明してみせた。
当初、バイエルン・ミュンヘンにおいてハメス・ロドリゲスは前任者カルロ・アンチェロッティが残した負の遺産だと思われた。しかし、今や全く逆の意見が出始めている。首脳陣、ファン、そして彼の周りでプレーする選手たちは小さくない恩恵を受け、感謝していることだろう。
数字だけ見ても、ハメスの貢献ぶりは明らかだ。RBライプツィヒ戦で1ゴール、ドルトムント戦で2アシスト、レヴァークーゼン戦で1ゴール1アシスト、パリ・サンジェルマン戦で1アシスト。加入当初は「リズムを失っていた」と自ら認めていたとおり、適正ポジションも定かではなく、ピッチで居場所を見失っているようだったが、中盤で再び輝ける場所を見つけると、年末からのカムバックは鬼気迫るものがある。
21日に行われたブレーメン戦でも、もはや言葉は不要な活躍ぶりを見せた。チーム最高のパス成功率(96%)に加え、キーパス3本。2アシストを決めたが、特に84分のミュラーのゴールのお膳立ては彼の真骨頂であった。
バックステップを踏みながら、ペナルティーエリア外右、俗に言うバイタルエリアで受けたハメスは、中に切れ込みながら、左足でラストパスを送る。特有の足首の柔らかさを活かして、空間を使ったパスはブレーメンDFをあざ笑うように頭上を越えて、ミュラーの足元へと届いた。
流し込むだけだったミュラーは破顔一笑。もちろんブンデスリーガ通算100ゴールを喜んでいたことは間違いないが、その笑顔のいくらかはスーパーなアシストを決めたハメスに向けられたものであったことに疑いはない。
ファンタジー溢れるパスで勝負あり!
— DAZN ダ・ゾーン (@DAZN_JPN) 2018年1月21日
コロンビア代表ハメス・ロドリゲスの浮き球のパスから、ミュラーが鮮やかにネットを揺らした。
ブンデスリーガ第19節 #バイエルン×#ブレーメン の見逃し配信を観るなら #DAZN で。 pic.twitter.com/MJoX4B8n4w
ユップ・ハインケス監督は試合後に「バイエルンをとても進歩させてくれる存在だ。衝撃だけでなく、創造性も持っている。チームのために走り、戦う準備ができているね」と賛辞を送っている。

思い出されるのは「ハメス獲得はアンチェロッティの強い要望だった」というウリ・ヘーネス会長の言葉。アンチェロッティが去ったことで、逆説的にハメスの真価を発揮させることは難しいとの見解が残っていた。
ましてやハメスが輝く場所はバイエルンで最も定位置争いが激しい中盤の攻撃的な位置。昨シーズンはチアゴ・アルカンタラがMVP級の活躍を見せ、強敵相手にはアルトゥーロ・ビダルの存在も捨てがたい。今季にはクラブ史上最高額でコランタン・トリッソが加わり、トーマス・ミュラーというバイエルンのシンボルはファンに最も愛されている選手の一人だ。
それでも、ハメスは自らの左足でその場所を勝ち取った。ミュラーへのアシストは開幕前に不安視されていた『共存は可能か?』というクエッションの答えともなる。ミュラーは試合後に『Goal』で「僕らは全く異なるタイプの選手だし、相互に働きあうことができる。ハメスはボールを多く触るプレーメーカーで、スペースを見つける良い目を持っている。僕は常にゴールにつながるスペースを探している選手だからね」と語ってくれたが、結果がこのコメントに大きな説得力をもたらしている。
(C)Getty Imagesアンチェロッティに求められてやってきたハメスと、方や昨季は前任者の元でキャリア最低の時を過ごしたミュラー。その二人がハインケスの元で相互に輝かせ合うというのは少々皮肉な結果でもある。それでも、アンチェロッティの残した最後の遺産とともにバイエルンは突き進む。チャンピオンズリーグ奪還という悲願の目標に向け、ハメスの存在は宝石ほどの価値を持つことだろう。
原案=Goalドイツ語版編集部
文=平松凌(@bayernista25)
Follow @bayernista25



