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なぜバルセロナはD・アウベスを放出したのか…近年最大の過ちの真相とは?

■D・アウベスがバルサを去った経緯

かつてミランで活躍したアンドレア・ピルロは、ベテランの年齢に差し掛かるとともにミランから見限られてしまった。その後、11-12シーズンにユヴェントスに加わってから、数々のタイトル獲得に貢献。2006年夏の“カルチョ・スキャンダル”発覚以来、長らく低迷していたユーヴェを再び“イタリアの盟主”に押し上げたことは有名な話である。

それと同じような事例が現在巻き起こっている。それはかつてバルセロナで長らくプレーしたダニエウ・アウベスだ。彼はバルセロナを退団し、2016年夏に33歳でユヴェントスへ加入。新天地のイタリアで彼は“世界最高の右サイドバック”と言われていたかつての力を維持していることを証明した。

バルセロナが2014年に移籍禁止処分を科される前から、バルセロナは世代交代を促そうという動きを見せていた。その意図を察知し、D・アウベスはバルセロナ首脳陣を信じられなくなっていたようだ。

確かにチームの高齢化が進んでいるバルセロナにとっては難しい時期ではあった。だが、2008年夏に加入して以来、信頼に値する活躍を見せてきたD・アウベスに対して提示した新契約の内容は、契約期間、額面ともにリスペクトを欠いたものだったと言われている。

バルセロナ在籍時代、D・アウベスはリオネル・メッシに次いで23度のメジャー大会優勝をもたらした。ペップ・グアルディオラが率いていた当時のバルサでのベストプレーヤーの一人であった。

そして彼はフリーでバルセロナからユヴェントスに移籍することとなったが、そこにはクラブに貢献してくれた最高の選手に対して向けられるべきである、別れの形もなかった。

その結果、D・アウベスをやすやすと放出しておきながら、バルセロナは今のところ右サイドバックの人材難に苦しんでいる。そう、抜けた穴を埋められずにもがいているのだ。

アレイクス・ビダルはD・アウベスの後継者としてバルサと契約したものの、期待を裏切る結果となっている。カンテラ出身のセルジ・ロベルトが今の所はかろうじてそのポジションをこなしているが、彼はそもそもサイドバックが本職ではなく、圧倒的な走力とスタミナという点では、前任者には遠く及ばない。

D・アウベスは今シーズン序盤、スペインメディア『ABC』のインタビューに対してこう答えている。

「バルセロナの経営陣は、選手をどのように扱うべきかを分かっていなかった。最後の3シーズン、僕に対して経営陣から引き止めをするような動きは全く見せてくれなかったんだ。バルセロナは誠実さと敬意に欠けていた。僕に対してのリスペクトがなかったし、契約延長を提示してきたのも、FIFAによって補強禁止処分を受けたから、やむを得ずという感じだったね」

「彼らからのオファーを受けて、一応契約更新はしたよ。でも、そこに1年後にはフリーで移籍ができるというオプションを含めたんだ」

Dani Alves Luis EnriqueBeinSports

■ユヴェントスで改めて実力を発揮

バルサに2度の3冠(08-09、10-11シーズンにリーガ・エスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグの全コンペティションを制覇)をもたらした男が、ユヴェントスに移籍することになった。そして今、彼はユヴェントスに3冠をもたらそうとしている。

ユーヴェは今シーズンもセリエAで優勝がほぼ確実となっており、その後にはラツィオとのコッパ・イタリア決勝が控えている。そしてチャンピオンズリーグ準決勝でモナコを撃破し、決勝進出を果たした。

D・アウベスはウェールズで行われるチャンピオンズリーグ決勝の舞台を楽しみに待ちわびていることだろう。かつてバルサの上層部に煙たがられた男にとって、ラウンド8の舞台でユヴェントスがバルセロナを下したことは、古巣を見返すこれ以上ない結果になったと言える。

昨年11月のセリエAの試合で足の骨折を負った時には、多くの人々がD・アウベスの未来を不安視したものだが、彼は復活を果たし、チャンピオンズリーグの終盤戦においてユーヴェにとって最も重要な選手となった。

準々決勝でバルサ相手に勝利を飾り、その2試合で同胞ネイマールをマークすることになったが、D・アウベスは同胞のクラック相手に決定的な仕事をさせなかった。そしてモナコとの準決勝では、2試合とも彼がピッチ上でベストなパフォーマンスを出していた選手だったと言っても過言ではないだろう。

アウェーで行われたモナコとのファーストレグで、D・アウベスは2本のピンポイントクロスからアシストを記録した。1つ目は、あとはゴールに転がせばいいだけのヒールパスをゴンサロ・イグアインに出したもの。

もうひとつはファーサイドへの正確なクロスで、あとはイグアインが合わせるだけという質の高いものだった。

ホームでのセカンドレグでは、前半終了直前にゴールを決めた。ユヴェントスのコーナーキックをモナコのキーパー、ダニエル・スバシッチがパンチングで弾いたボールを、ペナルティーエリア外からD・アウベスがボレーでネットを揺らした。

Dani Alves Juventus Monaco Champions LeagueGetty Images

■攻守両面で貢献

D・アウベスが称賛に値するのは、なにも彼の攻撃での貢献度の高さだけが理由ではない。チャンピオンズリーグでは昨年11月にセビージャを3-1で下した試合で失点して以来、ユーヴェが許した失点はわずかに1つだけである。

右サイドバックという激しい動きを求められるポジションを主戦場としながら、シーズンを通して5枚とも4枚ともなるディフェンスラインでプレー。また、4-2-3-1のフォーメーションでは、右サイドのアタッカーとしてプレーすることもあった。彼のポリバレントな能力が存分に発揮されたのである。

ここのところユヴェントスには、フリーで選手を獲得することに関しては最も優れたチームであるとの評判がある。ピルロ、ポール・ポグバ、そしてサミ・ケディラといった選手たちはいずれもヨーロッパのライバルクラブからフリーで獲得した選手たちだ。

かつてミランからユーヴェにやってきたピルロは、「ユヴェントスに再びタイトルをもたらすきっかけになった最高の補強事例」と見なされている。その時のピルロと、現在のD・アウベスはまさに同様の状況となっているのだ。

5月6日にD・アウベスは34歳の誕生日を迎えたばかり。いまだ“世界最高の右サイドバック”として衰え知らずの働きを見せる彼は、バルセロナがいかに大きな過ちを犯したのか、これからさらに証明し続けることになりそうだ。

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文=Peter Staunton/ピーター・ストーントン

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