なぜ日本代表は格下タイ戦で守備的布陣を敷いたのか?見逃せない“変化の過程”/コラム

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(C)Getty Images
ホーム黒星という最悪のスタートを切った2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選だが、アラブ首長国連邦(UAE)代表とタイ代表に勝利を収め、グループ首位に立った日本代表。その劇的な変化の背景に、スポーツライター・飯尾篤史が鋭く迫る。

ホームで敗戦という最悪のスタートとなった2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選も、アラブ首長国連邦(UAE)とタイに連勝し、日本が今予選で初めて首位に浮上した。

日本がタイを4-0で下した第7節では、サウジアラビアがイラクを1-0で下し、オーストラリアが2-0でUAEに勝利。この結果、日本とサウジアラビアが勝ち点16で並び、得失点差で下回るサウジアラビアが2位、勝ち点13のオーストラリアが3位、勝ち点9のUAEが4位、勝ち点4のイラクが5位、勝ち点1のタイは敗退が決まった。

最終予選の残り3試合、日本は6月13日にアウェー(イランでの代替開催)でイラク、8月31日にホームでオーストラリア、9月5日にアウェーでサウジアラビアと対戦する。最短ではオーストラリア戦で、6大会連続となるW杯出場が決まる。

■指揮官と選手に生まれた変化

Yuya Kubo of Japan

W杯への出場権をグッと手繰り寄せることになったUAEとタイとの2連戦における収穫は、メンバー選考に幅が生まれたことだろう。

キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)が負傷離脱するという困難な状況だったが、2年ぶりに代表に復帰した今野泰幸(ガンバ大阪)がブランクを感じさせないパフォーマンスを披露。長谷部の穴を埋めると、11月シリーズから本田圭佑(ミラン)に代わって右ウイングを務める久保裕也(ヘント/ベルギー)が、2試合で2ゴール3アシストの活躍と、新風を吹き込んだ。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の選手起用にも、変化が見えた。

UAE戦で見せた今野のインサイドハーフ起用は「ここ3試合、今野がG大阪でどんなプレーをしているのか追跡して、そこでアイデアが浮かんだ」と指揮官が明かしたように、G大阪での起用法を取り入れたもの。タイ戦での酒井高徳のボランチ起用も、ハンブルガーSVにおけるコンバートに倣ったもの。クラブチームでの起用法をここまでダイレクトに取り入れたのは、これまでになかったことだ。

それができたのも、対戦相手を徹底的に分析し、シチュエーションに応じてメンバーと戦い方を変え、臨機応変に戦うという指揮官のスタイルがチームのスタンダードとして定着してきたからだろう。

今シリーズで強く感じられたのが、選手たちのコメントの変化だ。

昨年9月のUAE戦、タイ戦の頃には、ボールを保持できないことに対するネガティブなコメントが聞かれ、10月のイラク戦、オーストラリア戦のあたりでもまだ、多少戸惑いの声があり、「やるのは選手たちだから」と割り切ろうとする声も聞かれた。だが、11月シリーズで結果が出て、指揮官とのコミュニケーションも深まったことで、スタイルへの理解が進んできたように感じられる。

「今のチームはカメレオンのように戦術を変えられる。(メンバーが変わることで)選手間の競争も出てくるし、相手も僕らのことを読めないと思う。毎試合フォーメーションが変わっていい試合をされると、相手は戸惑うんじゃないかと思いますね」

そう胸を張ったのは長友佑都(インテル)だ。原口元気(ヘルタ・ベルリン)も「短期間の中で監督としっかりコミュニケーションを取って、それを試合で表現できている。こうした戦い方は、ポイントを取るためにすごく理にかなっていると思う」と手ごたえを隠さない。

■タイ戦で見えてきたもの

Head coach Vahid Halilhodzic of Japan

タイ戦は、このチームがあらためて何を大事にしているのかがうかがえた。

攻撃的に戦うのなら、アンカーに山口蛍(セレッソ大阪)を置き、インサイドハーフに香川真司(ドルトムント)と清武弘嗣(C大阪)を並べる布陣も考えられたが、採用されたのは、山口と酒井高という守備に強みを持った選手を2ボランチに並べる手堅い布陣だった。それは、タイを前に出てこさせるための策、あるいは、引き分け以下で予選敗退が決まるタイが前に出てくることを見越しての策だったか。いずれにしても、押し込んで攻め倒そうとする狙いでなかったのは確かだ。

前に出てきたタイに対して、効果的に裏を突いて4ゴール。後半の半ばすぎには「監督からは『ボールを失わず、落ち着かせてほしい』という指示を受けた」という清武や本田を投入し、ゲームを終わらせに掛かった。パスミスが相次いだのは、ボランチコンビが初めての組み合わせだったことと、今予選で第1戦をアウェーで、第2戦をホームで戦ったのは初めてだったため、コンディションの影響もあったかもしれない。

アジア最終予選もいよいよ最終コーナーに差し掛かった。残り3試合で求められるのは、勝利はもちろんのこと、その先のフェーズ――90分間の中で戦況に応じて選手たちが戦い方を柔軟に変えられるようになるだろう。もちろん、久保に続く、さらなる若手の台頭が必要なのは、言うまでもない。

文=スポーツライター・飯尾篤史

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