柴崎岳の「最大の美点」とは何か?ヘタフェSDが示すモドリッチへの道/インタビュー

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ヘタフェのプラネスSDは柴崎岳に惚れ込んでいる。彼が語る「ガク」の最大の美点とは? その将来性をどのように見ているのか? 独占インタビューで、その考えと思いを明かしてくれた。

「ガクは非常に優れたテクニックの持ち主ですが、それが私の心を突き動かした最大の動機ではありません。目を見張った部分は、その明晰さです。ガクの最たる長所は、試合の流れを読めるところにあります」

ヘタフェで柴崎岳の獲得に尽力したスポーツ・ディレクターのラモン・プラネスは『Goal』が行ったインタビューでそう明かした。決して“場当たり的な補強”ではなく、以前から目をつけていたプレーヤーが移籍を望むタイミングで獲得するという利害関係の一致した、計画的な選択だったわけだ。

なぜヘタフェは柴崎岳を獲得したのか?SDが明かす交渉の裏側と期待/インタビュー

では実際にチームに加わった柴崎について、プラネスはどのような評価を下しているのか? ヘタフェ幹部から見た彼の課題とは? よりコアな部分に迫っていくとしよう。(文=Goal編集部)

■日本人の印象を覆す適応への努力「ガクは普通とは違った」

インタビュー=ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ(スペイン紙『アス』ヘタフェ番記者)
翻訳・文=江間慎一郎

プラネスは柴崎が鹿島アントラーズでプレーしていた頃から注目していた。テネリフェに移籍した後も、その動向を追い続けた。

「ある選手が加入したクラブで『本物のフットボーラー』であることを証明したとしましょう。しかしそれは、その選手がそのクラブでそれ以上プレーする目的を失うシグナルでもあります。徐々にその選手はクラブのために、それ以上プレーすることを望まないようになってしまう。そうなると、他のクラブに目をつけられるのが怖くなりますよね(笑)」


テネリフェ入団によってスペインでの冒険をスタートさせた柴崎だったが、当初は適応に問題を抱えたという報道もあった。柴崎に目をかけ、将来的に獲得することも検討していたプラウスにとって、不安ではなかったのだろうか?

「テネリフェから届くガクに関する情報は、すべて目を通していました。彼の代理人とも定期的に話をしました。実際のところ、落ち着いた様子でしたよ。それにシーズンが進むに連れてガクはテネリフェで重要な存在となり、適応やストレスに関する問題は解消されました。だから、できるだけ早い段階で彼の獲得に動くことにしたのです」

「バレンシアもガクに興味を示していました。しかし、彼らはガクのチームへの適応に関して少しの疑いがあったようですね。一方、私たちに疑念はなく、獲得を実現させること以外、頭にありませんでした」

実際、ヘタフェに加わった柴崎は、見事な適応ぶりを見せている。

「スペイン語の授業を受けていますし、興味を持ちながら言語の習得に励んでいるようです。ガクはとても頭が良い。飲み込みが早く、周囲が考えているより様々なことを理解しているように見受けられます。私は彼がどのようにヘタフェに適応していくのか、何となく分かっていました。私には日本人の友人がいて、彼らも同じような性格をしていますから。規則正しく、少し内向的、そして、とても誠実です」

普段から日本人に接し、その特徴を知っていたというプラウス。この「なんとなく」は柴崎と接するうちに「確信」に変わっていった。彼が、適応のための努力を全く怠らなかったからだ。

それどころか、柴崎は自発的にマドリードに根を下ろそうとしている。

「彼はヘタフェに加わると、すぐに家を探し始めるなど、生活するための準備をしていきました。些細なことのように思えますが、外国人選手にとってはいい兆候です。ガクが生活するここマドリードは社会と馴染みやすく、スペインの文化を知るには絶好の場所と言えるでしょう。そう、孤立するのではなく、社会に馴染まなくてはならないのです」

「通常、選手はマドリード郊外にあるマハダオンダなどで静かな日々を過ごすことを好みます。しかし、ガクは一人暮らしをしつつも内向的になることを拒み、適応のために私たちスペイン人を知るための努力をしています。スペインのグループ活動は開かれたものであり、選手たちは一緒に食事を取ります。他の日本人はそういった面で問題を抱えることもありますが、ガクは違いました」

■SDが語る柴崎岳、最大の美点

日本人選手は海外生活に適応できず、その影響が残念な意味でピッチ上に現れてしまうことがある。しかし、柴崎の場合は違うわけだ。

では肝心のフットボールの面はどうなのだろうか?

プラネスは、リーガ1部でその真価を発揮するために「まだ時間がかかる」との見解を示す。

「テネリフェでの6カ月間は、彼にとって素晴らしい経験となりました。ですが、リーガ1部はおそらく世界最高のリーグです。1部は技術の水準が高く、加えて激しさもあります」

また、1部昇格組で予算の少ないヘタフェは、強豪クラブや1部リーグの常連たちとは異なる戦い方を選択せざるを得ない。柴崎が良質なテクニックやプレービジョンを持っていることは今や周知の事実であるものの、ヘタフェの生命線である守備の部分で汗を流す役割も求められる。

もっとも、柴崎は賢い選手だ。チームに加わって方針を聞いた段階で、あるいは加入する前から、こういった状況を想定していたのだろう。プラウスは求められた役割を全うするために努力を怠らない柴崎の姿勢に、大きな満足感を示している。

「ガクの最大の美点は、その明晰さにあります。彼は創造的な攻撃の選手です。だから当初は、後方に向かって走れるのかを疑問視する声もありました。しかし、チームがどのようにプレーしているか、監督が何を望んでいるのか理解すると、誰よりも懸命に走り、守備を行っています。私たちが求めている攻撃面で重要な役割を担うことはもちろんですが、それだけではチームが成り立たないことも理解しているのです」

柴崎への称賛を惜しまないプラウスだが、選手の意向に関係なく、海外でプレーする日本人選手に降りかかる問題もある。

日本代表から声がかかるときだ。長旅による疲労の蓄積は、ヘタフェでのプレーに影響を及ぼす可能性も否定できない。故障のリスクも伴う。現に日本代表としてピッチに立ってから中1日で臨んだリーガ第3節では精彩を欠いていた。

しかし、プラウスはこの問題を懸念していないという。それどころか、クラブはJFAからの招集レターを歓迎していると強調する。

「私たちが何よりも望んでいるのは、選手の成功です。代表チームでもレギュラーを張ることを願っていますし、彼にはその能力があります。ロシア・ワールドカップでは、日本代表の中で重要な選手の一人として扱われているはずです」

■目標に掲げるべき選手とは?

では、ここまでの活躍を過去のものと考えた時、クラブが柴崎に求めるものは何なのだろうか?「改善する必要がある点があるとすれば」の問いにはこんな答えが返ってきた。

「彼はまだ若く、さらなる成長が期待できます。ここで成功をつかむためには、フィジカル面の改善が重要になってくるでしょう。ただし、それは1日でどうにかなるものではありません。これから、然るべきトレーニングに取り組んでいく必要があります。おそらくレアル・マドリーのルカ・モドリッチが、彼にとって良い手本になるでしょうね」

長所であるテクニックとプレービジョンに加え、フィジカル的な強さを手にする――。

実現したとき、彼はどこまで高みに登りつめるのだろうか。プラネスは、笑みを浮かべながらこう語った。

「ガクは、欧州の重要なチームでプレーできる存在になるはずです」

インタビュー=ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ(スペイン紙『アス』ヘタフェ番記者)
翻訳・文=江間慎一郎

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