Yuya Osako of Koeln(C)Getty Images

なぜ大迫勇也は“わずか7ゴール”でも代えが利かないのか?飛躍の根拠は【海外日本人総括】

今季の目標:レギュラーへの返り咲き&一つでも多くのゴールを奪う

結果:代えの利かない貴重な戦力となり、チーム目標の達成に大きく貢献

採点:85点

文=遠藤孝輔

■いなくなって初めて分かる貢献度の高さ

第2節のヴォルフスブルク戦で今季初の先発出場を果たすと、24試合連続でスタメンに名を連ねた。最終節ではチームをヨーロッパリーグ出場に導くゴールを決め、文字通り有終の美を飾っている。出場試合数(30)、得点(7)、アシスト(7)と、渡独後の自己レコードを更新。今年3月のアラブ首長国連邦代表とのロシア・ワールドカップ最終予選で負った膝のケガ、夜はまだ冷え込む時期(4月下旬)に催されたサイン会への参加でこじらせた扁桃腺炎さえなければ、全試合に出場していてもおかしくなかった。

ケルン加入3年目に飛躍できた理由は少なくない。真っ先に挙がるのは、最も得意とするフォワードで起用されたこと。開幕直後から2トップの一角に固定されると、持ち前のボールキープ力を発揮しながら前線でタメを作れば、視野の広さや状況判断の良さを活かしたパスを駆使し、最後の30メートルで違いを作り出した。得点源のモデストが25ゴールと爆発したのも、大迫の貢献に拠るところが小さくない。何度となく決定的なラストパスを通すなど、そのパートナーとはまさに阿吽の呼吸だった。

戦力としての重要性は不在時に浮き彫りになった。ディフェンスラインやボランチと、フィニッシャーのモデストを効果的に繋いでいた大迫を失ったチームは攻撃のバリエーション不足を露呈したのだ。もともとカウンターを得意とするチームに、仕掛け、崩しの局面でアクセントを加えた大迫の有用性は極めて高かった。ゴールという結果が出なかった時期(第6~17節)も高評価を受けていたのは、こうした数字に表れない部分の貢献度が高かったからだ。とかく結果で評価されがちなドイツにおいて、得点以外の働きで大きな称賛を浴びた初めての日本人フォワードと言えるだろう。

■訪れた転機と、タスクの遂行

開幕直後から出場機会を掴み、安定したパフォーマンスを見せていた大迫のターニングポイントは何か。あえて挙げるなら、マルセル・リッセの負傷離脱だろう。好調を維持していたこの右サイドハーフが第13節のホッフェンハイム戦で右膝の十字靭帯を断裂し、ケルンのペーター・シュテーガー監督は前線のテコ入れを決意する。2トップの一角に据えていた大迫を3-4-1-2システムのトップ下に回したのだ。

それでも大迫はチャンスメーカーとして十分に機能。リッセの他にマティアス・レーマンなど主力に負傷者が相次いだシーズン中盤には、左右のウイングに加え、ボランチを任される場合もあった。特筆すべきは“器用貧乏”に陥ることなく、どのポジションでも自身のタスクを忠実に遂行していたこと。戦力のやり繰りに頭を悩ませていたシュテーガー監督にとっては、文字通りの代えの利かない存在となっていた。

■二桁得点を挙げていたら採点は満点に近かった

レギュラークラスあるいは準レギュラーの域を出なかった昨シーズンから飛躍を果たし、エースのモデストやドイツ代表のヨナス・ヘクター、守護神ティモ・ホルンと並ぶ中心選手に上り詰めた。本人がこだわりを見せるゴールの数こそ伸びなかったが、ケルン躍進の一翼を担ったのは既述のとおり。チーム目標のヨーロッパカップ戦出場権獲得に貢献し、昨季に失いつつあったサポーターの信頼をがっちりとつかんでもいる。

仮に二桁ゴールを叩き出していたら、採点はかぎりなく満点に近かった。これからうわさが浮上する可能性もなくはないが、チャンピオンズリーグ常連のようなビッグクラブからオファーが舞い込んでいたかもしれない。いずれにせよ、来季は自身初となる欧州カップ戦出場が決定的。その舞台でどんなパフォーマンスを見せるか必見だ。

■移籍の可能性は?

10%

昨年10月にケルンとの契約を2020年6月まで延長。最終節終了後にヨーロッパリーグへ臨む来季への展望を語っていた事実を踏まえれば、移籍の可能性はかなり低そうだ。大迫の才能に惚れ込んでいるシュテーガー監督の留任もほぼ確実で、ステップアップ以外にチームを離れる理由を見出しにくい状況と言えるだろう。

文=遠藤孝輔

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