もう過去であるはずだったアトレティコ・デ・マドリーが、そこにいた。キックオフの笛が吹かれたそのときから、断固たる意思でもって懸命に働く特異なチームが、そこにいた。かつてのディエゴ・シメオネのアトレティコは、今のシメオネのアトレティコでは勝てないだろうと見られていた現欧州王者リヴァプールを下し、アンフィールドでのセカンドレグに向けて軽いアドバンテージを手にした。
アトレティコが結束、規律、自信を示したワンダ・メトロポリターノで、熱烈、猛然、勇敢なリヴァプールはついに姿を表すことがなかった。シメオネのチームは彼らをここまで成長させてきた美点を思い出させながら、リヴァプールの攻撃を封じ込んでいる。彼らはこの勝利を導いた方法を、長い時間にわたって練り続けていたに違いない。
Getty Imagesもちろん、試合開始直後にコーナーキックからサウール・ニゲスがゴールを決められたことについては、運の要素だって多分に含んでいる。それでもアトレティコは、今季ここまでほかのチームが実現し得なかった、ユルゲン・クロップのリヴァプールを打ち消すという偉業をやってのけたのだった。
シメオネは過去のチャンピオンズでバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンを打ち破ったときのようなプランを、そっくりそのまま実行したわけではない。しかし、いくつかのやり方は、強烈に勢いづいていたあの頃と同じだった。アルゼンチン人指揮官が最初に驚きを与えたのは、マルコス・ジョレンテを起用する代わりにトマ・レマルを右サイドハーフとしたことだったが、その意図は試合が始まってすぐに説明がついた。サウールが配されることも見込まれた左サイドバックで、守備に不安の残るロディをそのまま先発させたことも、同じ意図によってである。信頼を寄せられたロディのパフォーマンスは、今季序盤を思い起こさせるように鋭く、盤石そのものだった。
■緻密に用意された策
Getty Imagesアトレティコの攻撃における策は、アレクサンダー=アーノルドの背後を突くことに尽きた。そうする方法は2通りだ。
一つはモラタを左サイドに寄せ、その高さを生かして空中戦を制すること。これについてクロップは、ファン・ダイクを右に寄せて空中戦に参加させるという修正を行なっていた。そしてもう一つの方法は、ロディとレマルによる仕掛けである。どちらかがA=アーノルドを前に進ませるか、中央に寄らせるかして、もう一人が空くことになる左サイドを突破。アトレティコはこの攻撃を、限りなく少ないボールタッチと縦へ縦へと向かう意識で実践し、序盤にハリケーンのような勢いを手にしていた。ただクロップ率いるチームが生じさせる特有の恐怖により、その勢いは長く続かなかったが。
シメオネはリヴァプールがピッチを駆けることを嫌っていた。おそらく、それは彼がこの試合で最も執着していたことであり、そのために前から積極的なプレッシングを仕掛けさせなかった。試合結果がネガティブなものであったならば、間違いなく後ろに引き過ぎだと批判されていただろうが、彼はそうしたことも覚悟の上で、勝利の鍵をそこに見出していたのである。アトレティコは、ファビーニョが両センターバックの間かジョー・ゴメスの右隣に位置して3人でスタートされるリヴァプールのビルドアップを妨げることなく、ピッチの大半とボールを彼らに譲った(リヴァプールのポゼッション率は72%を記録)。平均して自ゴールから43メートルの場所に、1-4-4-2のブロックをどんと置いた。
Gettyリヴァプールの速攻を封じたアトレティコの次なる目標は、サイド攻撃への対処である。彼らの寄せは、完璧だった。中盤右サイドのコケ、左のレマル(後半は右にジョレンテ、左にコケ)は、A=アーノルド&アンドリュー・ロバートソンの両サイドバックが攻撃で連係を取ることを見事妨げた。加えてサイドの浅い位置で彼らがボールを受けるのは放っておき、深いところまで入り込もうとするときには、トーマス&サウールの両ボランチがそれぞれに近いサイドハーフに付き添ってともに侵入を阻んでいる。トーマス・パーティ&サウールはアトレティコのボランチらしく、常にカバーに気を遣っていた。
リヴァプールはサイド深くでスペースを得られず、その遅いボール回しは守備が手薄となっている逆サイドへの展開に支障をきたしている。ジョルジニオ・ワイナルドゥム&ジョーダン・ヘンダーソンはほとんど攻撃サイドを変えようとせず、ワイナルドゥムがアーノルドに送ったパスは2回にとどまり、ヘンダーソンに至っては一度もロバートソンにボールを通していない。結果、リヴァプールは効果性のないクロス(29回)に頼ってしまった。
アトレティコの堅い守備は、モハメド・サラー&サディオ・マネの価値をも落とすことにつながった可能性がある。彼らは一度として優位な状況でボールを受けられなかったが、それでも1対1の突破、MF&DFのライン間の攻略、ダイアゴナル・ランでペナルティーエリアに侵入することを何度となく試みていた。2人合わせたボールロストの回数は、25回にのぼる。マネがハーフタイム、サラーがその少し後にピッチから引き上げたことを考えれば、あまりに大きい数字である。アトレティコの守備のウィークポイントとなりそうだったのはヴルサリコ&ロディの両サイドバックだが、ペナルティーエリア内でサラーのシュートを許した場面以外では毅然としたプレーを見せていた。
■わずかなリードを持ってアンフィールドへ
imagoリヴァプールで、アトレティコに問題をもたらしたほぼ唯一の選手はフィルミーノだった。偽9番としてトーマス&サウールの背後で暗躍したブラジル人FWは、ときにアトレティコの守備の規律を乱していたが、フェリペがこれに対処。アトレティコのブラジル人DFは昨夏にひっそりとクラブに加入したが、昨季までのゴディンのように最終ラインの保証となれそうだ。その守備範囲の中ではマーク、クリアとまさに鉄壁で、その範囲を越えて行われる相手のプレーに先んじたボール奪取でも、常に必要とされるアグレシッブさを発揮する。そのようなフェリペの能力の誇示、そしてチーム全体でのレベルの高い守備によって、アトレティコはリヴァプールに枠内シュートを1本も許さなかった。
アトレティコのボールを持たないプレーの出来栄えは、守備から攻撃へのトランジション、つまり速攻を的中させていればさらなる栄光に包まれていたはずだ。この日のトーマスはボールロストが多く、詰めのパスでも判断力を欠いた。彼だけでなくサウールもジョレンテもアンヘル・コレアも、試合前に見込んでいたほどのチャンスを創出するには至らず。アリソンがゴールを守るペナルティーエリア内に踏み込んだ回数はほんのわずかで、踏み込んだとしてもモラタがまたも決定力を示せなかった。チョリスモ(シメオネ主義)の精神に基づく守りのリサイタルを開いたアトレティコではあるが、ゴールが1点のみにとどまったのは惜しいことである。
この日、シメオネが築き上げたアトレティコの壁は、クロップのリヴァプールを確かに跳ね返した。ここから舞台は、スペイン屈指の熱狂を誇るアトレティコのスタジアムから、イングランド屈指の熱狂を誇るアンフィールドへと移ることになる。シメオネは、さらなる襲撃に備えなくてはならない。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
▶UCL決勝ラウンド開幕!DAZNの2ヶ月無料キャンペーンは今だけ!登録はコチラ
【関連記事】
● DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZN(ダゾーン)をテレビで見る方法7つを厳選!超簡単な視聴方法を紹介
● DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃ 料金体系→こちらへ ※
● 【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
● 【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
● Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です




