GFX Mario Gotze 2014 2019 SplitGetty/Goal

ついに28歳。クロップも絶賛していた「世紀の天才」マリオ・ゲッツェがドルトムントで干されている理由

かつてピッチはマリオ・ゲッツェの舞台のようなものだった。

ところが、ブンデスリーガの首位を争うボルシア・ドルトムントとバイエルン・ミュンヘンの直接対決の激闘において、かつて神童と呼ばれたドイツ人選手はベンチを温め続け、投入されたのは試合時間が残り10分となってから。目立った活躍もできず、チームも0-1と敗れた。

ワールドカップの決勝で英雄となりながら、それ以外の成功をキャリアに刻むことができないでいるゲッツェ。28歳の誕生日を迎え、ドルトムントとの契約がこの夏に満了する中、次のような疑問が浮かぶのは仕方のないことだろう。

「なぜ“世紀の天才”は輝かしいものになると思われていた未来を手に入れることができないでいるのか?」

ゲッツェを「世紀の天才」と評したのはマティアス・ザマーだった。ロベルト・レヴァンドフスキは「規格外の選手」と呼び、ユルゲン・クロップは「私のこれまでの監督人生の中で、最高の若手選手」と言った。ドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督にとっては「神童」であったし、フランツ・ベッケンバウアーにとっては「ドイツ代表史上最高のストライカー」だった。

そうそうたる面々から絶賛されていたのである。

Mario Gotze Robert Lewandowski Borussia Dortmund

実際、10代の頃のゲッツェは特別な選手だった。ダイナミックで、賢く、スピードがあり、創造性にあふれ、テクニックも抜群。21世紀の理想的なサッカー選手と見られていた。多才で変幻自在で機敏。ドイツ紙『ビルド』は「スーパーマリオ」と書き立てた。

20歳になるまでにゲッツェはドルトムントの2度のブンデスリーガ優勝とDFBポカール(ドイツのカップ戦)制覇に貢献し、2010年にはドイツのフル代表に選出されたが、これは1954年のウーヴェ・ゼーラー以来の最年少記録だった。スウェーデン代表との親善試合に途中出場し、当時ドイツサッカー協会(DFB)のテクニカル・ディレクターだったザマーは「歴代のドイツ代表の中で最高の天才のひとり」と語っていた。

問題なのは若かったゲッツェが今や28歳となったことである。サッカーは日進月歩が激しく、あれやこれやの理由で、シュヴァーベン県メミンゲン出身の若者は追いつくのに必死だ。

数週間後にはゲッツェはフリーになる。5月初め、ドルトムントはジグナル・イドゥナ・パルクでゲッツェとの契約を更新しないことを明らかにした。「ゲッツェは素晴らしい選手だ」と、スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクは言った。「これはお互いを尊重しあった決定である」。

■リヴァプールで復活のチャンスもあったが…

Jurgen Klopp Mario Gotze

今となっては過去のことだが、ゲッツェが初めてドルトムントを出て行った2013年、クラブはお通夜のようになった。「心臓を撃ち抜かれたようだった」と、当時のドルトムント指揮官クロップは、ゲッツェが3700万ユーロ(約44億円)でバイエルンに移籍したことをそう語っていた。あのニュースは、ドルトムントがチャンピオンズリーグの準決勝でレアル・マドリーと対戦する前夜にメディアが報じたものだった。

クロップはゲッツェとその代理人に直接会い、バイエルンに行くのは間違いだと警告した。「クロップにはわかっていた」と、ドルトムントの最高経営責任者であるハンス・ヨアヒム・ヴァツケは言う。「クロップはあの坊やが間違いを犯し、そのせいで傷つくだろうと100%確信していた」。

ゲッツェはクロップを尊敬し続けている。今でも連絡を取りあっているし、ゲッツェにとってかつて師事した監督との思い出は幸せでしかない。

「監督は僕のことをわかってくれていた」と、ゲッツェはアメリカのスポーツメディア『The Players Tribune』で述べている。さらに、クロップについては「監督としても優れた人だけど、人間として本当に素晴らしい人だった。あんなに明るいサッカーの監督に会ったことがない」とも話した。

2016年の春、ゲッツェはクロップからリヴァプール加入のチャンスを与えられた。だが、驚くことにそれを断ったのである。バイエルンでのゲッツェは、クロップが予言したとおり、成功を収めることはできなかった。最初は活躍したが、当時のペップ・グアルディオラ監督の下でレギュラーの座を獲得することはかなわなかったのである。そんな失意の中にあった元教え子を、クロップは救い出す用意ができていた。

ただ、ゲッツェは「リヴァプールは僕にとって遠すぎた」と断り、結局は古巣のドルトムントに戻る決断を下した。当時、失望したクロップはメディアに自身の主張を力説していた。

「列車を押してくれる選手を探していた。走っている電車に飛び乗ろうとするのではなく、自分で列車を押してやろうとする選手、我々がリヴァプールで必要としているのはそういう選手だった。『でも来年のチャンピオンズリーグでプレーできない』ということになって、さようなら、ありがとう、どこにいっても来年は頑張れよ、ということになった」

その夏、ゲッツェはドイツへと戻り、リヴァプールは別の選手に注目した。それがサディオ・マネだ。4年経った今では、世界最高の選手の一人となっている。レッズという列車は今、フルスピードで疾走中だ。もう押す必要もなければ、途中から乗ることもできない。

■抱える最大の問題は?

Mario Gotze Borussia DortmundGetty

ゲッツェは今や次の移籍先を検討しなければならない状態である。イタリアへの移籍話もあり、とりわけラツィオやミランの名前が挙がっている。だが、全盛期を過ぎてしまっているのではないかという疑念は払拭しきれていない。ドイツのレジェンド、ローター・マテウス氏は「もう一度本当の自分を取り戻さなければ」と語る。

「フィジカルは大丈夫だ。問題はメンタルだ。サッカーは常に変化する。彼のプレースタイルには貪欲さが欠けている。ドルトムントや他のトップクラブのサッカーについていくにはスピードが足りない」

そこがまさに厄介なところなのだ。ゲッツェの才能はまだ枯れていない。「自転車と同じで、教えてもらってできることじゃない」とザマーは言う。だがケガや体調不良のせいでその才能が発揮できていないのだ。10代で恥骨に炎症を負い、2013年のUEFAスーパーカップのチェルシー戦でラミレスに恐ろしいタックルを受けて以来、足首に問題を抱えている。最も重大なのは代謝障害で、ドイツでの報道によるとミオパシーだというが、それを患って、2017年には半年ほど思うように動くことができず、スピードや身体のキレを失ったという。

他にも問題はある。『ビルド』の辛口批評によると、最近のゲッツェは「毎日トレーニングで汗をかかなくても、SNSで数百万ユーロを稼ぐことができる」とされ、ドイツの週刊誌『ディー・ツァイト』では、インスタグラムやTikTokにハマった「リビング・セルフィ」とさえ呼ばれている。ドルトムントのリュシアン・ファーヴル監督も、自身の3-4-3システムにゲッツェが果たせる役割はゼロに近いかもしれないと認めている。

■28歳となった今

Mario Gotze Borussia DortmundGetty

「多くの人がゲッツェの全盛期は18歳のときだったと思っている」と、あるドイツの関係者が『Goal』に語り、現実を突きつける。

「ストライカーとしての強さもなければ、ウィングとしてのスピードもない。うってつけのポジションはいわゆる背番号10的なポジションだが、今どこのクラブでそんな選手を必要としているだろうか」

ゲッツェは6月3日、28歳となった。本来なら絶頂期に入ったばかりの年齢のはずだ。フリーとなれば、リヴァプールを含むヨーロッパのエリートクラブからこぞって声がかかってもおかしくない。

だが、現実はそうはなっていない。クロップとの思い出は常にゲッツェにとって幸せな思い出だが、リヴァプールはもはやゲッツェには目もくれない。今もこれからも、アンフィールドへの移籍はかなわないだろう。

最終的な移籍先がどこかはともかく、若かりし頃の魔法のようなプレーがもう一度できるという希望はある。人々を驚愕させ、試合で最高の栄誉を手にするあの瞬間をゲッツェは取り戻せるはずだ。

「メッシより上だということを世界に示せ」

ドイツ代表のレーヴ監督はゲッツェに伝え、2014年のワールドカップ決勝アルゼンチン戦のピッチへと送り出した。

今は昔、そんな言葉が嘘ではない時もあったのだ。

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