ニュース ライブスコア
FIFA U-17ワールドカップ

あっけなく終幕を迎えた若き日本代表。U-17W杯でメキシコとの明暗を分けたもの

13:36 JST 2019/11/08
2019-11-08-U-17-japan-mexico

 ブラジルで開催中のU-17ワールドカップに参加していたU-17日本代表は6日(日本時間7日)、ラウンド16でU-17メキシコに0-2で敗れ、16強で大会を終えた。優勝候補オランダを破り、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めるなど快進撃を果たしていたチームはなぜここで崩れてしまったのか?【取材・文=川端暁彦】

■試合前の混乱で狂っていた歯車

 意地悪な熱量を伴う太陽光線が肌を焦がし、気温29℃の表記に「もっと暑いだろ」との声が漏れた。FIFAの担当者も、予想以上の暑さを受けてクーリングブレイクを行うことをキックオフ直前まで検討していたと言う。日本の選手たちにも「今日は暑くなるぞ。水を飲んでおけ」なんて指示が出ていたという。

 ところが選手が入場しようという段になってから急速に空模様が怪しくなり、空気が変わっていった。日本人は最近になってよくこの奇妙な肌感覚を味わっていたのだが、まさか地球の反対側で同じ感覚に陥るとは思ってもいなかった。

 ゲリラ豪雨である。

「突然の雨と雷。風もビュウビュウ吹き出して寒くなるし、唐突に熱を冷まされてしまった」(森山佳郎監督)

 やたらと長いことに定評のあるメキシコ国歌が流れている最中、メインスタンドにあった記者席も屋根の存在など無視して横向きに降り注いできた雨で大混乱だった。記者にとって命から数えて5番目くらいに大事なパソコンを守りつつ、スタンド最上段まで待避したのだが、そこでも雨に打たれるほどである。

 ピッチにいた日本人カメラマンは東南アジアのスコールも切り抜けてきたベテラン戦士だったが、豪雨にさらされて命から数えて4番目くらいには大切なカメラがぶっ壊れていくのを呆然と体感するより他なかった。

 日本の選手たちはこうした状況を笑い飛ばしていたが、何かがおかしくなっていたことを指揮官、選手ともに認めている。立ち上がりから日本は、「上がらなさにちょっとビックリした」と指揮官が愕然とするほど、今大会最悪のチームパフォーマンスになってしまった。

 FW若月大和(桐生第一高校)は同様に立ち上がりが悪かったアメリカ戦の後、試合に向けた準備に問題があったことを率直に認めている。「声も出ていなかったし、アップのところから上げられていなかった」と。ただ、この試合はそうではなかったと言う。「準備は今までと比べてもかなりできていた」と振り返りつつ、「試合の入りの天候のところで自分たちが少し熱くなってしまって空回りした」という見解だった。

 団体競技における精神的なバランスというのは難しい。気合いが入りまくっている選手が11人いたら、それは空回り必至である。一方、クールに冷めている選手しかいなければ、強度の低いプレーになってしまうだろう。そのバランスが最高に取れていたのが恐らくオランダとの初戦ならば、このメキシコ戦はその真逆だった。

 豪雨の中で慌ててスパイクを取り替える選手も出る試合前の混乱とともに、チームの歯車は狂っていて、ベンチと選手がそれに気付いたのも、キックオフの笛が鳴ってからだった。いつも沈着な主将のDF半田陸(モンテディオ山形ユース)が筋肉系のトラブルを抱えて不在だったことも、この混乱に拍車をかけたことは想像に難くない。

■鋼鉄のような規律を保ったメキシコ

「とにかくボールに行けなかった」と指揮官が嘆いたように、序盤はボールの取りどころを共有しながら圧をかけていく今大会の日本らしい守備がほとんど見られず、1対1の攻防でも腰の引けたようなプレーが出て、全体が後手に回り続けていた。それでもGK鈴木彩艶(浦和レッズユース)の好守も出て何とか20分過ぎから巻き返したが、この負の時間帯を通じて削られた心理的余裕と肉体的なスタミナは、後半に効いてくることとなった。日本が初めてシュートを打ったのは32分のことで、もちろんこれは、今大会で最も遅い時間である。

 もちろん、こうした現象は相対的なものである。相手のメキシコは天候の激変にも慌てず騒がず、試合に入れば鋼鉄のような規律を保って戦い続けた。DF鈴木海音(ジュビロ磐田U-18)が「相手のハードワークが本当に凄かった」と脱帽したように、日本をしっかりリスペクトしながら要所を抑え、抜け目なく試合を運んでいった。「老獪」とは森山監督のメキシコ評だが、17歳とは思えぬゲーム運びの上手さと勝負強さを見せ付けられることとなった。

 後半の立ち上がりも日本はどこかチグハグで、余裕は感じられなかった。コーナーキックから1失点目を喫すると、74分には相手を3枚で囲みながら突破を許してしまい、センターバックの2枚が揃っている状況でボールにアタックできず、ミドルシュートからの見事なゴールを許してしまった。「日本であのタイミングから打たれることはない」とGKの鈴木彩が舌を巻いた、見事な“ゴラッソ”だった。

 先制後は割り切ったサッカーに徹していたメキシコに対し、日本はチャレンジする判断が少なく、つなぎ倒すようなプレーばかりになった。「ポゼッションは自分たちの得意なところですけど、回させられている感覚で、得点につながらなかった」とDF鈴木海音(ジュビロ磐田U-18)は振り返る。

 最後の20分、日本は選手交代からシステムも変えて攻勢に出ることとなったが、決定機でフィニッシュの精度も欠いて無得点。呆然とした表情で、試合終了の笛を耳にすることとなった。

■ラテンのチームの「本気度」の上げ方

「前回大会でイングランドに負けたときとはちょっと違う」。森山監督は同じ16強での敗退でも、最強国を相手にすべてを出し切って戦った感覚のあった前回大会と今大会の感覚の違いを口にする。

 大きな違いの一つは、イングランドが誰の目にも明らかな最強国だったのに対し、メキシコはグループステージを3位で通過してきたチーム。しかも日本とは今年7月の国際ユースin新潟にて対戦済みで、スコアでは敗れたとはいえ、内容的には大きく上回っており、選手の肌感覚としてそれほどの強敵には見えていなかったのかもしれない。

 ただ、親善試合と世界大会は別モノで、さらに世界大会の中でもグループステージとノックアウトステージは別モノである。日本の選手は良くも悪くも常に全力を出す教育を受けているのでこの差が小さいが、特にラテン系のチームは「本気度」の上げ方が一段違う。この日のメキシコが見せた圧倒的な集中とハードワークはその典型例。新潟で戦ったときと比べてどうだったかを問われた鈴木海は、こう答えた。

「一発勝負なので凄く気迫を感じました。自分たちもそれを上回るものを見せていかないといけないのに上回れず、パワーでもスピードでも負けてしまった」

 メキシコの選手たちの気迫が親善試合からはもちろん、グループステージのテンションからも大きく上がってきていたのは間違いない。負けたら終わりの緊張感の中で、失敗を怖がるような消極的なプレーが増えてしまった日本とは対照的で、これが試合の明暗を分けた材料の一つだった。

■ここにまた、戻ってきたいなら

 ただ、すべては経験でもある。オランダ、アメリカ、セネガル、そしてメキシコと、まったくタイプの異なる相手を向こうに回しての真剣勝負。異国のホテルで缶詰状態になる心理的なストレスはもちろん、激烈な天候の変化、そして一発勝負でのギアの上がり方を体感できたことは、彼らの財産になる。

「最後は勇気が足りなかったが、グループステージの3試合はいいゲームができた。(アメリカ戦で)相手がこちらをリスペクトしてきたり、最後の最後にアフリカのスピードを体感しながら勝ち切ったり、あるいはオランダとの初戦でポテンシャルの高い相手にやれた部分もあった。決して下を向く必要はない」(森山監督)

 何より貴重なのはここで「みんなが強烈に自分の足りなさを感じられたこと」(同監督)だろう。そして胸に突き刺さったトゲのような痛みも、きっと財産になる。指揮官は、選手に贈る言葉を問われ、こう答えた。

「この悔しさを強烈な成長のエネルギーに変えるしかない。ゴールに行けなかった、抜けなかった、打っても弱かった、ボールを取れなかった、スピードで置いてかれた、クロスが上がらなかった……。いろいろとそういうのを感じ、自分を見つめ直し、『ここにまた戻ってきたい』なら、2年後のU-20W杯で活躍できる自分を作っていくしかない。そのメンバーにこの世代から半分近くが入っていけるように。一番の目標は個人の昇格で、上のレベルで輝いてくれることだと思う。強烈な努力をする選手だけが上のところで輝くのだから」

 U-17W杯における日本の戦いはラウンド16であっけなく終幕を迎えることになった。ただ、世代としての戦いも、個々人のサッカー人生も、ここからが本番である。ピッチに立てなかった選手、選ばれなかった選手を含め、胸に刻んだ悔恨を糧に成長できるかどうか。この代表が真の意味で「成功」だったかをどうかが問われるのは今ではない。

取材・文=川端暁彦

▶【Goal.com×鹿島アントラーズ】誰でもDAZN(ダゾーン)が2ヶ月無料に!詳細はコチラ|11月30日まで

【関連記事】
DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)をテレビで見る方法7つを厳選!超簡単な視聴方法を紹介
DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ  ┃ 料金体系→こちらへ  ※
【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説  ※
【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です