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FIFA ワールドカップアジア予選

なぜ日本代表は主導権を“握らなかった”のか?UAE戦で見えたハリルサッカーの真髄

11:43 JST 2017/03/24
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2-0の快勝という結果に終わったUAE代表との一戦。W杯出場に1歩近づいただけでなく、アジア仕様と世界仕様のダブルスタンダードに悩まされない“初めての”日本代表、すなわちハリルスタイルが明確に打ち出される内容となった。ハリルスタイルとは何か。スポーツライター・飯尾篤史がズバリ解説する。

ハリルスタイルとは何か――。

昨年9月の敗戦のリベンジを果たしたアウェー・アラブ首長国連邦(UAE)戦は、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が思い描く戦い方が、くっきりと表れたゲームだった。

途中出場した岡崎慎司は、ベンチから戦況を見守った前半について、こんな風に言っている。

「新しいフォーメーションだったから、最初は『どうなるかな?』っていう感じだったけど、中盤が1人増えて守備のブロックが厚くなっている分、相手に主導権を握らせず、良い距離感を保っていた。先制点の流れは、サイドバックが空いていたので、うまく使ったと思うし、短い期間しか練習できなかったけど、選手がうまくやったかなと」

ここで注目すべきは、「主導権を握らせず」という言葉。主導権を「握る」のではなく、「握らせない」――。このひと言に、ハリルジャパンがやろうとしていることが、集約されている。

中盤に落ちてくる10番、イスマイル・マタルを警戒するために山口蛍をアンカーに配置し、サイドから頻繁に中央に潜り込んでくる21番、オマル・アブドゥルラフマンをケアするために今野泰幸をインサイドハーフで起用。相手のストロングポイントをはっきりと封じに行った。

所属クラブで試合に出場していないGK川島永嗣と長友佑都の起用は、リスクを伴う選択だったが、白装束の男たちで埋め尽くされたスタジアムが異様なムードに包まれた時(今回はそこまで険悪な雰囲気にはならなかったが)、何よりモノを言うのは修羅場をくぐり抜けてきた経験となる。そう考えれば、守備陣のメンバー選考において「これまでの経験」が重視されたことも納得が行く。

一方、カウンターを繰り出させたい攻撃陣に重視されたのは、「現在の勢い」。センターフォワードの大迫勇也が空中戦を何度も制して起点となれば、久保裕也は裏に抜け出して先制ゴールを奪ってみせた。「(攻撃の)フィーリングが悪かった」と自身の不調を自覚していた原口元気も、守備で奔走することで、不調を露呈させなかった。

日本代表を定点観測している人には、昨年10月のオーストラリア戦、11月のサウジアラビア戦、そして今回のUAE戦と、メンバーだけでなく、フォーメーションも戦い方も少しずつ変化していることが分かるだろう。どんな相手に対しても同じような戦い方をするつもりは端からない。だから、「ポゼッションサッカー」だの、「フラット3」だの、「自分たちのサッカー」だの、「接近・展開・連続」だのといった分かりやすいキーワードが入り込む余地もない。

言うなれば、「勝つことから逆算したサッカー」。対戦相手を徹底的に分析し、シチュエーションに応じてメンバーと戦い方を変え、臨機応変に戦うことこそハリルホジッチ監督の真骨頂というわけだ。

そんな今の日本代表は、ダブルスタンダードに“初めて”苦しまない日本代表になる可能性を秘めている。

これまでの日本代表は、アジアではボールを保持して主導権を握れたが、予選を突破して世界と向き合った途端に主導権を握れなくなり、軌道修正を余儀なくされてきた。アジア仕様と世界仕様――。強者の戦い方と弱者の戦い方と言いかえてもいい。唯一の例外は2006年のジーコジャパンだったが、1勝も挙げられずに玉砕している。

だが、今の日本代表はアジアでもボールを保持して主導権を握ることに固執しているわけではない。アジアでの戦い方の延長線上に、世界での戦い方がある。それこそが、ハリルジャパンの秘める可能性だろう。

そこで、興味深いのが28日のタイ戦だ。グループ最下位のチームをホームで迎えるゲームでハリルホジッチ監督は、どのようなメンバー、どのような戦術をセレクトするのか。おそらく、前からボールを奪いに行き、敵陣でショートカウンターを繰り出した11月のサウジアラビア戦に近いゲーム運びになるだろう。だが、まだ見ぬオプションが披露される可能性がないわけではない。

ボールを握れたかどうか、主導権を握れたかどうかではなく、戦い方の幅、メンバー選考の幅にこそ、ハリル・ジャパンの力を測るモノサシがある。

文=スポーツライター・飯尾篤史

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