Richarlison Watford 2017Getty Images

アイスを売りながら描いた夢の舞台…ワトフォードFWリシャルリソンがファンとともに歩む道

ワトフォードのマルコ・シウヴァ監督の手中には、宝石が輝いている。8月にフルミネンセFCから1120万ポンドで移籍してきたFWリシャルリソン・デ・アンドラーデは、「ヴィカレージ・ロード」へ来たばかりにもかかわらず、すでに結果を残している。

20歳のリシャルリソンには、アヤックスと契約するチャンスもあったという。彼はブラジルのフル代表には選ばれていないにもかかわらず、イングランドでの労働許可書を獲得した。プレミアリーグでこれほどのインパクトを見せつけてきたから、すでにいつセレソンに選ばれてもおかしくないと言えるだろう。

通常、“イングランド・フットボール”に外国籍の選手が――とくに若い選手の場合――適応するには時間がかかるものだ。しかしリシャルリソンは、まだ英語の学習を始めたばかりだとしても、すでにのびのびとプレーしているように見える。

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チームメイトで同胞のGKエウレリョ・ダ・シウヴァ・ゴメスは、この若きスターの面倒をみることを引き受け、クラブにおけるメンターとして指導しているようだ。もしリシャルリソンが今のような活躍を続け、ビッグクラブが彼の才能に気づいた場合、ワトフォードは彼を長くチームに残して置けるだろうか。

Richarlison Fluminense

■アイスクリームを売りながら描いた夢

リシャルリソンの父親は石工で、母親は掃除婦である。5人兄弟の長男として、1997年にノーヴァ・ヴェネーシアに生まれた。そこでサッカーを習い始め、その才能を使って貧困から抜け出すためにプレーをしつつ、多くの夢を実現してきた。

あたたかな家庭で育ったリシャルリソンだが、子どもの頃から働かなければならず、家族のためにお金を稼ぐためにアイスクリームを売っていた。そんな最中でもその才能は輝いていた。そして敏腕代理人のレナト・ヴェラスコが見いだして、リシャルリソンは、2014年にアメリカFCと初めてのプロ契約を交わした。

そこでの厳しい教育により、リシャルリソンはサッカー界の熾烈な競争に立ち向かう準備を整えていった。わずか18歳にして初めて大きな移籍を果たし、2016年におよそ200万ポンドの移籍金でアメリカFCからブラジルサッカー界の巨人、フルミネンセFCへ加入した。

リシャルリソンは、フラメンゴとのローカルダービーでプロ初ゴールをあげると、67試合出場で19ゴールを決めて、ブラジル期待の若手にかかるプレッシャーをはねのけた。伝説の「マラカナン・スタジアム」でのプレーぶりにより、その才能がヨーロッパのクラブに知れ渡ることとなった。そして今、ワトフォードで先発した7試合で3得点を挙げたことにより、評価はうなぎのぼりに上昇している。

Richarlison

しかしながら、リシャルリソンは「子どものころからプレミアリーグのファンだった」と話し、早急な移籍を望んでいないという。

「イングランドで、ワトフォードのような偉大なチームでプレーするのは夢だった」と、リシャルリソンは『Goal』に語った。「子どものころからの夢だった。ずっと、プレミアリーグでプレーしたかった。世界で一番素晴らしいリーグのひとつだからね」

「神様が、僕のためにすべてを完璧に整えてくださった。イングランドからオファーから来て、再考する必要なんてなかったね。プロになってからずっと、それが目標だったんだ。ワトフォードで歴史を創りたい。たくさんゴールしたい」

■夢の舞台で、最高のファンとともに

リシャルリソンは、試合終了間際の時間帯に2度もゴールを決めており、ワトフォードに4ポイントをもたらしてきた。第2節のボーンマス戦で初ゴールをあげた後、アウェイのスウォンジー・シティ戦とウェスト・ブロムウィッチ戦の2試合で、後半アディショナルタイムにゴールを決めたのである。ンドレ・グレイと抜群のコンビネーションを見せ、チームキャプテンであるトロイ・ディーニーを、ベンチに追いやるほどの活躍を見せている。

20歳のブラジル人FWは、得点できなかったとき、アメリカのサスペンスドラマ「プリズン・ブレイク」をみたり、ブラジルの「ファンク」ミュージックを聞いたりして、気分転換しているという。お気に入りのアーティストはアンドレジーニョ・ショックだ。

ワトフォードのファンが歌うチャントを理解するため、今彼は英語を猛勉強しているという。「ラ・バンバ」のリズムで、「リシャルリソン、リシャルリソン、ワトフォードのためにシウバ軍団でプレーする」と歌い上げるこのチャントを、この若武者も楽しんでいるようだ。

「ここのファンは最高だ」と、リシャルリソンは感激している。「ファンのみんなと歌うために、あのチャントを覚えたいよ。熱狂的に応援してくれるから、気持ちよくプレーできるし、いつもよりちょっと遠くまで走ることができる…。僕を受け入れてくれることに、本当にビックリしたよ。ファンのみんなが僕のためにしてくれることを、言葉で言い表すことはできない」

28日のストーク・シティ戦で再び得点できれば、ファンは大喜びするだろう。リシャルリソンは、ここ最近のプレミアリーグの中で、最もエキサイティングで興味深い若手選手の1人だ。

文=Nizaar Kinsella

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